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月と正義感

「オイオイ、一般人に見つかっちまったじゃねーかよ! どうなってんだ。面倒くせえ事になって来たぜ!」


「おかしいな。リサーチではこの時間には廃ビルに人が来る確率はかなり低い数値だったはずだ。」


「実際見られてんだろーが! しかも何だ、何だってあのガキなんか言ってるぞ。自分から首突っ込んできやがった、馬鹿か?」


「放っておけ。任務内容には全く関係がないのだから。」


オイオイ。思ったよりヤバい奴らだったのか?

なんで声なんか掛けてしまったのだろうか分からない。

まぁ、今更後には引けないのだけれど。

とりあえず隙を見つけてこの子を連れて逃げる、何処へ?

こんな時はそうだ警察なのだろう、きっと。

決まりだ。


「そこの女の子。助けるから安心して。」


「何故声を掛けたんですか。助けてなんて頼んでません。そもそも誰ですか貴方は?」


……マジかよ。普通はありがとうございます、とかそういう展開になるのではないのか?

確かに助けてくれなんて頼まれてはいないし自己紹介もしていない、何せ初対面の何の関係も無い、むしろ無関係な第三者なのだから当然な反応なのだろう。

きっと俺だって同じ様に返答するかもしれない。


「太陽」


「え? 何ですか?」


「太陽昇、俺の名前。キミの名前は?」


「ミ、ミカですけれど」


「ミカか、良しこれで何の関係も無い第三者では無くなった。お互い名前を知ったのだから助ける理由が出来た訳だ」


「馬鹿か?あいつは何言ってやがるんだ。おい邪魔すんなよ優しく話してやってるうちに失せな何度も同じ事は言わねーぞ。」


「理解不能だな。何故関係の無い第三者が関与してくるのだ? 任務の邪魔でしかない」


「昇さんでしたか? あの二人組の言う通りよ貴方は何の関係も無いわ。早く此処から逃げて下さい。あいつらは貴方の考える以上に普通ではないのだから。」


普通ではない、分かってる。そんな事は流石にごくごく普通の健全な高校一年生でも理解できる。

怪しい二人組に金髪の少女、ありえないシチュエーションなのだから。一番ありえないのは言うまでもない。

首を突っ込んでしまった馬鹿な高校一年生と

今日が綺麗な月夜という事なのだ。


「困ってる人を放って置けないタチだからさ。特に女の子ならなおさらだ」


「貴方馬鹿なの? 殺されるわよ? 」


馬鹿とはぶしつけな、ハッキリ言って自分でも馬鹿なのではないだろうかと思う。

しかし身体が勝手に動いた、つまりはそういう事なのだ。

それがそれこそが俺の意思という事なのだろう。


「お嬢様の言う通りだぜ。警告、いや忠告か? まぁどっちでもいい。したからな? お前が悪いんだぜ」


「任務遂行の障害ならば排除するしかない。殺すなよ面倒な事になる。」


「手加減が俺に出来たらな。ま、面倒くせえからしねーがよ」


「逃げて! 早く! 」


腕をまるで何かを振り下ろすように、ヒュンと降り下ろした。只それだけの行動だった。


「なっ……え? 」


何が起きた? 身体には激痛が感じられるのは確かだ。いやそれだけが唯一、今理解出来る事だ。

痛い、痛い、痛い! どうなっている、どうなった?


「やり過ぎだ。殺すなと忠告したはずだが」


「イヤぁーー!! 」


悲鳴、悲鳴、あの子の。誰だっけ?

身体が熱い、熱い、熱い。血が流れているのだろうか。

身体に触れて見る………?


「死なないで! 血が止まらない! 」


あ、あ、身体が真っ二つになっている?

正確には皮一枚で繋がっている……のか。

やっぱり漫画や映画の主人公みたいにはいかないか。

この子はせめて逃がさない……と……


「に、逃げ、早、逃げ…ゴフッ! 」


「何故! 何故助けになんて! こんな、こんな! 」


何故……?何故だったのだろう。

そうだ思い出した。彼女が金髪の少女が、助けはいらない! 関係無い! と俺に言ったしかし金髪の少女はそう言いながら


ふるえていたのだ


それだけで彼女を、金髪の少女を、ミカを助ける理由なんて十分だったのだろう。


「何にせよ任務は完了だな。馬鹿なガキだぜさて、お嬢様こっちに来な時間がもったいねー」


「予定外の死者が出たが、修正範囲内か。目標の確保にはいる」


「逃げ、て……」


「何故こんなになってまで心配してくれるんですか? 血が、こんな! 」


「ふ、震えて……た……から……ゴフッ! 逃げて……」


どうしようもないのは分かっている。この状態まともに話す事すら出来ないのだ。

先程まで身体を支配していた痛み、痛み、熱さ、熱さ、恐怖も感じられなくなっていたのだから。

もう人間の機能的には限界がきているのだろう。

ああ助けてあげたかった、既に過去形になりつつある意識が遠のいていく。


「ごめんなさい」


謝らないでくれ。俺が勝手に自己都合で正義感で起こった出来事なのだから。

そう、言葉に出そうとした時……


月夜に照らされた金髪の少女は、彼女は、ミカは

涙を流しながら俺に唇を重ねていた。


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