彼 と 私 の S H O R T S H O W 0 0 2
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東雲高校。放課後。カウンセリングルーム。
椅子に座り、対峙する星乃先生と若葉。
若葉「父が、ポケットにカントリーマームを入れたまま洗濯に……」
星乃「……それは家庭の躾の問題ね」
若葉「中間試験で日本史が壊滅……選択を間違えました……」
星乃「……それは自身の学力の問題ね」
若葉「初対面の人に、父に似てると言われます……心外です……」
星乃「一応、言っちゃうけど……それは遺伝の問題ね。諦めて」
「そして真面目に答えて」
頭を抱える若葉。
若葉「悩んでも仕方ない問題しか、悩みが無いんですよ~!!」
星乃「あるじゃない♥」
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彼 と 私 の S H O R T S H O W 0 0 2
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資料を捲る星乃。
星乃「――とは言っても、
身長130m超のエイリアンと同居してる家庭環境を慮るのも難しいわねー」
クスッと笑う星乃。
星乃「私も正直、質問のしようが無いもの」
深~いため息をつく若葉。
若葉「はぁぁぁ~~」
「アタシだって、何をどう相談にしてよいやら皆目検討が……」
「何だか突飛すぎて面倒になって、考えるのヤメちゃうんですよね」
星乃「それも良くないのよね……」
イスから立ち上がり、ホットコーヒーを入れる星乃。
星乃「飲む?」
若葉「冷たいのがあれば……」
星乃「ごめん無いわ」
若葉に向き直り、窓際にもたれる星乃。
星乃「さる行政機関からアナタのメンタルケアを頼まれての、今日この場だけど」
「先生としては、個人的に力になりたいのよ」
天井を眺めながら話す星乃。
星乃「――じゃあ、こうしよう」
「まずは、留守さんの日常把握」
「日常生活を他人に話すことで、
案外と気付かなかったストレス解決の糸口って見つかるものよ」
「とりあえず……今日のエイリアン君の様子を聞かせて?」
若葉「……はぁ……」
「では……お言葉に甘えて……今朝の九朗です……」
靴を脱ぐ若葉。
若葉「こんな感じです」
事務用回転イスの上に登って「 少年よ大志を抱け的クラーク博士ポーズ 」をとる若葉。
少し回転する若葉。
少し困惑する星乃。
星乃「うーん。ちょっと解らないかなぁ」
(大丈夫かな?このコ?)
回転しながら、星乃に弁明する若葉。
若葉「いやいや!本当にこのポーズのまま動かないんですよ!」
若葉を観察する星乃。
星乃「どこかの独裁者もしくは革命家が好きなポーズね?よく銅像になってるわ」
イスから降りて靴を履く若葉。
若葉「快晴が言うには……あっ弟ですけど、
場所を指さしてるんじゃないかって事なんですけど……どうだか?」
考える星乃。
星乃「……」
「もう一度お願い」
もう一度、イスに登りクラーク・ポーズをとる若葉。
星乃「エイリアン君は、どっちを指さしてた?」
若葉「え?」
「そうですね……」
苦労して、イスの向きを変えながら答える若葉。
若葉「品川……かなぁ?」
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留守食堂 上空。
ある方向を指さしたままのクロウ。指した指先近くをホバリングするOH-1。
単眼を動かし、OH-1を見るクロウ。
定休日お構いなく、ブリーフィングルームと化してる留守食堂 店内。
店内に入ってきた久住に、上を指さし訪ねる鶴巻。
鶴巻「久住ちゃん?アレ何が見えるって?」
苦笑いの久住。
久住「レインボーブリッジ、観覧車……平時のお台場だそうです」
広げた地図を見ながらぼやく鶴巻。
鶴巻「やっこさん、TV局も見学希望とか言わないよな?」
仙波「直接聞ければOKなんですけど」
「……クロウ、僕達には反応薄いですもんね」
鶴巻「薄いどころか、完全無視じゃねーか」
「アイツ……テレパシーでも使って、若葉達と会話してんのか?」
仙波「頭で念じても反応無いって快晴君、言ってましたよ」
「超指向性のマイク的に声を拾ってる感じ……らしいです」
鶴巻「超、人見知りの宇宙人かよ?」
憤然と地図を閉じる鶴巻。
鶴巻「つ~かっ!こ~んな時に、交渉人は何をやってるかね~?」
ダンボール抱えて店に入ってくる哲司。つうも続く。
哲司「姉弟、揃って普通に学校ですよ」
久住「留守さん?若葉ちゃんでも、快晴君でも帰ってきたら……」
哲司「快晴に尋ねさせます」
鶴巻「――悪い……質問は用意しとくから」
テーブルに置いたダンボールを指さして、ニヤニヤ笑う哲司。
哲司「快晴のヤツ、コレの操縦を教えてもらえるらしいので」
「働いてもらいます」
鶴巻「??何?」
笑顔で答えるつう。
つう「ドローン♥」
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東雲高校。
カウンセリングルームのドアを閉める若葉。
若葉「ありがとうございました~」
廊下で脚本を読んでいた燈が、若葉に声をかける。
燈 「若ちゃん」
若葉「え!?……待っててくれたの??」
燈 「うん。何だか心配で」
少し笑う若葉。
若葉「ありがと」
「でも、親切だったよ?星乃先生」
燈 「ならいいけど……」
「若ちゃん。部活出ないんでしょ?一緒に帰ろう?」
若葉「……うん」
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カウンセリングルームに、一人残る星乃。
若葉の個人資料を見直している。
星乃「留守 若葉 2年5組 17歳」
「……6年前に、母親を亡くしてるのね」
「父親と、弟の3人暮らし…」
「住所は……大田区……首都工大の近くか……」
ハイヒールを脱ぎ、事務用回転イスに登りクラーク・ポーズをとってみる星乃。
星乃「あのコの家から……」
ゆっくりと星乃を乗せたまま回転するイス。
星乃「品川ではなくて……お台場……東雲……」
手を下ろし、窓に映る自分の姿を眺めながら呟く星乃。
星乃「まさかねぇ」
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彼 は 私 の 世 界 を 歩 き
私 は 彼 の 世 界 を 想 う
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永田町 某所。廊下。
蓼丸に、微妙に間違っているクラーク・ポーズを取ってみせる日歌。
日歌「現場からの報告では、このまま微動だにしないそうです」
「現在、調査中」
蓼丸「知ってるぞ。ボルトだろ?」
第 二 話 に 続 く