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キツネさん、ゲームセンターで遊ぶ

 リュウさんは店内から騒がしい音がするからパチンコ屋なのかと勘違いしたのだろう。

 実際に最近の店にはパチンコ台を置くゲームセンターも多いし。


「ゲームの店か。家の近所にもあるのう」

「これがゲーム?この太鼓のようなものでどのように遊ぶというのだ」

「やってみます?」


 リュウさんが頷いたので、筐体に硬貨を投入する。ワンプレイで二曲遊べる設定のようだ。


「一回目は俺がやってみますね」


 口であーだこーだ言うより見せたほうがわかりやすいだろう。この太鼓の達人というゲーム、俺はほとんどやったことがないが、知っている曲で難易度の低いものならなんとかなるはず。

 おおよその難しさがどうなっているかを説明しつつ、適当な曲を探し、選択する。

 選んだ曲はキツネさんと見たこともあるアニメの主題歌。画面を睨みながら流れていく譜面に合わせ、筐体に付随したバチで太鼓を叩く。多少の取りこぼしはあったものの、無難にクリアする。


「おおよそこんな感じです」

「画面に流れる印に合わせて皮を叩いたり縁を叩いたりすればいいのだな」

「ええ、じゃあかわりましょうか。あんまり失敗が多いと途中で終わってしまうので、頑張ってください。曲の選び方は……」

「いや、見ていてわかった。知っている曲など今タダシがやったものと、タダシが歌った曲しか知らんし、適当に難しいのを選んでみようか」


 俺からバチを受け取って場所を入れ替えたリュウさんは、初めて目にする遊びに対してやる気も自信も満々に選んだ曲はSilent Jealousyを最高難易度。

 また懐かしいものが来た。バンドをやっていた時にはXの曲も聞いた。試しにコピーしようとしたものだ。

 イントロから中々にかっとんだ譜面が流れてくる。

 リュウさんが意気揚々とバチを叩きまくる後ろで、キツネさんの口が俺の耳元によってくる。


「何やら随分と激しい曲じゃのう。知らない曲よりも、先ほどタダシ殿がやった曲のように知っている曲のプレイの方が見ていて楽しい」

「まあ、そういうもんですね。俺は知っている曲なので見ていて楽しいですけど」


 音ゲーなんてものは知っている曲じゃないと面白くない。仲間内でちょっとやってみるか、なんて時はなおのこと。カラオケと同じで知っている曲の方が盛り上がるわけだ。

 知らない曲を発掘したいなら世の中名曲といわれるものは他にいくらでもあるわけで、わざわざゲーム専用曲に嬉々として挑む方々の心情は俺にはわからん。まあそういう廃プレイヤーの方々はよくわからんプレイスキル持ってる方が多かったりするので、そこには尊敬できるが。

 しかし、知らない曲であるというのにリュウさんはそれこそ嬉々として連打を繰り返して得点を稼ぎ続けている。音ゲーの初見プレイなんて反射神経の鋭さが全てだろうに、コンボが止まらない。止まらないまま曲が終わった。コンボ数千超えるんだこのゲーム。

 なにこれとんでもねえ。


「あっはっは!うむ、なかなか面白いものだな!」

「いや、すごいですね。普通は曲を丸々覚えてやるものなのに」

「そうなのか?しかし、昨日キツネがやっていたものとはかなり違うようだな。ゲームとは他にもいろいろとあるのか?」

「まあいろいろと。リュウさん達が楽しめるものがあるかはわかりませんが、見ていきますか?」

「おう!」


 クレーンゲームでアームの弱さにどうすりゃいいのと憤慨し。メダルゲームのメダルは貯めてなにかいいことあるのかと疑問を抱いて触らずに通りすごし。ファミコンとは違う最新のビデオゲームの画面のきれいさに驚いて、弾幕シューティングをプレイしている人の後ろで観戦したり、麻雀ゲームを見てキツネさんやリュウさんが知るものとは別物だと眺めたり。

 等々、ゲームセンターを歩き回っていると、太鼓の達人とは別の音ゲーに辿り着いた。


「これは、太鼓のものと同じようなものかの。いろいろと種類があるのじゃな」

「そうですね。基本的にはどれも画面に流れる印に合わせて、押したり触ったり叩いたりってものです」

「ふうむ。太鼓のものと同じように何か楽器を模しているようじゃの」

「こっちはギターって楽器が元で、こっちはドラム……太鼓を複数組み合わせた楽器が元です」


 ギターの方は形を真似ているだけで、元にした楽器があるとは言っても何か別物になっている。ドラムの方はまだ本来のドラムの演奏感に近い。


「では先ほどのように一度やって見せてはくれんかの?」

「最近やってなかったんで、知ってる曲があるかわからないんですよねぇ。さっきやったのは多少あやふやな覚えでもなんとかなると思ってたんで」


 この手のゲームはバージョンアップのたびに曲が入れ替わる。自信がないことを告げるとキツネさんは残念そうに引き下がった。

 代わりというわけでもないだろうが、ソルさんがゲームから離れた質問をしてくる。


「タダシさんは楽器にも詳しいのデスか?」

「詳しいというか、まあ、多少は演奏の経験があります」

「歌だけでなく、楽器も。このような遊びがあるということは、こちらでは皆何かしら演奏できるものなのデスか?」

「みんな学校で何かしら経験はしてると思いますよ」


 大抵は小中学校で強制的に何かやらされている。リコーダー、ハーモニカなど。

 こいつらは何気に初心者にとって音を出すのが難しい楽器だ。ギターやピアノの方がずっとわかりやすい。コスト的に教養教育のためにはそのあたりで落ち着いたってことだが、はっきり言って楽器嫌いを助長するだけだ。かくいう俺も歌う授業は好きだったが、リコーダーを吹く授業は大嫌いだった。


「豊かさはそのようなところにも表れるのデスネー」

「んー……」


 ソルさんがしみじみと言うが、俺はなんとも言えないで唸る。嫌々演奏させられてた当時は心に豊かさなどなかった。

 キツネさんは男どもの会話を放って、試しにやってみようと筐体へと向かった。慣らしで簡単な曲を一度やって、またリュウさんと同じように難易度の高い曲をクリアしていた。この人らはリコーダーなんてやすやすと扱ってしまいそうだなあ。

ドラムマニアの曲目調べたら変わっててネタ変更不可避。

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