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レアカードでごめんなさい!  作者: 九重七六八
9/30

私、死にたくありません!(二)

 悪魔の執事レベル7との戦闘です。メンバーたちと共闘します。レイチェルちゃんは役に立つか?

その私の寝惚けた声と同時に、例のごとく畳大のカードとなって海斗(様)の周りに召喚されました。前列は例のお姉さん3人組。後方は小夜さんとレイチェルと巫女さんの西宮さん。いわゆる現時点でのレギュラーです。

それぞれ3つの数字が表示されています。一番上がいわゆるライフポイント。みんな1000台です。小夜さんは1205と表示されて一番多いです。ちなみに私は一番少なくて105であります。


(ちょっと差が大きくないですか?)

次の数値は攻撃力。先頭の3人のお姉さん方はそろって、2000台です。


(わ、私は…恥ずかしくて言えません)


 それよりも、呼び出されて驚いたのは敵がプレーヤーではなく、変な生き物?ゲームの中だから、モンスター?よく見るとそのキャラの上に英語でENEMYと表示がされているではありませんか。


エネミーって言うの?

頭は羊なのに2本足で立っている。

それより、なぜ、タキシード着ているの?

 

タキシードがはちきれんばかりのマッチョ体型の羊

目は真っ赤で怖い!

そして、手にしているのは大きな斧で血まみれなのです!


「ケケッ…悪魔の執事レベル7だぞよ」

「あ、あくまのしつじ?ひつじ?」

(狙ってますか?それはギャグですか?)


 周りを見るとこの羊さんと戦っているのは、海斗様だけではありません。一人、二人、三人…五人もいます。そのうち、3人はMマークが頭の上で回っています。メンバーっていう人たち。海斗様は91ですが、あと3人は、303、458、658の数字が見えます。

残りの二人はVマーク。ビジターって言われる人です。


「うおおおおおおっつ!」

 羊さんの恐ろしい咆哮が響き渡ります。この戦いを見物しようと外部のネットから接続した小さなアバターたちが周りを囲んで声援を送っています。なんだか、運動会で応援されている場面を思い出しました。


 悪魔の羊が巨大な斧を振り回し、ビジターさんの前衛カード三枚を一撃で切り倒しました。カードの女の子が


「きゃああああああっ!」

と言ってカードごと消えていきます。


さらに口から炎を吐きました。

前衛が除外されたビジターさんの青い玉が3つが砕け散りました。


「うおおおおっ~敵が強すぎた~」

パキン…とビジターさんは戦闘空間からはじき出されました。


 背後から、海斗様とメンバーたちが攻撃します。お姉さんトリオの集中攻撃!ズガン!と4つの大きな切り傷が瞬間に悪魔の羊の体に付けられます。しかし、それは瞬時にふさがりました。ただ、悪魔の羊さんの右上に現れた数値が減っているのが分かります。


(でも…?え?0が1つ、2つ、3つ…)

その数値は5万。

(これって、強いってやつ?)


「小夜!凍てつく指名!」

 海斗様が小夜さんに激しい口調で命令します。あの冷静な海斗様がこんな態度って……。もしかしたら、大ピンチってこと?


「ケケッ!」

 小夜さんが右手を上げて指を指します。99%の体力を一瞬で奪う必殺技です。


ですが、それは悪魔の羊さんの体に当たる前に何かに当たり、丸く光る波紋に変わりました。


「ダメぞよ、海斗、魔法無効化70%ぞよ」

「ちっ!ZIPさん、タイゾー、ノンク、10秒任せる」

 

 そう言って仲間に戦闘を海斗様は陣形を再編成しました。いわゆる円陣というやつで、防御重視で防御力を30%上昇させるというものです。その間にメンバーさん3人が果敢に攻撃を加えます。しかし、もうひとりのビジターさんのクリスタルが3つとも破壊されてしまいました。


「わあああっ…やられたあああ!」

 パキン…と音がしてまた戦闘空間からはじき出されました。どうやら、戦闘で敗れると戦闘エリアとして指定された空間(後で小夜さんに聞いたら、トライゾンと呼ばれているらしい)から放り出されるらしいです。(但し、ビジターだけ)


「レイチェル、クリスタルガードを発動。対象は俺を含めたメンバー5人」

「は、はい?」

 何だか分からないけれど、私は前に出されました。両手を上げるとそこから青い光の玉が現れ、それを投げつけると半透明の青いカーテンのようなものがメンバーさんたちを包み込みました。


「グオオオッツ!」

 めちゃくちゃに巨大な斧を振り回す悪魔の羊さん。メンバーのノンクさん(M658)の前衛カードが砕け散り、ノンクさんの青いクリスタルも1個破壊されました。海斗様も含めて、必死の総攻撃を開始します。

 

 どんどん数値を削っていきます。5万が2万まで減りました。ですが、ここで悪魔の羊さんは、凄まじい炎を口から吐き出しました。メンバー4人がそれをまともに受けてしまいます。


「ぐおおおっつ!」

「ま、まずいぞ!」

「こいつ、ファイナルブレス発動しやがった」

「レベル7なんかで持っているのかよ!」


 見るとZIPさんはカード6枚のうち、3枚が破壊され、自分のクリスタル(3つある)も2つが砕け散っています。タイゾーさんも同じ状況。ノンクさんも2つ破壊され、カードは全て吹き飛びました。海斗様は円陣を組んでいたことと、私のクリスタルガードのおかげでカードもライフクリスタルも失っていません。

 でも、何だか、力が入りません。私はクタクタとその場に倒れ込みました。

なぜって?


私の耐久力…またしても(1)ですか!


 海斗様は私をチラリと見ました。

「ちっ!小夜!もう一度、凍てつく指名!」

 戦闘中は無駄な言葉を一切発しない海斗様がそう命令しました。

「分かったぞよ!」

 小夜さんが髪の毛を振り払い、凄まじい形相(怖っつ!)で指を指しました。

「とおれええええええええええっ!」

 海斗様が叫びます。私は倒れながらその光景をただ見つめるだけでした。

バチッ!っと音がしました。


悪魔の執事の右上の数字が真っ赤に染まります。

「加奈子!射撃!」

「はい、海斗様」

 ポリスレディの最上加奈子さんがハンドガンを放つとそれは悪魔の執事の心臓を捉えました。一瞬動きが止まるとそのままガラスが粉々になるように砕け散ります。


「ふうふう…。危なかった…ランク91の海斗君がいてよかった」

そうZIPさんと呼ばれていた30代後半の日焼けしたスキンヘッドのおじさんが両手を膝に当てて、荒い息をしながら海斗様に話しかけました。


「危なく街中で命を失うところでした」

「レアカードの特殊能力がなければ俺たち…」

 タイゾーという人とノンクという人はもっと若く、高校生くらい。ジーパンにTシャツという軽装でその場でヘタリこんでいます。

 

 私は相変わらず倒れたままですが、海斗様が例のアンプルを私に指で弾いて渡しました。それを折って何とか飲む私。数値が105になって体に力が入りました。

「ちっ!この役たたずが!もう少しで破壊されるところだったじゃないか!」

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」

 とりあえず、反射的に謝る私。海斗様はそれを冷たい目で私を一目見て、プイと顔を背けました。

(つ、冷たい…この男、冷血男だ。本当、失礼なやつです!)


「いくら私が死にそうになって足を引っ張ったからと言って、あの態度はないんじゃない!」


 ちょっと元気になった私はそう小声で言いました。すると小夜さんが、

「海斗はお主の命を救ったぞよ。ついでに他のメンバーの命を救ったことにもなるぞよが」

「え?命?私の?メンバーさんの?」

 どういうことでしょうか?あのエネミー(悪魔の執事)にやられたって、戦闘空間から除外されて見学に変わるだけじゃないの?」


「お主、能天気ぞな」

「違うの?」

「それはビジターだけぞな。メンバーはエネミーとの戦いは命懸け。我らカードも同じぞな。奴らに破壊されたカードは二度と戻らないぞな。ケケッ…」


「それって?」

「ロスト……死ぞな。小夜の場合は、もともと死んでいるからいいけれど、お主はいろいろ事情がありそうぞよ。カードが破壊されたら本当に死んでしまうぞな。ケケッ!」

 現在、私の記憶は定かではないですが、最初からカードのキャラではないです。元は人間。何らかの事情でカードになってしまったのです。もし、カードごと破壊されたら…。

 

 元の体に戻るのならよいのですが、どうもそんな都合のよいことにはならない気がします。それにしても、瀕死の私を救うために、自分の命を賭けてあんなに必死で戦った海斗様。


もしかしたら、私のことが必要なの?


「おい、早く飲め!このウスノロ」


そうやって頭をグリグリされる私。カードの中でドタバタしました。

(優しいところがあるなんて少しでも思った私が馬鹿でした。この男、やっぱり失礼です!)


 このゲーム。エネミーと戦ってクリスタル三個を破壊されるとプレーヤーは死亡。カードは破壊されるとロスト!え?主人公とヒロイン?いきなり、ピンチだったの?

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