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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
130/140

130 バハムート戦に向けて

「皆さん、こちらへ」


翌日、ハンターギルドに着くなり受付嬢にギルドマスター室へと案内された。


「よく来てくれた『デザートイーグル』の諸君、では向かおうか」


「は?何処へですか?」


流一が聞いた、もちろん聞くまでも無くわかっている、向かう先は王宮だと、今回の指名依頼は王国からなのだ、王宮に向かっても不自然ではない。

しかし前日ランディは「委託を受けて来る」と言っていた、つまりその時点では王宮に行く予定は無かったという事だ、流一は「なんでこうなるかなー」とため息を漏らした。


「もちろん王宮だ、依頼内容はそこで通達される」


「わかりました、行きましょう」


セリーヌが返事した、今回は実質新生『デザートイーグル』単独での依頼受注なのだ、ここからはセリーヌがリーダーとして振る舞う。

ただ流石のセリーヌも王宮に向かうのは少し忌避感がある、前回の戦争で実際に貴族に手を掛けたのはセリーヌだからだ。

しかしここは『デザートイーグル』新リーダーとして毅然としていなければならない、その使命感がセリーヌを支えていた。


王宮ではランディが先導していたこともありすんなりと謁見の間まで通された。


「よく来てくれた『デザートイーグル』のみんな。おや?メンバーが増えたのか?」


謁見の間に入ると国王自ら声をかけてきた、前日の話し合いで過去は水に流す事に決めたからだろう気さくな雰囲気だ。


「お久しぶりです。陛下におかれましてはご機嫌・・・」


「そんな堅苦しい挨拶は良い、そんなにかしこまって挨拶されてもこちらが困るわ。もっと楽に話せ」


セリーヌの挨拶を国王が途中で遮った、セリーヌは驚いたが国王の顔を見る限り悪意があるようには思えない、なので言われた通り普通に話すようにした。


「はい、それではそうさせていただきます。それでメンバーですが、流一とエレンは脱退いたしまして今は私達5人が『デザートイーグル』として活動しています」


「ほう、そうであったか。脱退しても共にいるという事は仲違いしたと言うわけでも無いようじゃな」


「はい、その通りです。今回の依頼は私達『デザートイーグル』が受ける事になりましたので2人には助力をお願いしました」


「さようか。なんにしてもお主達が依頼を受けてくれて良かった。それで依頼内容じゃが、バハムートの討伐ないしは撃退。報酬は500万マニ。期限は特に設けてはおらぬが準備が整い次第という事でどうじゃ?」


「結構です、それと準備ですが、既に出来ておりますのでこの後直ぐに向かいたいと思います」


「なんと、それは重畳。それから一つ条件を付けても良いか?何、難しいことではない、そなた達の戦いを我が国の騎士達に見せてやりたいので数人同伴させて欲しいのじゃ」


「はい、それは構いませんがその方達は旅の準備は出来ているのですか?」


「もちろんじゃ、移動程度でお前達の足を引っ張るわけにもいかんからな」


「それなら私達は大丈夫です」


「そうか、良かった。それから討伐が成った暁にはバハムートの素材をこの国に売って欲しいのじゃが、依頼の報酬とは別に2000万マニでどうじゃ?」


「はい、わかりました」


セリーヌは即答した、別にお金にこだわっていないからこそだ、何よりレベンド王国ではグラキル1頭分を魔石抜き1000万マニで売ったのだ、魔石付き2000万マニなら普通なのでは?と思っていた。

いくら商人では無いとは言え、ドラゴンの素材の希少性に気が付いていない事も簡単に返事した要因の1つだ。


しかし価値を知っている国王は逆に驚いた、元々3000万マニでも購入は難しいと思っていたのだ、だからこそ2000万から少しずつ上げていき3000万前後で売ってもらおうと思っていたからだ。


「な?本当に良いのか?」


「はい、良いですよ」


「そうか、ありがとう」


思わず礼を言ってしまった、そしてこの話しはここで終わりにした、変に長引かせて気が変わられるのが怖かったのだ。

もっともセリーヌはもちろんメンバー全員そんな気は一切無いのだが。


依頼の受注も終わり『デザートイーグル』+α(今度の+αは流一とエレンだ)はテレイオースを出発する、目指す先は王国南部。

ただ、正確な場所は行ってみないとわからない、バハムートの活動範囲が意外に広くて一つの貴族領だけで被害が出ているわけでは無いからだ。


初日は少し早めに野営の準備を始めた、周りには人っ子一人居ない、尤もそう言う場所を選んで野営をする事にしたのだが。

理由はミランダとシェーラの訓練のためだ、ミランダとシェーラが懸念したように初陣がドラゴン戦になってしまった、まだ魔物ともまともに戦った事が無いのにだ。

それは旧『デザートイーグル』全員の懸念事項でもある、そのためミランダとシェーラには魔物戦を経験してもらうのだ、流一とエレンのゴーレムを使って。


初日の今日はエレンが最初に狼の魔物2体、次にブラックグリズリーと2戦した。

どちらも対戦した事があるので動きがリアルだ、かなり良い訓練になっている。


ただ、その訓練を見ていた騎士達は唖然としていたが。


テレイオースからは国王の言っていた騎士が3人同行していた、2人は近衛騎士でリオンとライネルと言う、もう1人は王国騎士の団長でベルカンプという名だ。


3人とも騎士としては優秀でエリートなのは間違いない、ただ生活力は別だ、野営の手際は決して良く無いし食事はハンターのような硬いパンと干し肉がメインだった。


見かねたセリーヌはテントこそ提供しないが食事は一緒に食べるようにした。


そして食事中、当然ながらベルカンプが聞いてきた。


「あのー、皆さんはいつもあんな訓練をしているのですか?」


訓練だけで実力差がわかったのだろう、変に丁寧な喋り方だ。


「いえ、今回はこの2人がハンターとしての初陣なので魔物戦に慣れるための訓練です」


セリーヌが答えた、普通に答えただけなのだが騎士達には堪えた。

ハンターとしての初陣という事はハンターになったばかりと言う事だ、騎士3人はその新人にさえ勝てる気がしなかったからだ。


しかし落ち込んでいても始まらない、なのでベルカンプは話しを変えた。


「そうですか。そう言えばミランダさんは収納魔法が使えるんですね、羨ましいです」


「それなら流一とエレンも使えるわよ」


「「「えっ?」」」


流石にこのセリーヌの何気ない一言には3人とも驚いた、収納魔法持ちは容量がそう多く無くても貴族や商人に引っ張りだこなのだ、それが目の前に3人もいるのだから。


ただ話しているだけなのに騎士3人のHPがゴリゴリ減っていく、『デザートイーグル』無双は始まったばかりだ。


食事の後はティータイム、デザートはシェーラ作のチョコレートだ。

流一はもうすぐ居なくなる事もありチョコレートのレシピとコンチングの魔道具をセリーヌに渡していた、そして残っていた『ガウガオの実』2キロを使ってシェーラがチョコレート作りに挑戦していたのだ、今回も生チョコレートを作ったのでチョコレートケーキの用意もあるがそれは翌日以降のティータイムに出る予定である。


「甘い匂いのするこれは何ですか?」


今度はリオンが聞いてきた。


「これはチョコレートって言います。私が作ったんですよ、食べてみて下さい」


答えたのはシェーラ、上手く作れた自信があるのだろう。


騎士3人はもちろん仲間達からも好評だった。


ティータイムが終わると騎士3人は野営場所に戻って眠る事にした、『デザートイーグル』からは結構離れている、流一以外全員女性なので気を使ってもらったのだ。

ただ、離れてもらった本当の理由はこれからセラフィムに連絡してバハムートの弱点を教えてもらうためだ、流石にそれを聞かれるわけにはいかないから離れてもらった。


「セラフィムさん、ちょっと聞きたいことがあるんですが」


《ん?バハムートの事か?》


「そうです、やっぱり聞いてたんですね」


《まあの、お前達はいつも面白いことをしておるので興味深いのじゃ》


「そうなんですか?ところでバハムートの弱点とかありませんか?」


流一はいつも見守ってくれているんだなと感謝しながら聞いた。


《バハムートに限らず飛龍は皆翼が弱点じゃ。翼が傷付けば飛べなくなる、制空権の無い飛龍などそこらの亜竜より簡単に倒せるぞ》


セラフィムはそう言ったがいくら飛べなくてもドラゴンの鱗が亜竜の鱗より弱い事はないので大袈裟な表現ではあるが『デザートイーグル』の武器の性能を考えれば間違いでも無い。


「それってドラゴンは翼を使って飛んでるって事ですか?」


流一は驚いた、ドラゴンの翼だけでドラゴンを飛ばすなど物理的に無理がある、その部分だけは地球とは違う物理法則が働いているのか?と勘ぐってしまった、が、そうではないらしい。


《いや、飛んでおるのは飛行魔法を使ってじゃ》


「え?魔法で飛んでるのに翼が傷付くと飛べなくなるんですか?」


《うむ、彼奴らは知能が高くないから本能で飛行魔法を使ってはいるが翼を使って飛んでいるイメージしか出来ておらんのじゃ》


「じゃあ翼が傷付くと本当は飛べるのに飛ぶイメージが出来なくなって飛べなくなるって事ですか?」


《そうじゃ、彼奴らの知能ではそれが限界なんじゃろう》


「わかりました、ありがとうございます」


流一は改めて魔法はイメージが大事だと認識した。


セラフィムとの話しが終わるとミランダが不思議そうに聞いてきた。


「あのー、その鱗みたいのは何ですか?それと今話してたのは?バハムートの弱点を知ってるとか只者じゃないですよね」


「ああ、これは通信の魔道具だよ、それで今話してたのはセラフィムさんって言って友達の上位龍。ミランダとシェーラもその内会えるかもね」


流一は普通に答えた、が、ミランダとシェーラにしてみればまたまた未知の領域に踏み込んだようなものだ。

これまで共に生活してやっと旧『デザートイーグル』に慣れたと思っていた所へさらなる驚異(?)が襲ってきて久しぶりに呆けてしまった。


とりあえずミランダとシェーラの意識が復活したので2日目の移動となる、騎士3人は2日目で既に何かを悟ったような顔をしている。


2日目も早めの野営、そしてミランダとシェーラの訓練、今日は1戦目がミランダVS虎の魔物、2戦目がシェーラVS雪豹、3戦目がミランダ&シェーラVSゴリラの魔物×5頭、虎と雪豹はエレンが、ゴリラは流一が作った、今回も戦った事のある魔物なので動きがリアルだ。

ただ、当然ではあるが手加減はしている、完全に本物と同じだとまだ倒せるほどの実力は付いていない、だからといって倒せなければ自信喪失に繋がって逆効果になる可能性が高いからだ。


2日目はこれで終わるつもりだったが騎士達が声をかけて来た。


「すまない、我々にもその訓練を受けさせてはくれないか?」


そう言ってきたのはベルカンプだ。


「良いですけど、魔物が良いんですか?対人戦なら他のメンバーが相手しますよ」


「いや、人間相手ならいつもやっている。いつまた今回のような魔物相手の討伐命令が来るかわからないから少しでも慣れておきたいのだ」


「わかりました、そう言う事なら魔物を作りましょう。それで、リクエストは有りますか?」


「では最初はオーソドックスに狼の魔物でお願いしたい」


「わかりました。では行きます」


流一はそう言うとエレンと2人で3頭づつ、計6頭の狼を騎士達と戦わせた、6頭なのは狼は普通群で行動するため実際に襲われる事を想定したのだ。


訓練したいと言うだけあって騎士達は強そうだが動きが魔物に合っていない、負けてはいないが苦労していた。


3日目はいよいよ新生『デザートイーグル』の始動だ、今回はエレンがグラキルを作った、もちろん見えない能力は付いていないのでただのドラゴンだが今回は手加減無しで行く、そのため流一は治癒要員として待機している。


流石に戦った事があるだけにセリーヌ、アメリア、ユリアナの動きは良い、しかし3日目ともなるとミランダの魔法も威力と精度を上げてきて良い連携が出来ている、ただ、パーティー戦になるとシェーラはミランダの護衛役と言う事で見所は少なくなるがその分自分の役割と言うものの理解が深まった。


この日の騎士達はヘルスコーピオンとジャコウウシ2頭との戦闘を行った。


4日目、予定では最後の野営となる、本来は3日ほどで着く距離だが早めの野営で訓練していたので1日余計にかかった。


そして今日のゴーレムは流一の作るバハムートである、ただし流一は本物のバハムートを知らないのでオタクイメージ全開のなんちゃってバハムートだ。

ただし仲間達にはバハムートを想定したオリジナルのドラゴンと説明している。


今回は初の飛行型でもあるためいつもと違い魔石を使って造形した、と言うより流一の魔力では飛行能力まで付けると戦う時間が短くなり過ぎるから仕方ないのだ。

造形もかなり強面の威圧感のあるものにした、実際のバハムート戦で怯んだりしないためには重要な事でもある。


そして、連携が出来上がってきたお陰か流一がドラゴンの動きを知らないおかげか、想定より早く討伐出来た。


騎士達の訓練も同じドラゴンでと言われたが断った、流石に魔力が保たないからだ、その代わりにエレンがグラキルを作って対戦する事で了承してもらった。

ただ、騎士3人ではグラキルには勝てなかった、見えていてさえそうなのだ、本来の見えないグラキルなら騎士達は瞬殺されているだろう。

ただそのことは教えない、せっかくあと少しでドラゴンに勝てるかもとやる気になっていたからだ、流一達は気遣いの人でもあるのだ。


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