06話 初めての体験
新しく住む事になったお屋敷。
優しいご主人様と、ちょっと面白い執事のエバンスさん。この三人での生活が始まる。三人でお話をしていたら、購入した服屋さんから荷物が届いた。
ご主人様は荷物を受け取ると、買い忘れた物があると言って出掛けてしまった。お屋敷に、私とエバンスさんの二人だけとなった。
「あの。荷物はどの部屋に運べば良いでしょうか? 私のお部屋は何処でしょうか?」
私はエバンスさんに、私の部屋を訪ねる。
「あなたの荷物でしたら、旦那様の部屋に運んでください、旦那様のお部屋は広いですから」
「え? 私の部屋と言うか、奴隷用の部屋は無いのですか?」
「何を言ってるんですか? 金貨100枚の性奴隷なら、寝室はご主人様と一緒に決まってます」
「へ? えぇぇぇぇ???」
エバンスさん、よほど悔しいのね。何かあれば金貨100枚って言うし。
「とにかく旦那様のお部屋に案内しますよ」
「お願いします」
「まあ、ぶっちゃけた話ですね、旦那様と私のベッド以外、このお屋敷にベッドも布団も無いので、他に寝る場所が無いんですよ」
前に住んでいた貴族が、家具から調度品から全て売り払ったので、この屋敷には余計なグラス一つ無いそうだ。まだ、家具をそろえていないのでベッドも無い。
本当なら侍女を購入したその足で、ご主人様がベッド等の家具を購入して帰ってくる予定だったと……服を買っているうちに、ご主人様は家具を購入するのを忘れたみたいだ。
あれ? じゃあご主人様は私のベッドを買いに行ったのかな?
案内されたご主人様の部屋は確かに広かった。
豪華なベッド、5人ぐらい一緒に寝れそうな大きさがある。ソファーとテーブルの豪華な応接セットもあり、小さなキッチンもあって、簡単な料理なら出来そう。
その他に高そうなお酒がズラリと並んだ棚。この部屋だけは、お屋敷に相応しい家具が揃っている。まるでこの部屋だけ別世界だ。
部屋には扉がいくつかあって、開けるとトイレがあった。ご主人様専用のトイレだ。次の扉を開けると、そこは少し大きな浴室がある。
すごい! お部屋にお風呂がついているなんてっ!! 感動している私に、エバンスさんがお風呂の使い方を教えてくれた。 魔道具でお湯張りをするそうだ。 水もお湯も魔道具で作り出すなんて……いったい幾らかかってるの? このお風呂……
次に開けると、大きな衣装部屋になっている。ご主人様の服はあまり多く無く、ガラガラだ。
次の扉を開けると、そこは小さな小部屋。なんだろう? この小部屋は。丁度ベッドを二つ置いて、少し余るぐらいの大きさだ。
「ここがクレアの部屋になると思います」
「え? でもここって、ご主人様の部屋の中ですよ?」
「いつでも旦那様のご要望にお応えできる様に、ここで寝泊まりする事になると思います」
「なるほど……性奴隷用の部屋って事ね」
「とりあえず、クレアの荷物はここに入れて置くのが良いでしょう、そのうち旦那様に言って衣装ケースを購入しましょう」
「わかりました」
私は自分の荷物を小部屋に入れた。次の扉を開けようして、鍵が掛かっていた。
「あ、そこは武器庫です。旦那様以外は立ち入らない様に言われていますので」
「武器庫ですか?」
「ええ、旦那様は冒険者ですからね、価値のある特別な武器やアイテムをを保管しているみたいです」
「なるほど、わかりました」
きっと魔剣とか、そういう武器が置いてあるのね!
その後は、エバンスさんに屋敷の中を案内してもらった。屋敷を案内してもらいながら、エバンスさんに色々と質問をする。
「ねえエバンスさん? ご主人様って何者なんですか? 冒険者って言っても、すごいお金持ちですよね?」
「う~む、確かに旦那様は、普通の冒険者では無いが……私の口からは言えないな、そのうち旦那様が教えてくれるだろう」
「そうなんだ、やっぱり普通じゃ無いんだ」
「普通の冒険者は、こんな屋敷をポンと買えないですよ」
「ですよねぇ~ 獣人に金貨100枚とか言っちゃう人ですからね」
「まあ、そうですね……金貨100枚……私なんて……ブツブツ…」
おっと、この話題は禁句ね。
「さて、料理人が来るまでは外食になるから、今日は旦那様と一緒に外食ですね」
「っ!! 外食っ!」
外食で一気にテンションの上がった私。その後ご主人様が帰宅して、私達は三人で食事に出かけた。
凄いっ! 奴隷扱いじゃない、普通のお食事!!私もエバンスさんも、ちゃんと席に座って一人前を食べさせてもらえた!!
私はまた、ボロボロ泣きながら食べてしまった。
ご主人様とエバンスさんに呆れられたけど……でもしょうがないじゃない! だって美味しくて幸せなんだもんっ!
お食事が終わって、お屋敷に帰宅した私達。
「ではクレア、後は旦那様をお任せして良いかな?」
「はい! 大丈夫です」
「では旦那様、お休みなさいませ」
「ああ、お休みエバンス」
ご主人様と一緒に、ご主人様の寝室へと入る。
う~ん……緊張してきた。いきなり襲われないよね? やっぱりこれから……ご奉仕の時間よね?
「クレア?」
「ひゃいっ?」
いきなり名前を呼ばれてビックリしちゃった。
「?? どうしたんだ?」
「い、いえ、なんでもありません」
「お風呂の準備してもらえるかな? やりかたわかる?」
「あ、大丈夫です。昼にエバンスさんから聞いていますから」
「そっか、じゃあよろしく」
私は昼間にエバンスさんから教えてもらった通り、お風呂のお掃除と、お湯張をした。もちろん、買って頂いた大切な服と下着を濡らさない様に、私は全裸だ。
凄いなぁ~魔道具でお湯を出しちゃうなんて。これも高いんだろうなぁ~。私何人分だろうか?
私は初めて見るお湯張道具をボーっと見ながら、お湯が溜まるのを待っていた。これって本当に自動で止まるのかしら? エバンスさんは止まるって言ってたけれど……
お湯が溢れたら大惨事になる気がして、じっと待っている。
「クレア? 大丈夫??」
「……っ!!!!」
突然浴室の扉が開かれた。全裸の私は、突然現れたご主人様に驚いて硬直している。
「あ!、ごめん……」
慌てて扉を閉めたご主人様。
「み、見られた……」
と言っても、オークションでは見られてるし、今更か……それに今夜は……はぁ~ 上手くやれるかしら? 金貨8枚分のご奉仕? 違うか……108枚分のご奉仕だ……
もう一度服を着て浴室から出る。ご主人様は、済まなそうな顔で応接セットに座っていた。
「いや、クレアが戻ってこないから心配したんだよ」
いきなり言い訳を始めるところが、ちょっと可愛いって思っちゃった。
「大丈夫です、お気になさらずに。私はご主人様の所有物ですから」
ちょっと意地悪く、冷たくそう言うとオロオロしてる。私はご主人様の物なのにね。
「ご主人様? お風呂の準備ができましたが?」
「あ、ああ。うん、ありがとう」
何時までもオロオロしているので、ご主人様を浴室へと促す。
ふぅ…… でも、私って性奴隷としてのお仕事する必要あるのかしら? ご主人様は性奴隷って気づかないで私を買った感じだし。普通に侍女でも良いのでは? そんな気もするけど……でもダメね。
金貨100枚もだして買ってもらったんだもの、性奴隷としてちゃんと頑張らないと。ご主人様優しいし、外食させてくれるし、新品の服も買ってくれた。
うん! やっぱり気に入られて、ずっと置いてもらえるようにしないとね! でも、やっぱり性奴隷だから、歳取ったらお役御免で捨てられちゃうかな?
あれ? こんな生活に慣れたら、普通の奴隷に戻れないのでは? ご主人様がお風呂に入って居る間、私は色々考え込んでしまった。
考え事をしているうちに、ご主人様はお風呂から上がって来た。バスローブ一枚の姿で……
うわっ! 胸元が少し開いてて、ドキドキする。思わず頬を染めて、ご主人様から目を逸らしてしまう。
「あ、あの、何か飲まれますか?」
「そうだね、あの棚に果実酒があるから、頼めるかな?」
「かしこまりました」
私は言われた通り、果実酒とグラスをテーブルに用意する。グラスに果実酒を注ぐと、ご主人様は一気に飲み干した。
「クレア、お風呂に入って来なさい」
「え? でも……」
良いの? あれってご主人様専用のお風呂よね? 奴隷の私が使っても良いの??
「この部屋の設備は自由に使ってかまわないよ、お風呂の石鹸も好きに使いなさい」
石鹸っ!! 本当に? 凄い! 石鹸で体を洗えるなんて、私貴族様みたいじゃない? 石鹸という言葉に私が反応したのを見て、ご主人様は微笑むと、もう一度催促してくれた。
「行ってきなさい」
「ありがとうございます!!」
そうだ! お風呂に入るって事は……そういう事よね? 私は一度小部屋に入って、服屋さんから届いた荷物を開ける。下着とベビードールは、セットで袋に分けられている。
その一つを持って、私は浴室へ向かった。
お風呂に入って、私は石鹸でジャブジャブと全身丸洗いをする。綺麗になったかな?
私は念入りに体を洗った。湯船に浸かって、今日の出来事を思い出す。
凄い一日だったな……オークションに出品され、ご主人様に買われて、高級な服を買ってもらい、初めて食堂で普通に食事をした。それも二回も!
美味しかったなぁ~。 えへへ、幸せ~。
そして今は石鹸を使って体を洗い、温かいお湯のお風呂にまで入って居る。夢じゃないよね? 石鹸使って体を洗ったり、温かいお湯のお風呂に入ったり……本当に夢の様な体験。
今日一日で信じられない事の連続だった。でも、まだ今日は終わって居ない。
これから一大イベントが始まる!! 夜のご奉仕だ!
上手く出来るかな?
私は覚悟を決めて、お風呂から出た。