3話
はぁ、好きって言っちまったよ。
ま、侑希には冗談って思われてるしいいか。
「まあしばらく会わなくなるしいいか」
ごめん、ごめんな。
「よう、青斗」
「鏡夜か、どうした」
「本当に侑希に言わないまま行く気か」
やっぱ鏡夜には分かるのか。流石鈍感じゃない幼馴染だ。
「ああ、もちろんだ」
お役目を果たして侑希の元に帰るんだ。
「にしてもお役目早かったな」
「ああ、まあ侑希と鏡夜に飛び火するようなことはさせないから、俺がどうなっても」
「死ぬなよ、お前のお役目は観察だからな」
「いや、絶対止めてくる」
止めなければ今度は鏡夜にお役目が回ってくる。
「鏡夜、これを侑希に」
俺はそう言って鏡夜に大事にしているペンダントを預けた。
「いいのか?」
「ああ、それを持っていれば一目で侑希だって分かるだろ」
「相変わらずだな」
鏡夜はそれを聞いて微笑した。馬鹿だなという風に。
「じゃあ俺は職員室行かなきゃいけねえから、また会えたら」
「ああ、また会おうな」
そうして俺は職員室に向かった。
職員室に入ると俺と昔から面識のある如月先生に呼ばれた。
「で、何の用ですか」
「お役目のことだ、場所を変えよう」
俺はその言葉に頷き空き教室に移動する。
「さて、ここならいいか」
「で、何ですか」
この人が俺に関わってくることなんて無いと思っていた。
「お役目は俺のせいだ、本当にすまん」
多分こんなことを言いつつ如月先生は何も悪くない。
「あなたは悪くない、あれは俺が止めますから安心して下さい」
「ああ、ありがとう」
このお役目が終われば俺は杯家から解放される。
「俺が絶対終わらせます」
俺の為にも他の子たちの為にも、侑希の為にもな。
俺が望んだ結果にきっとならないだろうがそれでもいい。
「生きて帰れよ」
「ええ」
「これを持ってけ、きっと力になるはずだ」
それはペンダント。如月先生が1度として外したのを見たことがないペンダントだ。
「これには不思議な力がある、きっとお前を護ってくれる」
「ありがとう」
俺はそのペンダントを付け家に帰った。
「お帰り、青斗」
「ただいま母さん」
俺は準備して当主様がいるところに行く。
「失礼します」
俺は襖を開け一礼する。
「すまんな、わしが非力なばかりに」
今そんなことを言っても仕方ないことだ。
「当主様のせいではございません」
次期当主としてこういう接し方になれてしまった。
「本当にすまん......やれ」
俺の意識はそこで一旦途絶えた。
目が覚めると今までいた場所、いわゆる意識を失ったその場に俺はいた。
周りにはさすがにいないか。
少し歩き回る。予想通りうまくこっちに来れたというわけか。
「さて、何からするか」
首元に触るといつものペンダントではなく如月先生のペンダントだった。
これもうまくこっち来たか。
外に出ると少ないが人が歩いていた。そして曇りだった。
凄いな。曇り空だ。
近くの小学校にとりあえず行くことにした。
にしても本当、嫌な感じだぜ。
小学校に着くとまばらに小学生が登校していた。
「....」
いつか俺が絶対に。
そしてふらふら目的地もなく歩き回る。
「最終的にここに辿り着くんだな」
そこは鏡夜の家。祠堂家だ。
「さて、不審がられないように入るか」
中に入ると俺はまず家をとことん調べた。
「ふむ、やっぱりな」
そこで俺は1束のレポートを手に入れた。
読んでみると凄く不吉なことが書いてあった。
「くそっ、俺はこんなの信じねえからな」
俺は絶対これを覆す。
祠堂家の地下に繋がる通路を探し回る。そしてついに見つけた。
「よしっ」
俺は地下に向かう。地下に着くととても大きい扉があった。
「ははっ、これってどんなクソゲーだよ。ゲームオーバーかよ」
ここまで来たのに。ラスボス戦の前で詰むって。
侑希、ごめん。鏡夜、ごめん。如月先生、すいません。
「お前はそれでいいのか?」
「誰だ!」
俺の周りに人はいない。なのに声だけ聞こえる。
「お前はそれでいいのか?あの娘と会えなくなるぞ」
そんなの嫌に決まってるじゃないかよ。でも....
「どうすりゃいいんだ!」
俺には分からない。俺だけじゃ進むことはできない。
「お前の身がどうなっても出たいか」
「ああ、侑希に会いたい」
「よい覚悟だ」
その瞬間声は聞こえなくなり扉がいきなり開いた。
「な、これは」
まるで血のような色の石。
「これ壊せばいいのか」
空手の構えをする。
よしっ
「ハァ!」
パリン
外のケースは壊れた。あとは石だけだ。
俺は石を壊そうとした。
しかし石はとてつもなく硬かった。
「くそっ、諦めねえからな」
何でもいい、おれに力を貸してくれ。
そう思った直後、いきなりペンダントが光った。
これは、凄い。
まるで俺を包むように、どんどん力が溢れてくる。
今ならいける。
そうして何とか壊せた。
その瞬間凄い大きな地震が起きた。
「崩れる!」
堕ちていく。死ぬのかな。
『青斗』
いやだ、やっぱ死にたくない。侑希に会いたい。
パリン
何かが割れる音がした。包み込まれる。
そこで意識は途絶えた。
次起きた時には1年経っていたみたいだ。
そして毎日のリハビリ。頭は良かったから侑希と同じ大学に入れそうだと聞いた。
「特例で入れさせて貰えることになった」
「本当ですか!」
当主様は頷く。
「ありがとう、ございます」
そう言って俺はその部屋を出た。
そうだ、これ如月先生に謝らなきゃな。
そう思い母校に向かった。
「すいません、卒業したはずの杯といいます」
そう言って待っていると如月先生が出てきた。
「帰ってこれたのか、良かった」
「すいません、ペンダント壊してしまいました」
「そうか、護れたか」
「あと、あの世界を終わらすことができました」
驚いたような顔をしている。
まあそれもそうか。
「全ては祠堂家に繋がってました」
祠堂家にあったあの赤い石。そしてレポート。
全てをこの人に話した。
「そうか、壊せたのか」
「はい」
「俺は見つけることもできなかったがお前は見つけて壊せ、帰ってこれたんだな」
先生は苦虫を潰したような顔をしている。
「俺は、先生や侑希に出会ってなきゃ成し遂げられませんでしたよ」
「そうか」
侑希に会いたいの一心だった。
「侑希に告白の返事を貰うまでは生きます」
「そうか、若いな」
先生、あなたも過去に何かあったんですね。
まあそれを聞く気はないけど。
「それではこれで」
「ああ、またな」
俺はその後試験やらをやって侑希のいる学校に編入できた。
朝の職員室。
「君が編入生君?」
「そうですが、あなたは?」
先生にしては随分若い。というか生徒かな?
「僕は相沢冬翔、泉雅...如月の幼馴染です」
如月先生の幼馴染か。優しそうな印象だ。
「よろしくお願いします、俺は杯...いえ、霧影青斗です」
俺はすぐに霧影になる。お役目を果たせたから霧影になる。
「霧影君、泉雅から話を聞いているから何かあったら頼ってね」
「ありがとうございます」