死神姫メルセデス(二)
ここはどうやら防具屋。
レイチェルちゃんに防具を買い与えるようです。
今度は華をギュウギュウする。
しかし、海斗はなんで2人を召喚したのだ?
辺りを見回すと、そこはショップであった。カードキャラ専用のアイテムが売っている町のアイテムショップだ。楽鉄ホテルが入居している商業施設ビルの2階にあるアイテムショップ「S・K WISS」である。
店主は女性のようで、30代半ば位のメガネをかけた知的美人っていう感じの人間だ。
(海斗の奴、女嫌いかと思ったら、すごく年上好き?)
と一瞬思ったが、そういう感じでもないようだ。ただ、義務的なところもなく、店主の女性の方は海斗に親しく話しかけ、海斗もそれに合わせている。
(コイツ、大人の対応ができるじゃないか!)
どうも昔からの知り合いぽい。
「晴海さん。コイツに合う防具を見立ててくれないか」
「あら、珍しいカードね。でも、いいの?このカード、後衛で育てる方がいいかも」
「事情があって、前衛が足りないんだ。それにコイツ、職業は後衛キャラっぽいが、反撃の能力が付与されていることが分かってね。案外、前衛で鍛えると大化けするかもしれない」
そう見習い司祭レイチェルのカードを指差して海斗は言った。海斗は今まで自分の戦闘を支えていた3人のカードを失ったため、新しい前衛カードを設定する必要に迫られていたのだ。
準レギュラーだった「剣道娘立花アスカ」は、順当に上げるがそれでは戦力ダウンになる。手に入れたばかりのHRカード、死神姫メルセデスはかなり使えそうだが、こいつには厄介な能力があって使いこなすにはあるアイテムが必要であった。それを買いに来たこともあったが、3枚目のカードに「見習い司祭レイチェル」を据えることにしたのだ。レイチェルの穴はバイオリン奏者進藤英美里で十分務まるので、戦略的にも面白い試みであった。
カードは前衛や後衛で鍛えることによって、その特性の伸ばし方が違ってくるのだ。もちろん、そのカードに前衛なり、後衛なりの素養がないと無駄になるが、マスターの心しだいで同じカードでもレベルが上がるにつれて、能力が大きく変わってくるのだ。
これがLBCGの楽しみ方の一つになっている。今回、海斗は不本意ながら、パーティを組むので楽な戦いをすることができる状況となった。
となると、大化けする可能性にかけてみるかと思ったのだ。ただ、現在のところ、見習い司祭レイチェルは耐久力が弱すぎるので、通常エネミーの一撃で昇天してしまう可能性が高かった。そこで、防御力を防具で上げようと考えたのだ。
「この娘に合うものねえ…」
「晴美さん、ビジュアルはどうでもいい。ダメージを喰らわないやつを頼む」
「じゃあ、これはどう?乙女の大鎧」
見ると鉄でできたフルアーマーである。こんなのを着たら、いったい誰だか分からなくなってしまうではないか?
「1擊2000ダメージ以内を吸収。2000以上のダメージを受けなければ、カードは無敵だわ。でも、2000ダメージを1ポイントでも喰らえば、カードはロストするわ」
「この辺の敵なら無敵というわけか…」
海斗は悩んでいる。我も悩む。これを身に付ければ、とりあえず命は守られるが、あまりにもダサい姿に精神的ダメージを受けそうだ。華の奴は、
「そんな重いもの着れませ~ん」
などと言っているが、よくよく考えれば死ぬよりはいいかもしれない。ちなみに海斗が悩んでいるのは、
「こんなダサいの俺の可愛いレイチェルに着せられるか!」
なんて思っているわけはない。この男の思考は「使えるか、使えないか」である。カードキャラにビジュアルなどまったく求めていない。
海斗は2000ダメージを1ポイントでも上回るダメージを受ければ、ロストするというところに悩んでいるのだ。この辺のところは、さすがは高レベルメンバーだ。隊列や守備力増強魔法を使えば、おそらく、3000ダメージくらいまでは耐久力を上げられそうであるが、万が一、ボスキャラ級の敵に出くわせば、それで終わる可能性がある。
そんなことはこの辺のエリアで狩りをする限りはありえないとは思うが、あのアンデットエリアで現れた死神の騎士やメルセデス、駅前エリアでの悪魔の執事など、最近は強敵が突然現れる状況を考慮するべきだと思ったのだった。
「他にないか?」
「そう言うと思ったわ。これはどう?戦乙女のケープにオリハルコンチェーンで編んだ胸当て。胸当てで1000までのダメージは耐えるわ。ケープの能力で回避能力が上がるわ」
「なるほど……かわすのがメインで、いざとなったら1000のダメージ許容か。この意気地なしのビッチカードにはもってこいだな」
おいおい…華よ。お前、ひどい言われようだぞ。
ちなみにメルセデスの奴は、最初から装備しているものが「死神の鎧」「死神の楯」「死神の兜」「死神の鎌」と死神シリーズ満載でとりあえず交換するものがない。それでも、海斗の奴、「背徳の指輪」なるものを購入した。これは50万ポイントもする高価なものだ。
聖属性の攻撃魔法から20%ダメージを軽減する力があるレアアクセサリーだ。
海斗に指輪をプレゼントされたメルセデスは、急に顔を真っ赤にして、
「そ、そんなもの見ず知らずの男子からもらえませんわ!」
などと言って、海斗にほっぺたをギュウギュウされている。
「はうはう……はかりました、ひにつけはす……」
メルセデスは右手の薬指に「背徳の指輪」を装備した。これで聖属性の攻撃にある程度の耐久力がつく。だが、よく考えると出没するモンスターに聖属性の攻撃をするものがいたかなあ?モンスターにそんな攻撃する奴はまずいない。となると、プレーヤー対策ということであろうか。
さらに海斗はジャラジャラと鎖のついた首輪を購入した。これも値段がはる。80万ポイントである。それは「束縛の鎖」と呼ばれるアイテムだ。それをメルセデスに付ける。
「こ、こんなの嫌です!外してください!私は犬ではありません」
メルセデスが怒ってそう拒否するが海斗は無視している。確かに気位の高いお嬢様に首輪なんて屈辱的以外何者でもないだろう。
だが、海斗には海斗の考えがあった。
メルセデスのような元モンスター属性のカードは、忠誠心が低く、カードマスターの力が弱まると離反して攻撃してくるという能力があるのだ。自分がピンチの時に寝返られたらたまったものんではない。
そこで「束縛の鎖」である。裏切ってマスターを攻撃するようなことがあったら、首輪がしまってそのカードはロストするのだ。
「てめえ、俺を裏切ったらこの首輪が締まってロストするからな。よく覚えておけ。お前は死ぬまで俺に忠誠を尽くすのだ!」
「そ、そんな~」
雨音はその場でヘタリこんだが、あの女の子に優しくない海斗が許すはずがない。
装備は整った。海斗はあの兄妹との待ち合わせ場所へと向かう。
気の強いメルセデス(雨音ちゃん)に犬の首輪?
これは屈辱~。でも、忠誠心低いから仕方なし。
エネミーカードからの転身はみんなこのアイテムを装備するそうです。




