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レアカードでごめんなさい!  作者: 九重七六八
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どうしてわたしがレアなのよ!(二)~鈴木華編

 ジスランこと三澤海斗に強奪された見習い司祭レイチェルこと鈴木華。カードキャラになった理由が全然分かりません。普通、泣いたり、ふさぎ込んだりするはずですが、このヒロイン?天然系?

「これを飲め!」

 ぶっきらぼうにそう言われて、私は差し出されたアンプルを受け取りました。私はカードの中のようですが、黒づくめの青年が空中に表示される画面から取り出したそれは、指ではじかれた後に私カードの絵の中に入り込み、手渡されようです。


 私ときたら相変わらず、太ももを顕にして倒れ込んでいるから、手渡されたアンプルの先端を折って、中の液体を飲む動作がひどく重く感じました。


「ゴホゴホッツ…」

(ま、まず~い。何?これ?漢方薬みたいな)

 私は咳き込んで少しこぼしてしまいました。


「ちっ!気をつけろ。それは一本5千円もするんだ!このウスノロ!」

(ウ、ウスノロですって?この私が?)


 この黒ずくめの青年。顔はカッコイイと思ったけど、性格はどうやら最低のようです。初めて会うレディに対して失礼です。

 アンプルの薬剤を飲むと赤くなっていた数字が白く変わり、1から105になりました。同時に倒れていた私の絵が最初の円形の飾りのついた杖を構える構図に変わりました。

(ふう~危ない、危ない。もう少しパンツ見られるところだった……あれ?)

 黒ずくめの青年は、私のカードをつまむと、先ほどバトルを行った駅前から、近くにある大きなホテルに入りました。ガラス張りの洒落たカフェのあるラッスルホテルです。

 

 青年は1Fのカフェの一番目立たない席に当たり前のように座りました。

そして、私のカードをテーブルに寝かせました。今気がついたのですが、バトルの時は畳一畳分の大きさでしたが、今は普通のカードの大きさです。カードといっても紙でできているのではなく、データが空間に投影されているだけのようです。

 

 黒ずくめの青年は私のカードを置くと、下の説明部分にある(実体化)というところをタップしました。すると、カードの上に私が実体化したではありませんか。3D映像だと

思いますが、確かに私自身です。くるりと回って、両手で体を触ってみました。

(じ、実感があるわ~ですが、人間だった私がなんでこんな姿なのかは謎のままです。しかも今の状態だと、身長15センチぐらいのいわゆるフィギュアです。こんなお人形さんになったつもりはありません)


「身長160cm 体重45kg B86、W56、H86…」

(ちょ、ちょっと!どうして私のパーソナルデータ知ってるのよ!)

「職業見習い司祭、名前はレイチェル?ぷっ…」


 黒ずくめの青年はクールな顔を崩さないようにしていたようですが、私の名前と姿のギャップを見て噴出したようです。

(いくら、私が純日本人のビジュアルでも失礼過ぎます!)


「あ、あの…」


 私は思い切って声を出してみました。声が通じるか不安だったのですが、無事に通じたようです。なぜかというと、黒ずくめの青年は馬が口を聞いたかのような意外な顔をしたからですが。


「ジスランさんと言いました?さっきから聞いていれば、女性に対して失礼です。人の体重やスリーサイズをばらしたり、名前と顔を見比べて笑ったり…。あなただって、どう見ても日本人じゃないですか?それでジスランなんてこちらも笑いたいぐらいです」


 確かにこの黒ずくめの青年は、黒髪のベリーショートに刈った髪で無造作にワックスでスタイリングしているイケメンですが、日本人には変わりがありません。私がレイチェルという名前だと笑うのは、おかしいです。


「おまえ、リアルレアか?」


 不思議そうな顔をしていたジスランは、急に私のスカートをまくりました。

(嘘!なんてことするの!この男!)


 考えてみれば、こんなことできるならさっきのブヒ男君もやっていたに違いないです。


「きゃああああああっ!何すんのこのスケベ!」

「やっぱりな……」


 私のスカートをめくってパンツをチラ見したこのジスランという罪深き青年(殺してやる~)は形のよい顎に手を当てて少し考えているようでした。


(やっぱりなって、女の子のパンツを見てやっぱりって……やっぱり、失礼です!)

「お前はリアルレアだ。通常のカードキャラじゃ、パンツまでは映像化されていない。というか、倫理規制で見えないようにガードされる。お前は違うようだが……。その年で綿パンツはないだろう」

(かあああああっ~)


 私の顔が火照ってきた。パンツ見てコメントする男なんて最低です。


「最低です!」

「ふん。俺の名は三澤海斗みさわかいとだ。ジスランはゲーム上の名前だ」

「か、かいと?」

「海斗様だ!」


 そう言うと海斗は私のほっぺたを人差し指と親指でぎゅうっとつまんだ。まるでタコみたいな顔にされる私。

(なんてことするんですか!レディに向かって!失礼です!)


 この男、先程から失礼すぎます。いくら私よりも年上だからといって。でも、なんとなく怖そうなんで、抗議する気持ちが出てきません。今の状態だと私はカードのキャラで海斗(様)は、私の所有者ということで、生殺与奪権を握られているといってもいいのです。先ほどのスカートめくりも抵抗したところで、防げるものではありません。


「あ、あの海斗……様」

「なんだ?」

「リアルレアってなんですか?」

「ちっ!」

(あからさまに面倒くさそうな顔をしましたよ。この男。本当に失礼なやつ!)

「ちょうどいい。俺の持っているカードに1枚リアルレアがあるから、そいつに聞け」

「は、はあ?」

「(はあ)じゃないだろう!俺に命令されたらすべて(はい)だ!このビッチめ!」

「ビ、ビッチって…私、今まで男の子と付き合ったこともないし、今風の格好で街で遊んだこともないです。勉強ばかりしていて、こんなゲームなんか知らないです。気がついたらこんな風になっていたんです!それをビッチだなんて、失礼です!」

「ほう……面白そうな奴だ。お前、名前は?」

「え?名前?」

「リアルレアなら、カードのなる前の名前があるだろ!」

「は、はい。鈴木華すずきはな

鈴木華すずきはなまた、ベタな名前だな、ぷっ……」

(この男、絶対今、頭の中でレイチェルと比べたと思います)

「まあ、いい。お前がどんな経緯でカードになったかなんて、俺にはどうでもいい。だが、俺のカードである以上、俺の役に立ってもらうからな。覚悟しておけ!」


私はビビって声が出ません。

「どうした?返事は!はな!」

「は、はい」

「何度言ったら分かる!はい、海斗様だろうが!」

また指でほっぺたをギュッとする海斗様。

(失礼です!)

「はう、はう、はうとさま~」

「よし、もう用はない。引っ込んでろ!」


 そう言うと海斗様は、私を腰につけたカードケースに乱暴にぶち込みました。


 もう一枚のリアルレアって……。あの白いワンピースの長い髪の……。

怖い~っ!

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