2016年3月
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民維合流、小沢代表だけ排除へ 野田氏「一番足引っ張った」嫌悪感あらわ
ZAKZAK 2016年3月4日
民主党と維新の党は3月中の新党結成で合意し、他の野党にも参加を打診しているが、生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎共同代表が“排除”される可能性が高くなってきた。民主党内の反発が想像以上に根強いためだ。党公認マスコット「民主くん」も交代する方向だという。
「一番足を引っ張った元代表さえ来なければ、あとは全部のみ込もうと思っている」
民主党の野田佳彦前首相は3日、連合が東京・後楽園ホールで開いた春闘集会でこう語り、元代表の小沢氏の新党参加に反対する意向を示した。
プロレス好きで知られる野田氏はこの日、新日本プロレスの赤いタオルを持って特設リングに登場。連合の関係者に新党への支援を要請したうえで、野田政権時代、小沢グループを率いて党内を混乱させ、最後は党を割って出ていった小沢氏への嫌悪感をあらわにした。
民主党内には、小沢氏について「政権転落のきっかけをつくった戦犯」「壊し屋、闇将軍は新党に必要ない」という強い拒否感がある。野田氏は、民主党の岡田克也代表とも懇意だけに、小沢氏の参加は厳しくなってきた。
党公認マスコット「民主くん」も崖っぷちに立たされている。
岡田氏は3日の記者会見で「民主くん」について、「ハローワークで新たな働く場を見つけてもらいたい」と交代させる考えを示した。
維新の党の松野頼久代表は「最高顧問で処遇しては」と提案しているが、岡田氏は「最高顧問になっても飯が食えるわけじゃない」と突き放した。
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2016年の2月も終わるころ、改新の党幹事長の今村英明衆議院議員は、電産総連の勝村義男副会長に呼ばれていた。
「今村先生、今日はわざわざお越しいただき、ありがとうございます。」
「いえいえ、勝村様、ご無沙汰しております。」
「いいえ、こちらこそ、先生が民政党を離党されてから、手紙の一つも出さず、申し訳ございません。」
電産総連は、電力会社や電力産業の関連企業の労働組合の集合体で、「労働連合」という組織に加盟していた。労働連合は、日本の最大野党である民政党の支持母体の一つである。
まだ民政党が与党であった2012年、今村は民政党を離党して改新の党の結党に参加した。それは、これまで今村を選挙で応援していた、電産総連や労働連合との、決別を意味した。
今村は、岐阜県に選挙区を持っている。勝村は中央電力の社員ということもあり、電産総連の中部地方を担当していたので、過去には今村の選挙も手伝っていた。
電産総連の持つ力の源泉は、「名簿」である。政治家という人種は有権者の名簿を欲しているが、プライバシーの意識が高くなった現在、中々、地元の有権者の情報は集まらない。だが、電力会社はその地域で電気を使用しているすべての人間――即ち、住民のほとんど全員が、顧客である。しかも、大手電力会社は、電力市場を事実上、独占しているため、社員は経営努力がする必要がなく、ほかの業種の人間と比べてヒマである。こうした「特権」を利用して、主に電力会社の電産総連は顧客の個人情報――例えば、誰が地元の名士で、資産家であるか、等――も調べたうえで、そうしたデータを書き込んだ名簿を民政党の政治家に提供していた。
政治団体には、『個人情報保護法』は適用されない。政治団体と宗教団体は『個人情報保護法』の適用除外となっているため、電産総連と民政党によるこのような行為が罪に問われることはないのである。なお、こうした名簿は、部長クラスの社員を通じて与党である国民党の政治家の手にも渡っているので、仮に法律に違反するとしても、警察や検察は与野党の政治家全てを敵に回してまで、立件することはない。こうやって、電力会社は国民党や民政党の政治家との癒着を深めていたのである。言うまでもなく、これは、国民党と民政党という、日本の二大政党のどちらが与党になったとしても、電力会社の利権を維持するためである。
しかし、今村が民政党と決別すると、勝村は手のひらを返したかのように、彼に冷たい態度をとった。
2012年末の衆議院議員選挙では、離党して改新の党公認で出馬した今村に対し、勝村は民政党公認候補として、まだ25歳の青年を立候補させた。25歳の青年が出馬して当選するとは、誰も思っていない。これは、勝村たち電産総連や民政党による「裏切り者」今村への、嫌がらせだった。
今村も、こうした「報復」は覚悟の上だった。あの時、今村だけでなく、多くの議員が民政党を離党して
改新の党や暮らしの党の結党に参加していた。彼らが、民政党を見限った理由は、民政党の体制では既得権益を打破するのに十分な改革が、実現できなかったからである。
既得権益の代表例が、電力会社、である。例えば、2011年に空前の原発事故を引き起こした関東電力は、60万人もの避難民を生み出したにもかかわらず、破産すらしていない。未だに、電力会社の社員は、一般人よりも高い給料で暮らしているのだ。ちなみに、原発事故による放射性廃棄物の処理や、汚染土壌の除染の費用は、最終的には国が払うということになっている。事故を起こした張本人の電力会社の社員は高い給料を受け取っておきながら、事故の後始末は国民の税金によって行われるのである。
一応、当時与党であった民政党も、当時最大野党で今は与党である国民党も、表向きは「脱原発」を訴えていたが、どちらも選挙のたびに、電力会社のお世話になっているのだから、本気で原発体制から脱却など、できるわけが、なかった。
そこで誕生したのが、改新の党や暮らしの党と言った、いわゆる「第三極」の政党である。しかし、特定の支持母体を持たないこれらの新政党の議員は、2012年末の総選挙で、皆苦戦することとなった。
今村も、まず、選挙運動のスタッフを集めるのに苦労した。これまでの選挙では、電産総連を始めとする労働連合からスタッフが派遣されていた。特に、電産総連の社員たちは、普段から仕事が暇なので、いつ選挙があっても仕事を休んで――電力会社というのは、少々社員が休んでも潰れないのだ――ポスター貼りなどをしてくれていた。岐阜県のような田舎の選挙区では、ポスター貼りだけでもかなりの人員が必要である。その他、これまで労働連合が用意してくれていた様々なスタッフを何とかかき集めて態勢を整え、選挙を闘った今村だが、何とか比例復活で当選はしたものの、選挙区では国民党の候補に敗北してしまった。
これは、今村だけでなく、多くの民政党離党組の政治家が直面した問題だった。選挙の結果、国民党が与党となり、民政党は敗北したものの野党第一党の座を握って、改新の党や暮らしの党の政治家たちは皆苦戦した。
あれから約3年の月日が過ぎた2015年の年末になると、改新の党や暮らしの党の政治家たちは、「もう二度とあんな目には合いたくない」との思いから、「早く、民政党に戻りたい」と公然と言うようになっていた。「改新の党や暮らしの党が、再び民政党と一つになって政権を握るべきです!」と、堂々とテレビや新聞で語るものまで、いる始末だ。
電力会社を始めとする、既得権益と癒着した民政党を見限って離党したはずの人たちが、再び民政党と合流しようというのだから、あまりにも節操がない行為である。そして、今村も改新の党と民政党の合併交渉を行っており、そのまま、2016年の今日を迎えたわけだ。
「今村先生も、官公連との交渉では、色々と苦労されたと聞いております。」
勝村は、今村に向かってそう言った。官公連とは、公務員の労働組合で電産総連と同じく労働連合に加盟している。民政党にも、官公連出身の議員は、多い。彼らは、改新の党が公務員の給与削減を主張したことを理由に民政党と改新の党との合併に反対していた。
「ええ、せっかく、民政党との合併交渉がうまくいっているのに、連合の皆様に反対されると、どうしようか、と思っています。私たちは、連合の皆様に敵意はないのですけどねぇ。」
今村は、さりげなく労働連合へ譲歩する姿勢を見せた。
「安心してください。官公連は官公連、電産総連は電産総連、です。私たちは、今村先生を見捨てません。」
今村のセリフを「脈あり」と受け止めた勝村は、いよいよ本題に入ることとした。
「ところで、先生は改新の党の幹事長として、民政党との合併交渉をされていると聞いております。ところが、その、新党の綱領案の中に『原発稼働ゼロ』が明記されているとか。しかし、原発を完全になくしてしまうと、我々の中には原発で働いている労働者もいますから、困るのです。無論、私も過去には今村先生と色々ございましたが、民政党と改新の党が合併されるのであれば、これまでのことは水に流して先生に協力させていただきたい、と思っております。ですが、『原発稼働ゼロ』と言われますと、原発労働者の組合員が失業してしまいます。私も労働組合の幹部として、社員の雇用を守る責任があります。どうか、先生、『ゼロ』の文言だけは、どうにかならないものでしょうか?」
一瞬、今村の顔が曇った。
元々、改新の党は綱領に「原発フィードアウト」と明記していた。「フィードアウト」とは「消滅」の意味で、原発をなくそう、という意思の表れだった。しかし、民政党との合併交渉の際に、民政党側に妥協して「2030年代に原発ゼロ」という表現にした。「今すぐ、フィードアウト」ではなく、「将来的に、ゼロ」という形にして、妥協しようとしたのである。この妥協案に、民政党も納得していた、はずだった。
ところが、労働連合の意をくんだ一部の民政党議員たちが、「原発ゼロ」の文言を入れるのはダメだ、と一度決まった合意を覆すように、騒ぎ出した。厄介なのは、その中に、民政党幹事長の河野幸雄がいたことである。河野も、一度、「2030年代に原発ゼロ」の表現に納得していたはずなのに、その次の会合では、今村に「原発ゼロ」の表現を見直すように求めたのだ。
今村は、悩んだ。「原発ゼロ」という、党の「大義」を取るのか、それとも「労働連合の支援」という「利益」を取るのか――しかし、今村だけでなく、多くの改新の党の議員たちは「大義」よりも「利益」に傾いていた。
結局、「原発稼働ゼロ」という文言で、決着がついた。将来的な再稼働に含みを残した形だが、「ゼロ」の文言を入れることにより、政治家として最低限の良心は守ることにした。
だが、勝村は、すでに二度も妥協している今村に対して、「三度目の妥協」を、求めていた。
ここで「ゼロ」の文言を削るということは、事実上、原発の存続を認める、ということである。これは、「脱原発」を訴えて支持してくれた今村に票を入れたすべての有権者の気持ちを、裏切ることになる。政治家としての良心があるなら、絶対に、できない行為だ。
「先生、お願いします。」
勝村は、頭を下げて懇願した。
(官公連に次いで、電産総連までをも敵に回すと、次の選挙でも労働総連の支持を得られなくなり、下手すると改新の党と民政党との合併も流産になるかもしれない。ましてや、勝村は俺の選挙区の人間だ。これ以上、敵に回したくない。)
今村は、政治家としての良心を捨てる「決断」をした。
「わかりました。『ゼロ』との表現は改めましょう。これからも、よろしくお願いします。」
「先生、ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
2016年3月末、民政党と改新の党は合併して、新しい政党「民主党」を結成した。
最大野党である民政党に改新の党が合流したわけだから、当然、民主党も最大野党である。
暮らしの党も、当初はこの政党に加わることを検討していたが、結局、加わらなかった。その理由の一つは、暮らしの党は脱原発を強行に訴えており、民主党の綱領から「原発ゼロ」の文言が省かれたことに納得できなかったからだ。
だが、現実には、それだけでは、なかった。
日本の支配階級の一翼を担う電力産業だが、彼らは、支配階級の中でのヒエラルキーはそれほど高くはない。経営者・資本家の集まりである経産連も、労働組合の集まりである労働連合も、それを実質的に操っているのは、電力業界では、ないのだ。
そもそも、電力会社が巨大な利権を得ているのは、戦前末期から戦時中にかけての軍国主義体制において、『電力国家管理法』により、政府が国民生活の統制を行いやすくするために、各地域の電力会社に独占的な権限を与えたものに過ぎない。あくまで、政府の都合によって利権を得ているのである。だからこそ、電力会社の社員は与野党の政治家に陳情を行って、必死で利権維持のために働いているのだ。
本当に力を持っている産業は、もっと、歴史のある産業である。――繊維業界、だ。
明治維新の頃の「殖産興業」以来、日本の繊維業は世界でトップクラスの技術力を誇っていた。繊維業が廃れた今も、繊維業界の会社は、明治以来の歴史の中で蓄えていた資産があるため、潰れない。繊維会社の中には、自分たちの保有する土地を不動産として貸し出し、利益を得ている企業も存在する。
戦後の新興企業の多くは、土地を「借りている」存在だが、彼らは、土地を「貸している」側だ。繊維業界は、会社そのものが、巨大な不労所得で運営されているのだ。
経産連の会長も、労働連合の会長も、繊維業界の出身である。
国民党の支持母体である経産連も、民主党の支持母体である労働連合も、繊維業界によって支配されているわけだ。このことは、別に隠されているわけでも、ないのだが、多くの国民は、それに気づいていない。
日本人の多くは「繊維業」と聴いても、「昔の産業でしょ?」という、認識だろう。この国の支配者は、別に隠れているわけでもなく、ただ、国民の無関心によって「堂々と」暗躍しているのだ。
もう一つ、日本を支配している巨大な存在が、ある。――医療利権複合体、だ。
日本全国の進学校においては、優秀な高校生がいると大学の医学部を目指すように進路指導される。医学部は、理系学部での登竜門であり、理系と文系とでは一概に比較はできないものの、文系の登竜門である文学部よりも、医学部の方が難易度が高い、とされる。
こうした各地の優秀な学生を集めた医学部――特に、東大医学部――の中から、さらに選ばれた優秀な医者が、あるものは一流大学の病院に勤務し、あるものは開業医となって日本医者会に所属し、また、あるものは製薬会社に天下る。官公庁の顧問等の役職に就いて、「有識者」として日本の官僚を従えている者もいる。
何しろ、「日本有数の頭脳」と呼ばれている法学部出身のキャリア官僚にさえ、勝るとも劣らぬ知能を持っている、秀才集団が、医療利権複合体、である。
日本医者会は、与党・国民党と最大野党・民主党の双方に、組織内候補を擁立している。ちなみに、日本の政治家の中でもっとも政治資金が豊富なのは、日本医者会の組織内候補として当選した国民党の武本雄三参議院議員である。医療利権複合体は、資金力と、集票力と、そして、知力とを、兼ね備えた存在として、日本の支配者として君臨しているのだ。
支配者は、決して、隠れているわけでは、ない。武本雄三の名前は、「政治家資金ランキング」等と称する新聞記事等で、必ず、掲載されている。だが、多くの国民は、「なぜ、彼がそこまで金持ちなのか?」というところにまでは疑問を抱かずに、スルーしてしまっているのだ。
そして、一部の大衆は「宇宙人が世界を支配している!」とか「ユダヤ民族の守護神が地球征服を狙っている!」等という、荒唐無稽な陰謀論を信じ込んでいる。実際に世界を支配しているのは、宇宙人でも悪霊でもなく、生身の人間であることに、いつまでたっても気づかないのだ。そのおかげで、彼らは「堂々と」世の中を支配している。
暮らしの党が民主党に参加できなかった最大の理由は、暮らしの党が子宮頸がん予防接種に反対していたからである。というのも、暮らしの党は子宮頸がん予防接種の定期接種化に反対した唯一の政党であり、このことは、医療利権複合体からすると、看過できない問題であるからだ。
子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんの原因とされるHPVの感染を防ぐためのワクチンである。なお、最近、「子宮頸がんワクチン」を「HPVワクチン」と言い換えることが多くなっているが、これはこのワクチンを女子だけでなく、男子にも接種させようという医療利権複合体の思惑による。
HPVに感染しても、9割は発症しないとされているのであるが、医療利権複合体はあの手、この手を使って、このワクチンの大推奨をもくろんでいる。その理由は、製薬会社の金もうけという側面もあるし、なによりも、医者の側からすると予防接種が一番「楽に稼げる」手段だからだ。
健康診断と予防接種ほど、医者にとって有難い仕事はない。まず、これは治療行為ではないから、医療ミスなどということが、原理的にあり得ない。無論、健康診断や予防接種も、多くの医者は善意で行っていることだが、年々日本で定期接種の数が増えている背景には医療利権複合体の意思があることも、事実だ。
過去の日本では、インフルエンザワクチンが強制接種であったが、副作用が多いことを理由に強制接種から外されており、今でも定期接種には指定されていない。ところが、2013年に安東政権が定期接種に指定した子宮頸がん予防接種は、インフルエンザワクチンの52倍もの確率で「重篤な副反応」(副作用)が起きることが厚生労働省の資料から判明している。
どうして、そこまで副作用の起きる可能性の高いワクチンを医療利権複合体が推奨するのか、というと、仮にワクチンの副反応で被害者が出て問題になったとしても、最終的な責任は政府が負うからだ。つまり、国民の税金によって解決されるのであり、医療利権複合体には何の損害もない、ということである。
これは、電力業界が原発を推進するのと同じ構図だ。原発も、仮に事故が起きたとしても最終的な責任は政府が負う、となっている。医療利権複合体の場合は、彼らは知能レベルが高いだけに、電力業界よりも巧みに政治家を操って自分たちの野望を実現させているだけだ。
民主党の幹事長には、民政党幹事長であった河野幸雄が引き続き選出された。その他の執行部の顔ぶれも、民政党とほとんど同じであった。
「河野先生、幹事長就任おめでとうございます。」
そう、声をかけたのは、足利真一参議員議員であった。
「いや、これまでと特に何も変わった気はしませんよ、足利先生。」
民主党とは言っても、実態は民政党そのものだ。略称が「民主党」であることから、名前までそっくりである。
「もしも、金沢一郎でも入党していたら、河野先生もそうのんきなことは言ってられなかったでしょうね。」
足利がそう笑いながら言うと、河野もつられて笑った。金沢は、暮らしの党の代表である。
「いや、本当に金沢が来てくれなくてよかったよ。できたばかりの政党に『壊し屋』を入れたりしたら、連合に医者会が黙ってないからね。それはそうと、足利先生、この前の大分県知事選の件はありがとうございました。」
「いえいえ、私自身が大分選出の議員ですから、当然のことをしたまでですよ。我が党の候補が当選したのも、幹事長である河野先生のおかげではありませんか!私の選挙の時もよろしくお願いしますよ?」
「そういえば、足利先生の改選期は今年でしたね。いいでしょう、今年の参院選では大分で応援演説をさせていただきますよ。」
「ありがとうございます。」
「とは言っても、足利先生は選挙には強いですから、私がいなくとも当選しそうですけどねぇ。」
「いや、そんなことはございませんよ?前の選挙も、皆様のおかげでなんとか勝てたまでです。」
足利は、民政党に逆風が吹いていた2010年の選挙でも、対立候補に大差で勝っていた。その背景には、医療利権複合体の力があった。足利の政治力の基盤となっているのは、他でもない、医療利権複合体の力なのである。
高校時代、足利は大分県下一の有名進学校に通っていた。優等生として著名だった足利は理系クラスに所属していた。当時の高校において偏差値の高い生徒が理系のクラスに配属されることは半ば当然の流れであった。その後、関東の大学の医学部を受験し合格、有名大学の医学部を卒業した足利は、医者会直轄の病院や国立病院、大学病院に勤務して、大学の助教授にまでなっていた。いわば医療利権複合体の「エリートコース」を歩んでいたわけである。そのまま大学教授になる道もあったのだが、2004年にあえて故郷の大分に戻って地元の医療関係者の票をまとめて参議院選挙に出馬、見事当選した。その後、足利は選挙では一度も負けたことがなく、大分は「足利王国」と呼ばれるようになっていた。
そんな足利が推進していたのが、あの子宮頸がん予防接種、である。
足利は民政党が与党であったころに厚生労働省の政務官に就任、「男子にもHPVワクチンを接種させるべきある」と主張した。政治家や官僚に対して、子宮頸がんワクチンをHPVワクチンというように求めたのも足利である。「子宮頸がんワクチン」というと男子が受けなくなる可能性が高いからだ。
そんな足利のことを、河野幹事長も重宝していた。河野からすると、自分たちの党が議席を増やしてくれるのであれば、医療利権複合体であろうが、電力会社であろうが、誰でも大歓迎なのだ。その結果、原発事故で家に永久に帰れない避難民が出てきたり、子宮頸がん予防接種の副反応に苦しむ少女が続出しようが、河野には何の関係もないのである。
河野も政治家になったばかりの若い頃は薬害エイズ事件で医療利権複合体の責任を追及していたが、今では自分の権力の維持のためには誰とでも組む政治屋と化していた。