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レアカードでごめんなさい!  作者: 九重七六八
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プロローグ はじまり(二)

 早速、LBCGレディバトルカードゲームのプレーヤー同士の対戦です。ゲームルールは少しずつ公開していきます。ブヒ男君は勝てるか?

(でも、ブヒ男君はもちろん、主人公ではありません)

「ブヒ…ランキング91位のジスラン殿とお見受けするでブヒ。いざ、ボ、ボクの挑戦を受けてみるでブヒ!?」


 あきらかにサイズが合ってないだろうというピチTシャツとクタクタのGパン、腰周りはマフィンのようにはみ出たお肉。お約束のように頭に巻いたバンダナと大きなフレームのメガネをかけたおデブ男が、鼻息荒く、全身黒ずくめの青年にバトルを申し込んでいる。

 

 このブヒ男くんの頭の上にはビジターのマークが、通りに設置されたプロジェクターによって映し出されてクルクルと回っている。

 ジスランと呼ばれた青年の頭の上にはM91(メンバー91位)の文字が同様に回っている。周りにいたプレーヤーや、小さな妖精キャラクター等のアバターを通じて観戦している人々は、仲間内の話やネットを通じたやりとりで盛り上がった。

 これはLBCGの楽しみの一つである。対戦によっては、すぐさまオッズが設定されて合法のギャンブルにもなるのだ。このLBCGのギャンブルだけで生計を成り立たせているプロもいるくらいである。


 早速、ネット上ではこの対戦に注目が集まった。このゲームヘブンシティには、1000人のメンバーが登録されているが、ランキング100位以内のメンバーとビジター(一般客)との対戦は稀有なケースであったからだ。当然、賭けは盛り上がる。なぜなら、ビジターのおデブ君がネット上では有名な一般プレーヤーであったからだ。


「おおお!」

「バトルだ!」

「ビジターがメンバーに挑戦しているぞ!」

「どれどれ?おお、やるね!デブチン」

「デブちんじゃないぞ!現ビジター最強の黒騎士様だ」

「え?あのデブちんが…」

「ちょっと、幻滅~」

「リアルとバーチャのギャップは今に始まったことじゃない」

「そうだ。黒騎士様は我々、ビジターの期待の星だ」

「メンバーはだれ?うそ!ランキング91位って、強いだろ!」

「だが、デブチン、いや、黒騎士様の所有カード、強いぞ。結構通じるんじゃね?」

「かなり経験積ませたJKレディユニットだな」

「戦闘隊形も攻撃重視の鋒子型じゃないか。おデブ意外とやるじゃないか?」

「ビジターランキングベスト1はダテじゃない!」


「しかも、こいつ!レアもってるぜ!」

「最近手に入れたのかな?前のネット上の対戦じゃなかったと思うが……」

「おお!確かにレアカードだ。めずらしいの持ってるな」

「JKの派生カードか?ミッション系JKみたいだが」

「見習い司祭レイチェルちゃんか……かわええ」

「かわええが、攻撃力、防御力とも大したことないな」

「バカか、お前は。レアは数値じゃねえよ。特殊能力だ」

「攻撃力、防御力が強いレアもある」

「皆の衆、始まるでごわす」

「ごわすって何?」

「やるう!イニシアティブを取った!おデブちんの先制攻撃だ!」


 ネット上では黒騎士、本名は黒田大樹くろだたいき32歳フリーター。彼女なし歴32年。太っていて胃酸が逆流しそうになり、ゲップを頻繁に繰り返す行為で語尾にブヒとなる男だ。この街に来るまで手持ちのカードを鍛えに鍛え、滞在費20万円を持ってこの街にやってきたのだ。


 今まで何度も申し込んでやっと抽選で当たっただけに、この男は今回の滞在に賭けていた。このGHCに入場するにあたって、既に5万円の入場料を支払っている。滞在中に最低でもその100倍の金を大儲けしようという腹積もりであった。しかも、あわよくば、メンバーを倒して名を上げて新たなメンバーになろうと思っていたであった。

 

 そう思っていた矢先に到着した駅前で高ランキングのメンバーを発見したものだから、ブヒ男君は自分の幸運に感謝をしたのであった。アンダー100位のメンバーなど、このスタートエリア付近で見かけるのは滅多にないと聞いていたし、いたとしても到着したばかりのビジターと対戦してくれることはまずありえないことであった。

 ダメもとで申し込んだ対戦にこのランキング91位のジスラン氏がどういう理由か受けてくれたのである。このLBCGのファンであったなら、ブヒ男君でなくても、うれしくなってしまうだろう。高レベルランカーと戦ったというだけで、帰った後の自慢話ができるからである。

 

 ブヒ男はただのビジターではなかった。ここに来るまでネット上のLBCGで実力をつけてきた。(バイトで稼いだお金もここに投入した)このGHCゲームヘブンシティで実戦を重ねないと本当に強いとは言えなかったが、現実的にもその実力はランキング1000以内には確実に入る力はあった。

 ブヒ男には夢があった。まずはこの滞在期間にメンバーになること。それは夢でなく現実に届くだろう。さらなる夢はそれはランキング100位以内である。いや、ベスト10に入って多くの人から賞賛され、大金を得ることである。大金を獲れば、今のカードに囲まれている自分が今度はリアル女子に囲まれてちやほやされると信じきっていた。

 そのためにはランキング91をデビュー戦で叩きのめすこと!ブヒ男こと、黒田大樹の輝かしい歴史のスタートであった。

 ブヒ男はこれまで鍛え上げてきた5枚のカードと大金を出して手に入れたレアカードを1枚を選択した。このレディたちが自分の未来を切り開いてくれるのだ。

(所詮、世の中は金だ。ブヒ。さあ、ボクのかわいこちゃんたち出撃でブヒ)

「ジスラン殿、覚悟でブヒ!」


 LBCGは現実の街で戦うカードバトルです。プレーヤーは町に出没するエネミーやプレーヤーと対戦しておポイントを得る仕組みです。簡単に言えばですが・・・。

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