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キツネさん、ネットを知る

 何故女同士で子作りすることになったのか聞けそうにはなかった。というか、男といたしたことがないのに、平然とエロ話出来るのは何故だ。

 まあそんな疑問はさておき、情報収集手段について教えることにしよう。ちょっとゴツめの据え置きPCの電源を入れる。


「スマートフォンや、このパソコンを使った情報収集を教えます」


 立ち上がったマシンが、アームによって支えられて折り畳みテーブルの上に浮いている大きめのモニタにログイン画面を映し出す。

 キツネさんを隣に座らせて、テーブルの上で、マウス操作、キーボード入力、パスワードとその意味、そしてインターネットの接続方法、ネットブラウザの起動方法を教える。


「機械が動く理屈とかは置いといて、操作の仕方とか、ここまで説明したことは分かりましたか?」

「とりあえずはの。ローマ字入力とやらは覚えるのに手本が欲しい。何故ローマ字と言うのかよくわからんの」

「後でローマ字入力表を書いておきます。で、このインターネットとは何かですが、他の機械と繋がって情報のやりとりが出来るんですね。何故ローマ字と言うのかは俺も知らないんで、試しに調べてみますか」


 ブラウザ上の検索バーにマウスカーソルを合わせ、「ローマ字」と打ち込んでエンターキーを押すと、即座に検索結果が示される。


「こうして文字を打ち込むと、インターネットで繋がった他の機械の情報を調べて映し出してくれるわけです。今映っているのは一覧です。ここからさらに……」


 上部に示された、情報共有サイトを開く。


「他のところに移動して、打ち込んだ文字についての情報を調べる、と。今見ているここは誰でも情報を編集出来るところなので、情報の信頼性は高くありませんが、ちょっと参考にする程度なら有用なところです」

「はー。これでは、権力者が箝口令を敷こうにも上手くいかぬの」

「まあ、誰でも情報を発信出来るってことは、デマもそれだけ出回るので、結局は情報を正しく判断出来る人じゃないと大差ないですけど」

「なるほどの」


 ローマ字を何故ローマ字と呼ぶのか、時折キツネさんに現代語を解説しながら読み進める。過去には公用語をローマ字表記にするべき、なんて論争もあったという。そんなことしていたら、公用語は英語にとって代わられて日本語はなくなっていたかもしれない。

 そうキツネさんに告げると、


「儂は外国の言葉も分かるが、他のあちらの者がこちらへやって来るとしたら、言葉が変わらずに済んだことを有難く思うじゃろうな」


 いつか異世界との交流が表立って成り立つことがあるのだろうか。いろんな問題も噴出するだろうが、楽しそうな未来図だ。


 続けてお気に入りサイトリストから動画サイトに飛び、お気に入り動画リストから、なんとなく狐の動画を開く。世話をしている人にキュウキュウと甘えて餌を貰っている。かわええ。


「下着を調べた時のように一枚絵だけじゃなく、こうした動画もネット上から探して観賞することも出来ます」

「すごいものじゃの。ネットとやらを見て回るだけで一日が終わりそうじゃ」

「世界中で毎日情報が発信されてますから、一日中ネットをしても発信される情報全てを見ることは出来ないでしょうね。時間を潰すだけならいくらでも潰れます。ネットでどんな情報を手に入れて、何に活かしたいかが重要です」

「それはどこでもいつでも変わらぬことじゃの。しかし……此奴らは随分と飼い慣らされておるの」


 モニタに映る、人に撫でられ気持ちよさそうにまぶたを閉じる狐達。


「あーあー、だらしない顔をしおって。野性がほとんど感じられぬな。幸せではあるのじゃろうが」

「だらしないんですかこれ。まあ、幸せそうならいいんじゃないですかね。生き物を飼い馴らすのは、あちらでもあることでは?」

「馬やら鳥やら龍やらあるがの、彼奴らは役に立つから飼われているのであって、此奴らは何の役に立っておるのかの」


 ちょっと待て。りゅう?


「りゅう?」

「龍がどうかしたかの」

「どうかしたもなにも、りゅうってトカゲや蛇みたいな鱗をもったやつですか」

「そうじゃが」


 龍がいるのか。つか、飼われてるのか。


「こちらでは龍ってのは想像上の生き物なんですが、ええと、こんなやつですか」


 目の前のモニタに、龍を検索して出て来た画像を映し出させる。蛇とトカゲの合いの子に、ワニの顔をつけてたてがみを生やして角をつけたものだ。


「想像上の生き物と言う割には、奇妙な一致があるの。そうじゃよ、これによく似ておる。龍は飼うというか、龍一族との交流で人里に若い者が何十年か住むのじゃ。人側は魔物への戦力として、龍側は修行の一貫などとしての」

「龍かあ。見てみたいな」


 龍。なんと心くすぐる響きか。


「ふむ。いつかはタダシ殿をあちらへ招くのもよいかの。こちらほど安全な世の中ではないが、サキが居ればなんとかなるじゃろうし、儂も大抵は一緒に居るようにするしの」

「それはありがたいですね。ていうか、サキって強いんですか」


 手もとの水玉生物を撫でながら聞いてみる。

 ゲル状だったと思うんだが、何故か撫でようとしたら撫でられる不思議生物。


「力だけなら、タダシ殿も持ち上げられたじゃろう。それに、どこへでも入り込める身体と器用さもある。並大抵のものでは歯が立たぬよ。文字通りにな」


 ああ、そう言えば胴上げされたな。


「そっかー、お前強いんだなー、サキ。そん時はよろしくなー」


 サキは、にゅっと一部を触手状に伸ばし、コクコクと頷いた。掃除洗濯風呂護衛か。俺には過ぎた存在だなあ、ほんと。

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