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キツネさん、下着を買う

 道の端により、下着をスマートフォンで検索する。

 見本となる画像を適当に探し、さらにどう説明したらいいものか歴史なんかも調べてみるが、どうにも上手い説明が思いつかない。

 とりあえずキツネさんに画像を見せてみる。スポーティなブラジャーとショーツの下着姿。


「これが女性用の一般的な下着です。素肌に最初に着けるものですね。月のものとかは関係なく、女性なら大抵着けているはずです」

「ふむ、女であれば必須なのじゃな。股周りは分かるが、胸に着けるのは何故じゃ」

「えっと、着けた方が垂れにくくなるらしいです。それと、揺れをある程度抑えるとかかな」

「ふむ、確かに袴に比べ今は胸元が楽じゃが、動くと揺れるの」


 確かに、女性の和装は胸の下を抑える形だ。それが乳房の支えみたいになっているのかもしれない。


「褌があってタマがきれいにしてくれるし、尻尾の件もあって下に着けるものはひとまず置いておくとして、上に着けるものは常識を学ぶ意味でも買っておくべきだと思うんです。けど、なんと言うべきか、女性用の下着を売っているところって男には居づらいものでして、キツネさん一人で買ってみて欲しいんです」

「構わぬが、何故居づらいのじゃ?」

「いやあその、普通は下着姿ってのは男女であれば深い仲でないと見せるものではなくてですね、そうなると、下着姿そのものが夜の営みの小道具にもなるわけで」


 道端で若い女性に語るこっちゃねえなと思いながらも、セクシー系の下着の画像を検索してキツネさんに見せる。一つ見せると、ふむふむ、他には、とキツネさんに促されて次々と画像を開いていく。

 ブラジャーがスケスケで突起物がほとんど隠れていないもの、スケスケどころか突起物が丸見えになるように空けられているもの、むしろ紐しかなさそうなもの。俺の手元を覗きながら、ほー、これはなんとも、ふーむ、などと呟きが聞こえる。

 ショーツも同じようなものだ。ついでにオーバックも見せる。


「尻尾の位置を考えるとこういうものがありますが、いや、必要以上に穴が大きくて見せる用ですねー、これも。実用的なのは夜だけっぽい」

「はー、作った者は獣人が居らぬ世で何故このようなものを考えたのやら……いや、何故もないか、そういうことなのじゃろうな」


 いや、オーバックはヒップラインをキレイに見せるためのものだったと思うんだが、どうにも目の前の画像を見るに否定出来ない。


「ここまで過激でなくとも、女性としては下着姿を見られること、ひいては手にとっているところを男に見られると裸を見られるのに近い恥ずかしさとか、嫌悪感、怒りみたいなものを感じたりするってことだと思うんです。そういうものを選ぶ場所なんで、どうにも居づらくて」


 理屈としては、そう間違っていないだろう。単に女性ばかり居る場所ってのも理由の一つではあるが。


「知らぬ男など木石とでも思えばよかろうにの。しかし男だけならばともかく、女の付き添いに居るだけでも居づらいのかの? 」

「男女揃ってだとなんと言いますか、周りには脱がすため、脱がされるための下着を仲良く買いに来ているように思われるんですね、おそらく。それに一緒に行っても採寸の役には立ちませんし」

「知らぬ者にどう思われようが構わんが、採寸とな。仕立てると高いのではないかの?面倒をかけ通しじゃが、さすがにそこまでしてくれんでも」


 申し訳なさそうな顔をするキツネさんから想定外の意見が飛んできた。


「いや、出来合いのものの中から形にあったものを買うために調べてもらうだけですよ、そんなに高くはないと思います」

「ならばよいのじゃが。ふむ。何をすべきは大方飲み込めたしの、買い物くらいは出来るようにならんとの。タダシ殿にあまり不愉快な思いをさせるわけにもいかぬし」

「そう言ってもらえると助かります。多分これ一枚でいくつか買えると思います」


 財布から一万円札を取り出し、キツネさんに渡す。


「……タダシ殿、靴の倍以上も金を持たせるとは、下着とやらはそんなに値の張るものなのかの?」

「物によっては。布そのものの値段より人の手間賃の方が高いですから」

「なるほどの。ではどこで買うのじゃ?」


 キツネさんの言葉で簡易下着講座を締めくくり、目的の店を探す。デパートとかの方が無難かもしれないが、近くに女性下着専門ショップがあったはずだ。

 歩いてすぐに見つかった。


「それじゃあ試着は出来るか分かりませんが、店員さんに採寸をお願いして、サイズの合うものを買ってきてください。サイズはCの65とかアルファベットと数字で伝えられると思います。それを目安にして、店員さんに意見を聞いてもいいですから」

「うむ。行ってくる」

「急がなくていいですからね、その辺で待ってますから」

「すまぬの、時間がどれほど必要か分からぬ。居場所は探し出せるゆえ、どこかで茶でも飲んで待っていてくれぬか」


 そう言ってキツネさんは店へと入って行った。ガラス張りで中がよく見える。少し戸惑ったようだが、店員さんらしき人を首尾よく見つけられたようだ。

 おっといかん、はたから見たら下着をガン見する怪しいオッサンだ。

 探し出せるのが当たり前のように言っていたが、少々不安ではある。ゲームセンターの喫煙所で時間を少し潰したら、この辺りでスマホでも弄っていよう。


 近くのビル丸ごとゲームセンターになっている建物の中の一角で一息つく。

 女性用の衣服の買い物としては、今のところあまり時間をかけてないはずだ。買い物そのものを楽しむわけではなく、単純に必要物資を調達しているだけだからかもしれない。

 もしくは、キツネさんが遠慮してくれていただけの可能性。当然キツネさんはこちらの貨幣なんて持ち合わせてないから、払いは全て俺持ちである。もしキツネさんが何らかの職を得られたら、異世界物見遊山を兼ねて普通以上に買い物に時間がかかるようになるかもしれない。

 エロマンガの意見交換を忌憚なく行うなり、着替えでとっとと褌一つになるなり、今のところ下手な男よりさっぱりした付き合いをしている。無駄な時間はかけない性格の可能性も高い。

 いや、美人で若く見えるが、文化が中世や戦国もしくは江戸時代ベースなら、結婚していてもおかしくない。女性が買い物を楽しむ文化とかどうなっているのかも分からない。

 二、三本吸ってからでいいかと考えていたが、やっぱり一本吸い終わったらさっさと出よう。

男一人でも店員さんは普通に対応してくれます。

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