白銀都市ソネーヴェ
あるところに、ソネーヴェという街がありました。
ソネーヴェは一年中雪が降り続ける銀世界の街です。
一年中雪が降り続けている街ですから、空は雪を降らせる雲で覆われていて、晴れることはありませんでしたが、街の明かりや窓から漏れる家の明かりが雪に反射して光っていたので、街はとても輝いていました。
雪のせいでとても寒いかわりに、お互いに助けあって暮らしているソネーヴェの人々の心はとてもあたたかったです。
寒さのせいで動物もいなく、畑もろくにできませんでしたが、ソネーヴェの雪解け水はとても綺麗で高価だったので、他の街の食料や物資と交換することができました。
ところがある日、別のものを作って欲しいと頼まれました。
それは氷でした。
雪を溶かして作った水を、もう一度固めて氷にする、というものです。
氷を作るのは容易でした。
街中に降り積もった雪を集め、火で溶かし、そのまま外で放置させておけばよいのです。
氷を作るのは容易でしたが、氷の注文は日に日に増えていきました。
それでも、氷の元となる雪は、ソネーヴェでは毎日降り続くものでしたから、人々は注文を断ることなく、言われたとおりに作り続けました。
そんなある日のこと。
誰かが氷柱で怪我をしました。
それを見た別の誰かが言いました。
「もしかしたら、大量の氷を使って、なにか恐ろしいものを作っているんじゃないか」
と。
そこで、街に来た商人に尋ねました。
「最近氷の注文が多いが、一体何に使っているんだ」
商人は、
「雨が降らなくて水不足なんだ。氷なら小分けがしやすいし、熱冷ましにも使える」
と答えました。
ソネーヴェの人々はそれを聞いて安心し、いつも通り氷を作り続けました。
ところが、次第に水が凍る時間が長くなっていきました。
雪が降る量よりも、雪から水や氷を作る量のほうが多くなってしまったのです。
街の雪が少なくなり、以前ほど寒くなくなってしまったため、氷を作るのは困難になってしまいました。
人々は、
「他の街にも水を送らないといけない。雪が十分に積もるまで待って欲しい」
と伝えました。
すると商人は、
「雪なら今にたくさん積もるさ」
と、笑いながら言って去ってしまいました。
一体どういうことなのだろうとしばらくしていると、どこか遠くで大きな音がなりました。
そして地響きのような音とともに街が振動し、人々がざわつくと、誰かが空を指して叫びました。
「雪崩だ! 逃げろ!」
しかし、時既に遅く、人々が街から逃げ出しても、雪崩は止まることなく、街も人も飲み込んで流して多い潰してしまいました。
ソネーヴェの街がすっかり雪一面になり、静かになった頃、商人が何人かの人間を連れてやって来ました。
そして一面の雪を指差して言いました。
「雪が溶けると水になる。水を凍らせると氷になる。氷も溶けると水になる。だから、氷を削って武器を作るんだ。氷なんて誰も気に留めないから持ち込みやすい、溶けて消えてなくなるから後始末にも困らない。さあ、まずはここで暮らすための家でも建てようか」