02話 私の値段
到着したオークション会場。
会場にはステージがあり、その前に客用の椅子が並んでいる。会場は3箇所かに分かれていた。
冒険者の奴隷を扱う場所。
男娼や執事、男の使用人を扱う場所。
性奴隷と侍女、女性の使用人を扱う場所。
私達はステージの裏にある、控室へ連れて行かれた。既にオークションは始まっていて、今は侍女服を着た女性たちが競りに賭けられていた。
控室には、他の奴隷商人の商品である「性奴隷」の女の子達もたくさん居る。みんな恰好は私達と同じ、布一枚の格好だ。
誰もが顔色が悪く、怯えた表情をしている。
私も同じだ。性奴隷とは何かを聞いてしまったので、私も怯えた顔をしているのだろう。
「ちっ! ついてねぇーな…今回は最後かよ。これは売れ残りが出るかもな」
私達の奴隷商人がそうボヤいていた。
どうやら、くじ引きでオークションの順番を決めるらしい。私達の奴隷商人は「性奴隷」を売る中では最後の順になったそうだ。
当然、最初に出品された人から売れて行く。なので、最後になるとお金を持っている人は少なくなるので、売れ残る可能性があるらしい。
私は売れ残るかもしれない事に、希望を見出した。
「ねえ、ルル? ひょっとしたら、私達売れないかも」
「ハァ~ 無理よ、無理無理。私可愛いもん、胸だって大きいし。絶対に売れ残らないわよ」
「そ、そうだね、ルルは可愛いもんね」
確かにルルは可愛い。綺麗な金髪に愛らしい顔。胸も私と同じぐらい大きい。
「あんたもよ、クレア」
「へ? 私??」
「あんただって、獣人って事を差し引いても、顔は可愛いし、綺麗な銀髪だし、胸だって大きいじゃない。売れ残る訳ないわよ」
「うぅぅ……」
容赦のないルルの言葉。さっきから私は何度もルルに止めを刺されている。
そんな話をしているうちに、「性奴隷」のオークションが始まった。次々と売られていく女の子達。
私は控室からコッソリと、ステージの様子を見る。大勢のお客さん。当然ほとんど男性しか居ない。
ステージの女の子達は、本当に全裸にされていた。
うぅ、あんなに大勢の前で裸にされるなんて……それだけで死んじゃうよ~。
控室の横にある別室には、売られた女の子と買った男が奴隷契約をしている。
「ありゃぁ~ あの子可愛そう、あれは絶対変態貴族ね」
ルルの言葉通り、買った男性は中年の太った男で、貴族が着る服を着て居た。
ひどい! 奴隷契約を結んだら、全裸にして髪の毛を引っ張って連れて行かれた。本当にあんな主人に買われたら可哀想……って人の事心配してる場合じゃ無い。
私のご主人様は、良い人でありますように。普段祈らないけど、この時だけは神様にお願いしちゃった。
次々とオークションは進み、ついに私達の番になった。
ステージの上に並ぶ私達。
『さあ、次は性奴隷として有名なアルス商会からの出品です!アルス紹介は読み書きから礼儀作法までしっかりと教育されています! 今回の品は1番から3番までが非処女、4番から10番が処女の娘となっています』
司会者の声が会場に響いている。
私は番号10番……最後だ。獣人なので最後にされたのだろうか?これで、本当に売れ残る可能性が出てきた。
奴隷商人によって全裸にされる私達。会場はあたりまえだが、男しかいない。
「おぉぉぉぉ~~!」
男達の歓声があがり、一番の子の簡単なプロフィールを司会者が読み上げると、競りが始まった。相場は金貨30枚から50枚程度。(※金貨1枚=10万円程度)
次々と女の子達が競り落とされていく。
仲の良かったルルの番が来た。
『さあ次の娘は15歳、こちらも処女の生娘です。農村の出身となります、彼女は金貨40枚からでお願いします』
「45枚!」
「47枚」
「50枚!!」
「55枚だっ!」
『55枚! 55枚が出ました。他にいらっしゃいませんか? さあ、どうだ?』
ルルは、金貨55枚で競り落とされた。ルルを競り落としたのは、小太りの商人風の男だ。優しそうな顔をしている。
良かった、まともそうな人で……ルル、頑張ってね!
ルルと目が合い、お互いに頷き合う。
ルルの口が動いた。声は出さずに口だけのの動き。
(サヨナラ)
ルルはそう言って、ステージから去って行った。
その後もオークションは続く。
うそんっ? 結局誰も売れ残らないじゃないのよ……。私の願望は外れて、全員順調に競り落とされてしまった。
会場にはまだまだ、大勢の人が居る。最後の私の番になった。
ステージにただ一人残された私。会場に居る男達の視線が突き刺さる。
『さあ、最後になりました娘は、犬耳獣人15歳です。この娘は親も奴隷なので、生まれながらにしての奴隷です。 もちろん処女の生娘!金貨30枚からでお願いします!』
「35枚」
「40枚だ」
「45枚じゃ!」
「50枚」
「55枚じゃっ!」
「くそっ! 60枚だ!」
「ななな、なんじゃと? 61枚じゃぁ!」
「はぁ? 62枚だ」
「63枚じゃ!」
どうやら、二人の一騎打ちになってきたみたい。金貨一枚ずつ値段を上げて行く泥試合になってきた。
ああそうか、私で最後だから、私を逃すと来年まで手に入らないからからか。獣人は安く買われるって聞いていた。でも、ルルよりも値段が上がっている事に、私もビックリしている。
「65枚っ!!! 65枚だぁ!」
「くそ若造が! 獣人に65枚じゃと? 貴様正気か?」
「うるせぇじじい、さっさと諦めろ」
どちらも商人風。一人は50代ぐらいの太った髭を生やしたおじさん。もう一人は30代ぐらいだろうか? こちらも商人風だけど顔が嫌。
なんかすごく乱暴されそう。
どっちも嫌だけど、私は50代に頑張って欲しい。だって乱暴されるのは嫌。私は二人の争いを黙って見ている。
『さあ、65枚、65枚ですよ。他にいらっしゃいませんか?』
あーー おじさん頑張って! 66枚って叫んでよ!
このままじゃ、あの乱暴そうな人の物になっちゃうよ。私が縋る様な目でおじさんを見ていると、おじさんは目を逸らしてしまった……
終わった……私の人生はここで終わりだ。あの乱暴そうな人に買われるなんて……
私は自分のこれからを考えると、ガックリ項垂れた。
「100枚だ! 金貨100枚っ!」
突然、まったく違う方から、違う人の声が会場に響いた。