21話 ライバル出現?
最近の私は、一日置きに、狩と冒険者ギルドでの訓練を繰り返す日々を送って居る。
訓練で習った事を狩で実践し、狩の時の反省を訓練で再確認する。そんな日々。
私、いつの間にか冒険者が本業の様になっている気がするのは……気のせいだよね?
ルルちゃんは、今でも元気に商店で働いている。まだ奥様にはバレてないんだって。
私も少し安心した。
ルルちゃんも、先日の私達を見ているので、売られる時は相談するって言ってくれた。ご主人様は、私に意地悪しただけで、ルルちゃんの事は前向きに考えてくれるそうだ。
流石ご主人様。意地悪しなければ大好き!!
ご主人様がギルドの訓練場で、私に剣術を教えているうちに見物人が増えて来た。冒険者ギルドでわざわざ訓練するのは、模擬戦の相手が豊富に居るから。
訓練の模擬戦の相手をしてくれるDランク冒険者の人に、ご主人様がアドバイスをしたりしているうちに、どんどん色々な人が見学に来るようになり、最近ではDランク、Cランクの人達の剣術講座の様になっている。
巷では「レイヴィタンの剣術講座」と言われているらしい。
私は私で、ご主人様に新しい技を教えてもらった。以前狩の時にご主人様が見せてくれた、瞬間移動だ。
魔力を使って、一時的に移動速度を速める技。私はまだ2m程度しか移動できない。と言っても、ご主人様の様に消えるほど速い訳では無く、通常よりもちょっと早いだけだけど……
私達の訓練が有名になってくると、腕に覚えのある人達がご主人様に模擬戦を挑み始めた。
Bランクの人相手でも、ご主人様は片手で剣を握り笑顔で軽くあしらっている。きっと実力の1/10も出していないご主人様。
そのうち、ご主人様に一太刀でも浴びせたら、金貨1枚を渡すなんてご主人様が言い出したので、一日5人限定で勝負を行う様になった。
毎日並ぶ人が出来るほどの盛況ぶりだ。ご主人様に聞くと、腕の良い冒険者を探すのに丁度良いと言っていた。なかなか進まないダンジョンアタックのメンバーを、これで探すつもりらしい。
そんなある日、私は冒険者ギルドで一人の女性に声を掛けられた。
「あなたがクレア?」
「はい?」
突然声を掛けられて振り返ると、そこには……物凄い綺麗な女の人が立っていた。
綺麗な茶髪を腰まで伸ばし、頭には猫耳がついている。露出度の高いミニスカートタイプの防具を着けていて、上半身は大きな谷間を惜しげも無く晒している。
スタイルの良さを強調した防具。
うぅぅ……負けた……特に胸の辺りとか、谷間とか、おっぱいとか……
「はじめまして、私は猫耳族、Bランク冒険者ののリアよ」
「あ、初めまして……犬耳族のクレアです……」
リアさん? あれ? 何処かで聞いた事あるような、無いような……
「へぇ~ 噂通り、可愛らしい子ね」
私の事を、上から下まで見てリアさんはそう言った。
「噂ですか??」
「ええ、なんでも私とあなたが、このギルドの二大アイドルだそうよ」
思い出した!! 初めて冒険者ギルドに来た時に、冒険者の人達がそんな事を言っていた。猫耳族のリアさんが凄く綺麗な人だって。
リアさんは、大人の女!って感じで、色気がプンプンする様な綺麗な人だ。年齢は20代前半ぐらいだろうか?
どちらにしても、こんな綺麗な人と一緒にされると正直困ります。
「ねえ、あなた伝説のレイヴィタン様と組んでるのですって? 良ければ紹介してくれないかしら?」
うぅぅぅ……正直嫌です。こんな綺麗なお姉さんを紹介したら、ご主人様の鼻の下が3mは伸びそう……
特に胸の辺りとか、腰の括れとか、綺麗な長い脚とか……
あれ? なんて事なの?? 私、リアさんに勝てる所が見つからないのですけど……
「クレア? どうかしたの??」
リアさんは、固まっている私を不思議そうな目で見ている。
「あ、いえ……ご主人様なら、もうすぐここに来ます。今は訓練場で勝負中ですから」
「嘘? クレア! 一緒に来て! 私も挑戦してみたいのよ」
リアさんは強引に私の手を取ると、訓練場へ私は連行された。
「ねえ、あなたから頼んで、レイヴィタン様と勝負さえて貰えないかしら?」
「へ? ご主人様とですか?」
「ええ、並んでも並んでも、順番待ちでいつ勝負出来るかわからないのよ」
なるほど、既に整理券が配られて、ご主人様と模擬戦が出来るのは半年待ちだとか噂されている。リアさんは私を使って、今すぐにでも腕試しをしたいのだろう。
訓練場へ着くと、そこには大の字で倒れている冒険者の人。それをニコニコしながら見下ろしているご主人様が居た。
「うんうん、筋は悪く無いけど、もう少し戦略を練った方がいいね、猪突猛進だけじゃ勝てないよ」
そんな事を倒れている冒険者に言っている。
リアさんは、私の事を肘で突く……早くご主人様に声を掛けろと言っている。
「あ、あの!! ご主人様?!」
「ん? クレ……??!!」
ああ、思った通りだ。ご主人様は私の声に気が付いて、こちらを見た瞬間にリアさんを見て固まった。
そうでしょうとも……私なんかより、リアさんの方が綺麗で大人で色っぽいですもんね!!
ふんっ!だぁ。
今日は夜のご奉仕無し!! ご主人様が悪いんだからねっ!! でも、ご主人様の発した声は、私の予想とはまったく違った。
「メイ??」
え? ご主人様?? この人はリアさんですよ??
「お前……メイなのか??」
驚いた顔でリアさんを見ているご主人様。
メイさん? あれ? 何処かで聞いた事あるような……ってあるよ!! メイさんってご主人様のパーティー「白剣」の人だ!!!
「初めまして、レイヴィタン様。私は猫耳族のリアと申します。Bランクの冒険者です」
リアさんが挨拶をすると、ご主人様は我に返った様だ。
「えっと、失礼しました。リアさん」
「いいえ、こうしてレイヴィタン様と会えた事、運命を感じますわ」
「運命ですか??」
ちょっと、やめてよね!! 運命の出会いとか言っちゃうの??
私の方が、ずっとずっと!! ご主人様と運命的な出会いだったんだから!! 二人のやり取りを見て、私は餅を焼く……ええ、どーせ私はヤキモチ焼きですよ!
「メイは私の祖先です。レイヴィタン様と一緒に冒険をしたと、代々語り継がれてきました」
「え? メイの子孫なの???」
「はい!」
リアさんの顔はとても嬉しそうだ。リアさんの嬉しそうな笑顔は、男を虜にしてしまう。それほど綺麗で、可愛らしい笑顔だった。
案の定……リアさんの笑顔でご主人様の頬が赤く染まった。
でっ!! 予想通り、鼻の下が伸び始める……
うぅぅぅぅぅぅぅ わんっ!!
「ご主人様???」
私の一声で、ご主人様は真面目な顔になった。
でも、誤魔化しているのが見え見えで、私としては……ものすっごっく面白く無い!!
「メイの子孫か……なるほど、瓜二つな訳だ」
ご主人様の顔はとても嬉しそうだ。
「祖先のメイと、レイヴィタン様は恋仲だったとか? 本当でしょうか?」
「ぶっ!!! マジで? そんな風に伝わってるの??」
ちょっと!! 聞き捨てならないんですけど?
「はい、そう聞いています」
「あはははは、違うよ。メイは大賢者のライドと恋仲だったよ」
「えぇぇぇ? そうなのですか?」
「うん、ライドは知って居るよね?」
「はい、大賢者ライド。エルタニア王国の宮廷魔術師になったお方ですよね?」
「うん、そうだね……彼は元々エルタニアの貴族だったからね」
「それを聞いて安心しました」
「へ? 安心??」
「はい! ご先祖様と恋仲だったのなら色々と問題がありましたが……違うのなら、思いっきりアタックできそうです」
うぅぅぅぅ、やっぱりこうなるのか……
ご主人様とリアさんに血のつながりが無いのなら、ご主人様にアタックすると言うのね。そして、意味有り気な視線を私にするリアさん。
これはもう戦線布告ね! 良いわよ! その挑戦、受けて立つんだから!




