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キツネさん、アニメを知る

 まずはアニメを理解してもらおう。見てもらうのが手っ取り早い。問題はキツネさんが見て楽しめるものを選択することだ。動画サイトで、あるアニメの一話の視聴権利を購入して再生する。


「町中でも見かけたが、絵が動くのじゃな」

「アニメって言いまして、たくさんの絵を次々と写して動いているように見せて、声や音楽をつけた物語です」

「ふむ。して、どのような物語なのじゃ?」

「異世界で人と相対する者達が現代日本に敗走して、再興のために人に紛れて生活して、てんやわんやする話です」


 そしてアニメの一話が終了するまでの約二十四分間、キツネさんは静かに画面へ集中していた。


「随分と見入ってましたね」

「あれは金を払って見るものなのじゃろう?有料と書かれたところを弄っていたように見えたからの。見逃してはならんと思うたのじゃ」

「あ、そう考えてたんですね。購入した権利なら、同じものであれば七日間何度でも見返すことが出来ますよ」

「なんと。確かに七日間云々書いてあったが、そういうことじゃったか」


 長時間デスクワークしていたかのように、んんー、と腕を大きく上げて伸びをするキツネさん。


「娯楽なんで、そんなに根を詰めて見るものじゃなかったんですが」

「儂としては色々と興味深かったがの」

「そうですか。さて、ほどよく腹も空いてきました。夕飯の買い出しに行こうと思いますが、キツネさんはどうします?」

「当然ついて行く。儂はさほど腹が空ききっては居らぬが、買うだけ買って後で食べてもよかろう」


 キツネさんが服を着るのを待つ。セクシー下着の上から今日買った服を着直した。白のワンピースに下着の黒がちょっと透けて見えるが、問題無いだろう。多分。

 サキとタマをまとわせて外に出て、スーパーへ向かう道すがら、先ほど見たアニメを起点に話をする。


「先のアニメでは、役所の者に術をかけて戸籍を作っていたが、あんなに簡単にいくものなのかの」

「いかないと思います。下っ端の一人を惑わしたくらいじゃ無理でしょう。その辺は娯楽のお話のためってことで、ざっくり省いているかと」

「ぬう。どうしたものかの。いっそのこと、役所でありのまま話してみるか」


 すいませーん、異世界から来たんですけどー、どうしたらいいですかねー? ってか。


「話すだけだと心が病気な人扱いでしょうね。異世界人の証明を出来ないと」

「ふむ。ならば術で何かこちらでは普通出来ないことをするとか」

「まあ例えば、こっちに来たときの黒い穴を開けて、役所の人を異世界に招待するってのは手っ取り早いかもしれません。騒ぎになるのは覚悟するべきでしょうが」

「騒ぎか。こうしてタダシ殿とのんびり買い物に出歩くことが出来なくなるのは避けたい。慌てて無理をすることもないかの」


 世話になる人に迷惑をかけたくないといった趣旨ではなく、まるで、俺と一緒に居たいから騒がれたくないと言っているかのように聞こえる。自意識過剰だろうか。


「しかし、アニメとやらは面白いものじゃの。一話とあったし、最後に次回と書いてあった。続きがあるのじゃろう。先ほどのものを見るのにいくらかかったのじゃ?」

「二百円くらいですかね。全部で十三話だったっけな。全部見ようと思ったら五時間くらいで、太陽が天辺にあるくらいから空が赤くなるくらいまでかな」

「全てを見るのに二千六百円ほどか。そこそこかかるの」

「もっと安く済ませる手はあります。それと、今は有料ですが、初めは七日ごとに一つ発表されて、発表された直後から次の話が発表されるまでは無料で見られたんですよ。俺はそうやって発表直後のアニメをよく見てます」


 正確にはテレビ放映との関係性を説明しなくてはいけないが、如何せん俺はテレビを持っていない。


「新しいものは金をかけずに見られて、古いものは金がかかると。ふむ。陶器なども新しいものより古いものの方が高かったりするが、そういうことなのじゃろうか」

「そういうこととは違います。アニメを作るのに費用の面で色々と事情があるらしいので」


 これまたテレビ放映が関わってくる。スポンサーとか、委員会式制作とか、おおまかな事情はネットで知っている。そんな程度のモノが、全く知らない人にどう教えるのが良いことか判断に迷う。というか、見るだけだったら知らなくていいことだ。


「もうちょっと経ったら、新しいアニメが始まります。小難しいことはおいといて、それを一緒に見ましょう」

「そうしようかの。その前に、先程見たものの続きが見たい。帰ったらタダシ殿に金を払って、代わりに続きを見る権利を買って貰えばよいのかの」


 レンタルビデオ屋に行けばもっと安く見られるんだが、買い物の後にすぐ見たいようだからそれでいいか。


「それでいいですよ」

「儂がしたいことくらいは儂の金でなんとかせんとの。借りた金も返しきって居らぬ居候の身では、何を言っても格好がつかぬがのう」

「貸し借りに拘りますね、キツネさんは。まあ、今日使った分は返してくれると助かるのも事実です。差し上げたと考えてもらってもいいんですが、そう言い切れない俺も格好つかないですね」


 格好つかない同士じゃのう、とコロコロ笑うキツネさん。

 格好つかない同士ですね、と俺も笑う。

 正直、楽しいからどうでもいいや。

ちょっと難産でした。

週一ペースを目指してますが、予告なく遅れることもあると思います。

格好つかない作者ですが、引き続きのんびりお待ち頂けると幸いです。

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