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キツネさん、滾る

「えーと、幻を見せてどうにかするって、具体的にはどんなことをするんですか」


 盛大に小っ恥ずかしい台詞を吐いたので、ちょっと気になったことを聞いて話を変える。


「うむ。例えば、殺すのも面倒な男に迫られた時は、精根尽き果てるまで儂に絞り取られる幻を見せてな。一人で打ち上げられた魚のように跳ね回っていたのは滑稽じゃったの」

「……エグいですね」

「傲慢な奴は脅して屈服せんと調子にのって面倒じゃからな。傲慢を通り越して悪であれば首を落として終わるから、そちらのほうが楽かも知れん。タダシ殿は誠実でよかった」


 俺にはしないってことを言いたいんだろうが、恐ろしい話だ。以前の失敗を糧に今度はちゃんと相手を思いやれるようになろうと考えたのだが、そもそも思いやらないと命が危険なんじゃなかろうか。あっさり首を落とすとか言う人に喧嘩になっても勝てる気がしない。いや、それくらいでいいのかも知れないけども。

 しかし、絞り取られる幻か。怖いが、経験してみたい気もする。性的欲求のためには無駄な努力をしてしまうのが男というものであるからして。今でこそ海外のサイトでモザイク無しの動画を簡単に見られるが、俺がガキの頃はポストに入れられた裏ビデオ販売のチラシの電話番号にどうやって連絡したらいいものか悩んだものだ。


「タダシ殿、どうかしたかの?」

「え、あ、いや、なんでもないです」


 下らない思い出を振り返っているうちに、キツネさんがソファーに戻って俺を覗き込んできた。何やら不安そうな顔をしている。


「その、幻を見せただけとは言え、他の男に肌を見せた女は嫌かの」


 妙な勘違いをされているようだ。ああ、そういや貞操観念の話もしたから、俺も貞淑な女性が好きなのかもしれないと考えたのか。


「いえ、関係ないことを考えてました。キツネさんは男性経験はないんでしょう?俺は女性経験あるので人の事責められないですし」

「先ほど、思いやりが足りなくて振られたと言っておったのう。タダシ殿は、その、そんなに激しく求めるのじゃろうか」


 成年向けコミックスは平然と一緒に読んでたのに、ちょっと生々しい話になるだけでソワソワしているのはなんだろう。かわいい。

 さて、思いやりが足りなかったのはベッド以外にもいっぱい反省するべきものがあるんで微妙に違うし、別に激しくはないはずだ。多分。


「人と比べた事はないので分かりません」

「む。それもそうじゃな。で、その、これから、その」


 口籠りながらベッドをチラチラ見るキツネさん。

 お互いオッケーだし!ラブホテルだし!風呂にも入ったし!ベッドは大きいし!私は下着姿だし!しちゃうんですか!?

 ってなことをお考えでしょうか。風呂とカラオケと会話で時間を消費したので、残り一時間強くらいか。残念でした。


「微妙な時間なんで、もう帰っちゃいますかね」

「ええ!?いや、十分にあるじゃろう!?」


 ちょっと食い気味に驚いたよ、この人。期待通りのリアクションだけど。


「俺、遅漏なんですよ」

「ち、ちろう?」

「時間がかかるんです」

「時間が……?ちろう。う?あ。ああ!なるほど、時間がかかるのじゃな」


 キツネさんはフンフンと頷いた後、再び何かを考え始め、閃いたとばかりに手を打つ。


「ふむ、ふむ。なるほど、ここでの目的は果たしたし、タカシ殿の言う通り帰るとするかの」


 帰ろうと言い出したのは俺だが、妙にキツネさんに気合いが入ってるのはなんだろう。早く早くと急かされたので、出入り口付近の清算機で支払いをして、鍵をシューターに投げる。

 リビングスペースを見ると、キツネさんはいまだに下着姿のままだった。


「キツネさん、服を着て下さい」

「よいよい、では帰るぞ」


 キツネさんが横を向くと、音もなく黒い穴が宙に開く。帰るって、魔術のゲートを使ってのことか。キツネさんが俺の部屋に来たときよりもかなり大きい。少し屈めば通れそうだ。


「タマ、サキ、儂等の荷物を先に持っていってくれんか」


 二つのゲルが荷物を運んで穴に入っていく。サキさん、俺に仕えてくれるみたいだけど、なんでキツネさんの言うこと聞いてるの。キツネさんは俺の嫁だからってことなんでしょうか。


「ほれほれ、タダシ殿、帰るとしよう」


 キツネさんにぐいぐいと手を引かれて穴をくぐると、ホテルとは違って狭い自室の光景が目に入る。タイムラグがないせいか、なんか窮屈で悲しい。明かりが全て消えたまま、玄関で靴を脱いで部屋の中に進まされ、終いにはベッドに押し倒された。

 表情は楽しげなのに、なんか怖いお姉さんがいる。


「タダシ殿。遅漏と言っておったの」

「え、はい」

「ちょうどよい。歌が中途半端に魔術になるのを、なんとかしたいと思うじゃろう?」

「まあ、はい」


 当面は問題なさそうだけど、誰かとカラオケに行くならなんとかしないといけない、とは思った。

 でも遅漏がちょうどいいって何。


「房中術というものがあってじゃな」


 それって夜の教科書みたいなもんですよね。でもこの流れからすると違うっぽいですよね。


「魔力の扱いに長ける者が劣る者を導くときや、魔力の多い者が少ない者を鍛錬する際に使われもする技での」


 なるほど。それで俺を鍛えると。


「具体的には何をするんです?」

「なに、難しいことはない。タダシ殿は儂に全てを任せればよい」

「ちょっと待って下さい、何をするんです!?」

「乙女の口からは言えん!」


 乙女は男を押し倒したりしませんよ、とは言っても聞いちゃあくれなさそうだ。


「えっと、つまり、する、ってことですよね」

「うむ」

「避妊とか」

「儂が孕みたくなければ孕まん」


 だから乙女が孕むとか言うのはどうなんです。ちょっと目が座ってきてて息が荒いですよ。ていうか、孕もうと思ったら孕めるんですか。処女って言ってたのにこの自信は一体。


「その、繋がって、できるだけ長く保たせるんじゃ。そして、儂の魔力をタダシ殿に流し、循環させる。そのためには我慢強い方がよい」


 キツネさんが俺に跨ったままブラを外す。タマとサキが俺の服を脱がす。っておい。


「サキ、ちょっと、なんでさっきからキツネさんの手伝いしてんの!」


 俺から剥いだ上着を持ったまま、サキらしき方のゲル生物が、にゅ、と触手を突き出し文字を浮かび上がらせる。


『主さまのためなので』


 わあいご主人様思いだね君は。タマはタマで俺の下半身から下着まで剥いでくれてやがる。臨戦態勢になっている自分が恨めしい。


「キツネさん、するのはやぶさかでないんですが、なんでそんなに荒ぶってるんです」

「タダシ殿のせいでの」


 キツネさんが白い三角形の布地の端に手を掛ける。


「タダシ殿の歌が、言葉が、体を駆け巡ったせいでの。たまらんのじゃ。ついでに魔力制御も教えてしまおうかと」

「ついでって言いましたね今。キツネさん初めてなんでしょう、いいんですかこんなんで」

「細かいことはいいんじゃよ!一時間では足りんと言っておったのう。ふふ、くふふ」


 キツネさんもついにフルヌードになった。

 尻尾が揺らめく。

イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

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