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異世界のキツネさん  作者: QUB


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キツネさん、コンソメ派

「兄上は結局何を言いたかったんじゃ」

「いや、妹分が結婚するともなれば心配するもんだろう」

「儂を人外と言い張っておいて、そこらの者どもと同じ理屈で心配するとは理屈に合わんじゃろうに」

「人外と一般人だからだよ。キツネちゃん、妲己とかが亡くなったとき凄い落ち込んでたしさあ……」


 どうも兄として妹を心配していたらしい。キツネさんが俺にどうにかされるとは微塵も心配してないようだ。俺のことはあんまり気に留めてないっぽい。

 キツネさんと玄武さんが軽口を叩きあい、弛緩した空気が流れ始めた。

 各々足つきのお膳を持って話したい人のところへ近寄り、並びが崩れている。いまいち作法がわからん。そもそもが神代レベルで時を過ごしている方々に堅苦しい作法があるか怪しいところだ。イザナギ様も初見時からやけに自由に見えるし。

 そのイザナギ様の元には推定仏陀、ソルさん、秀吉さんが集まって方陣を組み何やら話している。俺とキツネさんの前にも玄武さんと信長さんが移ってきた。お膳を持ち寄って隙間なく縦横二つずつ並べ、即席のちゃぶ台にした。

 玄武さんがポテトチップスの袋をパーティー開けにして、お膳の角が四つ集まる真ん中に置いた。


「あー、ジャガイモの味が懐かしすぎる。原産ってどこだっけこれ。アメリカ?うちにはまだ出回ってないな」

「南アメリカですね。どこまで生態が似ているのかわからないので、行っても見つかるかわかりませんけど」

「ああ信長さん、俺には敬語なしでいいよ。お互い体感時間じゃ、どっちが年上かわかんないし。これを懐かしめる相手は同郷ってことでいいでしょ」

「全く同じ日本から来ているかはわかりませんけどね。じゃあ、人目がないときにはそうさせて貰おうかな」


 二人とも、箸で器用につまんでサクサクと消費している。

 キツネさんが少し動揺しつつ、二人に尋ねた。


「何故ポテチを食べるのに箸を使っておるのじゃ?」

「ああ、癖かなあ。漫画やゲームしながら食べようとすると油で汚れるじゃない」


 玄武さんの言葉を受けてキツネさんも箸でポテチを食べてみるものの、彼らを気にせず手掴みで食べる俺を見て一考し、手掴みに戻った。面倒だったようだ。


「漫画もゲームもビールがあればよいわ。手は汚れん」

「ながら食いって行儀の悪い食べ方をするために行儀をよくするって、わけのわからない食べ方ではあるからね。気にしないでいいと思うよ」

「そうする」


 憮然としたキツネさんを見て、静かに笑っていた玄武さんがラジカセを見た。

 ラジカセから流れる音楽は変わり、壮大な情感を思い起こされる曲となっている。

 ドラクエ3のフィールドマップ曲だ。


「……なんだか旅にでも出なきゃいけない気がしてくるな」

「気持ちはわからないでもないけど」

「違うCDにしよう。このままゾーマ戦のBGMが流れたらリュウ(かあ)さんにでも戦いを挑まなきゃいけない気分になりそうだ」

「はて。竜の女王は対ゾーマ戦の必須アイテムを渡す側ではなかったかの?」


 信長さんに曖昧に肯定されキツネさんに突っ込まれつつ、玄武さんは持ち込まれたCDをあさり始める。


「いろんな曲を聞けるヒット曲集もいいが……ドラクエの他にもゲームのサントラがあるな。他には……TMNにガンダム主題歌集に、BON JOVI?どういう趣旨なんだこれ?」

「その辺りはタダシ殿の趣味じゃのう」


 俺の趣味があっさりばらされる。キツネさんもイザナギ様もファミコンが趣味になっているのは俺のせいだろうが、ばれたところで何も問題はないはずだ。うん。


「統一性がねえなあ、悪くはないけど」


 余計なお世話だ。俺からすれば、メタルだけ聞いたりテクノだけ聞いたりする方が音楽的に不健康だ。ポップカルチャーとして幅広くつまみ食いのように聞いたり、音楽好きとして幅広く多ジャンルを聞く方が健康的だろう。まあ言うほど多ジャンルを聞く人間でもないので口には出さないが。

 玄武さんがあれこれ物色しているところに信長さんも参加する。


「先ほども確認しましたが、随分と持ち込みまれましたね。ありがたいです」

「タダシ殿の所有物は譲ることはできんがの。他の封も開けていないものは土産として買ってきたものじゃ。そっちはここに置いて行くつもりじゃ」


 俺は私物のCDが混じっていることに気が付かなかった。つまりは持ってきたCDの大半はキツネさんが買ってきたものである。

 大量の封の空いていないCDをざっと確認して信長さんが呟く。


「ほとんど新品ですよね、これ」

「キツネちゃんはこちらの音楽文化をどうするつもりなんだか……まあいいや、知らね。洋楽ならGreen Dayとか……ないなあ。ヒット曲集の方に一曲くらいあるかなあ。あ、やべえダンジョンに入った。はやく他のCDを」

「別に何を聞こうともよかろうに」

「気分の問題なんだよ」


 信長さんとダンボール箱を覗き込んでいた玄武さんが、焦らなくてもいいのになぜか気が逸っていてキツネさんに呆れられる。単純に陰鬱というかおどろおどろしい曲を変えたいだけかもしれない。

 そんな中、信長さんが一枚のCDを取り出し玄武さんに尋ねる。


「先にこれ聞いていいです?」

「なんのやつ?」

「バンプです。結構好きなんですよ」

「ああ、いいんじゃない?俺もうちょっと探してみる」


 信長さんが手に持つのはまた俺の私物、BUMP OF CHICKENのメジャーファーストアルバム「jupiter」。

 ラジカセが一旦止められ、玄武さん以外のみんなが何事かとラジカセの方を気にかけている。CDが入れ替えられ、再び音楽が鳴り始めた。

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