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レアカードでごめんなさい!  作者: 九重七六八
8/30

私、死にたくありません!(一)

 あの最初の戦闘で心臓を止めてくれた幽霊の小夜さんに案内されて、カードケース内の空間の秘密を知るヒロイン?お仲間のレギュラーのお姉様方やライバルのお姉様が……。

 海斗様…様は付けたくないけれど、癖にしておかないとまたほっぺたギューをされてしまうので、涙を飲んで「様」を付けます。


その海斗様の腰に付けられたカード保管ケースに閉じ込められた私(華)ですが、中は小奇麗な1LDKの部屋になっていました。革製の窮屈な小さなケースだったので、これは以外です。部屋には素敵なベッドが置かれ、引き出しには下着やらパジャマやらが準備されて、なんと嬉しいことにシャワー付きのお風呂まであるのです。


試しに扉を開けて外に出てみると、私の部屋と同じような扉が6つ。あと、大きな扉が1つありました。何だか嬉しくなってしまった私ですが、脳内お花畑の少女ではありません。なんでこんなことになっているのか、状況整理ができていないのです。


「ケケッ!」

急に背後で不気味な声を聞いて思わず、

「ぎゃあ!」

と大声で叫んでしまいました。振り返るとあの足のない小夜と呼ばれている人です。

「あそこはイレギュラーのカード待機室ぞよ」

そう言って小夜さんは、大きな扉を指差して言いました。

「ぞよ?」

(この人、変な語尾です)

「レギュラーには個室が与えられるが、イレギュラーはあの大部屋ぞよ。まあ、居心地は悪くないぞよが、リアルレアだと浮いてしまうぞよ」


リアルレア…海斗様…(もう口癖)が言っていた私のカードの特性らしいです。そう言えば、小夜さん?(見た目は髪で顔が見ない。そして足がない…幽霊)もリアルレアだと海斗様は言っていました。

「あ、あの?小夜さん?」

「なんぞよ?」

「リアルレアって何ですか?」

「ケケッ!知らないぞよか?」

「はい。全く知りません」

「こっちに来るぞよ」

そう小夜さんが言うと私の手を引っ張って、一番近い個室の扉をノックしました。小夜さんの手は冷たく、凍りつくような感触。

(幽霊だ、この子、絶対に幽霊!)

ぞくぞくしながら、コンコンという音に扉が開きました。


「こんにちは」

中から出てきたのは、あの海斗様の前衛中央で戦っていたフェンシングの人。

「新入りだから挨拶に来たぞよ」

そう小夜さんが言うから、私は慌てて、

「は、初めまして。鈴木華です!」

と自己紹介しました。するとフェンシングの人は首をかしげています。

「すずき?は?な?そんな仲間増えましたでしょうか?」

ショートボブでいかにもアスリートという顔立ちのフェンシングの人は思案顔です。

「あ、間違えました。レ、レイチェルです」

「ああ、レイチェルさんね。先ほどの戦闘で敵側にいた人ですね」

「は、はい。そうです」

「私は長谷川杏子はせがわきょうこフルーレの杏子よ。よろしくね」

「はい、こちらこそ」(って、何をよろしくなんでしょうか?)

私がそう言うと杏子さんは、パタンとドアを閉めた。

(え?おしまい?)


何だか冷たいなあ…と思いつつ、小夜さんに促されて二つ目のドアをノックしました。小夜さんに「自己紹介の時、さっきみたいに鈴木華と名乗るぞよ」と言われて、変なこと言うなと思いつつ、

「初めまして。鈴木華です!」

出てきたのは前衛左で戦っていたOLの人。フェンシングの人と同じように首をかしげています。こちらはウェーブがかったゴージャスなロン毛茶髪です。

「すずき?は?な?そんな仲間増えましたでしょうか?」

先ほどと同じセリフが返ってきました。

「あ、間違えました。レ、レイチェルです」

「ああ、レイチェルさんね。先ほどの戦闘で敵側にいた人ですね」

「は、はい。そうです」

「私は工藤南くどうみなみバンカーの南よ。よろしくね」

「はい、こちらこそ」(あれ?さっきと同じだよ)

そして、パタンとドアを閉められてしまいました。


その後はポリスレディの最上加奈子もがみかなこさん、巫女さんの西宮霧江にしみやきりえさんと部屋を訪れたが、反応は全く同じでありました。

「ケケッ…これで分かったぞよ」

「小夜さん、彼女らと私たちは違うのよね」

「そうぞよ。彼女らは普通カードキャラ、小夜たちはリアルカードキャラぞよ」

普通カードはゲームでプログラミングされたものだそうです。だから、キャラの話し方はパターンが決められていて、複雑な会話は成り立たないのです。それでも進化したAIを搭載するLBCGでは、かなり多くの会話パターンがプログラムされているから、普通にしゃべれるけれども人間並みのコミュニケーションはさすがに難しく違和感を覚えてしまいます。


「じゃあ、人間のように自由に話せるリアルカードって?」

「ケケッ、それはその人間自身だからぞよ」

「じゃあ、今の私が本当の自分?冗談じゃないわ。私は聖ジョセフィン高等学校1年で鈴木華…ううう」

 ここで私は重要なことを忘れていることに気がつきました。そう、私は自分の名前と高校生だったことしか思い出せないのです!


「リアルカードは、LBCGのオプション機能の一つで、女の子を写真に撮るとその映像を瞬時にキャラ化してできるカードぞよ。だけど、会話プログラムは既存のカードキャラと同じパターンになるぞよが、たまたま、非常にレアなケースであるぞな」

「レアなケース?」

「写真を撮った時に、たまたま、その人間が死んでしまったなんて時にカードキャラに魂が宿ってしまうことがあるぞな」

「ば、馬鹿な。そんなことあるもんですか!」

 

 それは聞き捨てならないです!(死んでしまったなんて!)

「お主のケースは知らぬが。小夜はたまたま通りかかった時に撮影されて、写真に封じられてしまったぞな」

「え?てことは、小夜さんは?」

「れっきとした浮遊霊ぞな。写真を撮った奴は、カード化した自分を不気味がってカードショップに売りやがったぞな。しかも値段は1000ポイント。クズぞな」

「でも、小夜さんてレアカードでしょ」

「このゲームは萌えゲームぞな。小夜のようなホラーキャラはいらないぞな」

「で、お店に売れ残っていたところを海斗様に買われたってことです?」

「そういうことぞな。海斗はいい買い物をしたぞな。ケケッ!」

 見た目は怖い小夜さんだが、会話は饒舌で楽しい。これはこの世界で友達になれるかも…


 なんて、この世界に馴染んでどうするの?


とりあえず、幽霊キャラの小夜さんとは仲良くやっていけそうだ。ただ、不意に現れて、耳元で(ケケッ!)と出没するのはやめてほしい。驚いて毎回、腰が抜けそうになります。


 しかし、リアルカードはLBCGの撮影機能で生まれたカードなんて…。

私は生前(?まだ死んだと決まったわけじゃないが)にどこかのカメラ小僧に写真撮影されて、その直後にどうにかなって魂がカードに封印されたということらしい。にわかに信じがたいのですが、この状況を説明付けるなら納得がいきます。普通に撮影されただけなら、リアルノーマルカードで撮影された本人は何の影響もないのですが、たまたま魂が抜けるような状態でカードになると「レア」になるのです。


確かに「レア」だわ。そんなケース


「お主、ついでに大部屋見に行くかぞよ?」

 小夜さんにそう言われて、今度は大部屋に見に行きました。

 大きな扉を開けるとそこは巨大な異空間・・・ずっと奥?まで2段ベッドが続いている不思議な光景が広がっています。


「ここは海斗の手持ちカードが保管されているところぞよ。レギュラー以外はここで暮らすことになるぞよ。お前も海斗様に愛想をつかされるとここで暮らすことになるぞよ。頑張らないとここの住人だぞよ。ケケッ…」


 小夜さんに言われなくても、確かにこの大部屋行きはちょっと悲しい。でも、無限に続くと思われる2段ベッドでたくさんの女の子達がおしゃべりしたり、寝転んだりして楽しそうにしています。ある意味、海斗様はハーレムの主ということになるでしょうか。


 小夜さんに聞くと、全部で80人(枚)いるらしいです。

 彼女たちも私と小夜さんに気づいたようで、何だかひそひそ話をしています。その中の一人がツカツカと私の前に現れました。

「あなたが新入りね?」

「は、はい」

 赤毛のロングでウエーブがかかったゴージャスなヘアスタイル。そして、ドーン、キュ、ボーン(何かはあえて言いません)というシルエット。20代後半かな?という品がある素敵な女性です。そう言えば、最初に海斗様とブヒ男が対戦した時に後方でお見かけしました。


「私は進藤英美里。バイオリニストです」

 そう言って右手を差し出してきました。

 小夜さんが小声で、

「彼女はお前が来る前のレギュラーだったぞよ…」

 と教えてくれました。私は恐縮して慌てて手を差し出す。

 ギュッと握手…

(え?ギュッとって…痛い痛い…)

にこやかに笑っている英美里さんですが、右手の握りは尋常じゃありません、ゴリゴリやられて痛いのなんのって!


「今は海斗様の気まぐれであなたを後方支援のレギュラーにしているようですが、すぐ私と交代しますから。あなたもこの大部屋暮らしを体験するといいわ。レアだからって、海斗様の役に立つとは限らないのですから」


 美人が睨むと超怖いです!


 この人、私がレギュラー6人に入ったので、専用部屋からこの大部屋行きになったので、どうやら、私のこと恨んでいるようです。


(そんなの私のせいじゃない!海斗様の勝手でしょうが!)

 ちなみにこのバイオリニスト英美里さんの頭の上には、UNアッパーノーマルがクルクルと回っています。この人、リアルレアじゃないゲームのデータカードなのに嫉妬するんですかね?


「お、お手柔らかにお願いします」

 一応先輩だから、そう言うのが精一杯な私でした。

 

 小夜さんが言うには、英美里さんの技は「デスシンフォニー」と言って、手に持ったバイオリンから奏でる音で相手の防御力を著しく下げるらしいです。ポジションがかぶって、現在は私がとって変わったわけですが、はっきり言って私は役に立ってはいません。そのうち、この大部屋行きになってしまいそうです。


「はあ~」

 そうため息をついたとき、急に耳をつんざく警報音と部屋全体が暗くなり、赤い光りの点滅が始まりました。

「さ、小夜さん…な、何が起こるんですか?」

「ケケッ!エネミーとエンカウントしたようだ。出撃ぞよ!」

「出撃?」


 ほっとする間もなく、戦闘開始!?

とりあえず、しばらくは毎日更新予定。お気に入り登録ありがとうございます。(11時と予定してますか

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