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まるまるシリーズ

とある家のハロウィン。

作者: 沖田猫

 

 ピンポーン。


 家のインターホンがなって、玄関のドアを開けてみると、そこには小さなゾンビがいた。



 俺は一瞬止まった。けれど、すぐに思い出した。今日は『ハロウィン』なのだ。

 きっと、仮装して驚かせようとでも思っているのだろう。その小さなゾンビは、つぶらな瞳で俺のことを見上げていた。



「お菓子くれないと、イタズラしちゃうぞぉ」


 その子どもは言った。

 けれど俺は、それを拒否した。「お菓子なんて、この家にはない」とだけ伝えた。



 それでも子どもは帰ろうとしなかった。しつこいぐらいに「お菓子」という言葉を連呼してくる。




 俺はだんだん嫌気が差し、自分の口を広げて、自慢の『キバ』で、子どもの血を吸うことにした。


 そう俺はドラキュラなのだ。

 ハロウィンのために仮装しているわけじゃない。正真正銘のドラキュラなのだ。



 俺は子どもの首に噛みつき、血を吸った。これで子どもは大人しくなるだろう。


 だけど、俺の予想ははずれた。




 子どもは死ななかった。むしろ、首を刺激されて血行が良くなったみたいに、顔色が明るくなった。




 ――なんだ、コイツ本物のお化けじゃん。



 俺がそう言うと、子どもは大きく頷いた。


「だから、お菓子ちょうだい」



 子どもはまだそう言って、両手を差し出してきた。




 俺は仕方なく、隠し持っていたお菓子を子どもにあげることにした。

 それは後で食べようと、楽しみにとっておいたプリンだったのに……。俺は悔しかった。

 これだから、ハロウィンは嫌いなのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは読めなかった! まさかの(笑) 素晴らしいですね。
[一言]  ――これだから、ハロウィンは嫌いなのだ――  毎年お菓子をとられているドラキュラの、悔しそうな顔が目にうかびました(笑)  私の知り合いに、「人間に必要なのは、衣・食・住・プリンである…
[良い点] なにげに優しいドラキュラさん(≧∀≦) ほっこりしてしまいました。 [一言] 軽い気持ちで読みはじめたのですが、気づけば笑ってました。 とても温かいお話しですね。 ハロウィンにぴったりだと…
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