表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レアカードでごめんなさい!  作者: 九重七六八
16/30

労働基準法違反だわ!(二)

現れたエネミーは、死神姫メルセデス!

恐ろしい程の美人だが敵です。強いです。ボスキャラ級です!

 同時に死霊の騎士の体が真っ黒い霧に変わり、中心部に向かってものすごい勢いで吸い込まれます。


(な、なに?倒したの?)


 私は海斗様の攻撃で敵がやられたか(20残ってましたが)、逃亡したのだと思いました。

ですが、それは違ってました。


「レイチェル、やばいぞよ!」


 このアンデット出没エリアでは、ほぼ活躍せずにぼーっと佇むだけだった小夜さんが、その死霊の騎士が吸い込まれた中心を指さします。


 そこにはいつの間にか、黒いマントと黒い西洋風の鎧に身を包んだ女の子が立っていました。顔の右半分には骸骨のお面を付けています。手にはこの姿ならお約束の使い手の身長よりも大きな鎌が握られています。髪は透き通るような巻き髪の銀髪ロングで美形の顔と合わせて怖いくらいの美少女です。

(年格好は私と同じくらいです)

(いや、この状況だとエネミーですよね!?)


「レイチェル、クリスタルガード発動!」

「は、はい!」

 急に命令されて慌てましたが、私も戦いには慣れてきたので(そりゃ、後方でクリスタルガードとデスペルレインを唱えるだけでしたから)、すぐさま、海斗様の命令を実行します。対象は海斗様と六枚のカード及び、助っ人二人とそのカードです。


「お兄様!あれは……」

「ああ、僕も初めて見たよ。死神姫メルセデス、Sレア級のエネミーだ」


 助っ人に加わった2人は兄妹であった。兄はアルト、妹はミラと言った。高位ランクプレーヤーが苦戦しそうと判断するくらいの敵に出くわすという状況に、美味しいと思って参加したが、それは間違っていたようであった。二人共、上位ランカーであったが、目の前の敵が侮れないエネミーであることを理解していたのは、彼らが今までに修羅場を多く潜ってきた証拠であった。


「二人共、用心しろ。カードの損失は覚悟。最終戦は自分のクリスタルを守ること」


 海斗はまずいことになったと思った。アンデットエネミーは、倒すことコツさえ覚えればそんなに手こずることはない。攻撃力が強いものは稀であるので、麻痺とか毒とかカードのステータスに対する異常攻撃に留意すれば、見た目はキモイが戦闘は楽な敵である。


 しかし、今回のように速攻で倒すことは安全策という意味でも大事であった。なぜなら、死霊の騎士などの強敵はピンチになると自分を生贄にして、より高位なエネミーを呼び寄せることがあるからであった。今回も助っ人を受け入れたのは、その危険を考慮してであり、計算上は1ターンで倒せると踏んだのであるが、倒しきれずに僅かに残ってしまったことが悔やまれた。


 召喚された上位エネミーは死神姫メルセデスである。


「アルト、ミラ、最大の攻撃で先制する!あとに続け!」


 海斗は自分のカード巫女(西宮霧江)を使って、(お祓い)を発動した。これはアンデット系エネミーに対して一度だけ三倍攻撃をかけることのできる技である。パーティのリーダー時に一度だけ発動できるのだ。さらにアルトとミラはアイテム(聖水)を前衛キャラにふりかけた。これはアンデットに対して攻守で10%の補正をすることができるのだ。


「いけえええええええっ~!」


 3人の前衛カードの攻撃が一斉に死神姫メルセデスに襲いかかった。パーティ全員による一斉攻撃。


ズガガガガン・・・


 さしもの死神姫も一撃か・・・と思われたが着ていたマントでそれを防ぎ、後方へ10mほど吹き飛ばされたものの、死神姫はゆっくりと体勢を立て直した。アルトの占い娘による能力で、死神姫の耐久力と与えたダメージが公開される。


(150000)


 15万だ。重要エリアのボスキャラ並である。ボスキャラは、規定いっぱいの20人パーティで倒すことのあるくらいの相手である。3人で相手をすることは、高レベルメンバーといえども、かなり危険であった。ちなみに今の三倍攻撃で奪ったポイントは6万7千あまり・・・半分にも満たない。


「ちっ!来る」


 今度は死神姫の攻撃だ。一瞬で近づいてきて、巨大な鎌を一閃する。


「きゃあああああっ!アルトさま~」


 アルトの前衛カード侍ガール「織田瑠璃之介おだるりのすけ」が真っ二つにされた。さらにもうひと振りでミラの前衛のエルフの剣士も葬られた。


「レイチェル!ダメ元でデスペルレイン発動、小夜は恨みの刻印発動!」

(恨みの刻印)とは、相手の時間をゆっくりにすることで、こちらの先制権を取る技である。死神姫にスピードがあると見ての海斗の作戦であった。先に攻撃をされると不利になるのはこのゲームの特徴だ。もちろん、カードの中には最初に攻撃をさせてカウンターという技を得意とするものもいる。


そして、その死神姫メルセデスにはカウンター能力があった。


 海斗の前衛、バンカーの南が放った500円玉による攻撃、羅漢銭である。両手の親指よりはじき出される500円玉は1秒間に3発。計6発が発射され、一発につき500ダメージを奪う。これを3秒行い、死神姫から9000ダメージを奪ったところで、無慈悲の一撃を受けてしまう。斜めに切り裂かれたカードは切られたところから光を放ち、粉々になっていく。


「みなみ~、畜生め!」


 海斗は久しぶりに主力カードを失うことになった。バンカーレディの工藤南は育てにくいカードであるが、ここまで育てると使える知る人ぞ知るカードであった。金融系のワーキングレディに付与される戦闘後のポイントアップが大手メガバンクのOLである工藤南の場合は2倍になるなど、海斗のこれまでの貯蓄に大きく貢献した大事なカードである。


それが無慈悲にロストされる。

すぐさま、フルーレの長谷川杏子とポリスレディの最上加奈子が攻撃を加える。アルトのくノ一と騎士が攻撃する。与えたダメージの数字が2万となったが、まだ、残りは7万以上を示している。


「きゃあああああっつ!」


 鋭い反撃の嵐にミラのクリスタルが2つ破壊される。ミラは両腕で衝撃を防ぐが、押されて5、6歩後ろへ交代する。エルフの剣士のカードも二枚目が破壊された。あと一つでプレーヤー自身もロストする。


「ミラ、下がれ!前衛を召喚して体勢を整えろ!」

「しかし、お兄様、お兄様もクリスタル1つ破壊されています!」

「大丈夫だ。お前はあと一つ失えばロストだ。とにかく、下がれ!」


 そこへ攻撃ターンになった死神姫が高速移動で襲いかかる。狙いはミラ自身である。慌てて、ミラは残ったエルフ剣士と後衛のレプラコンガールを盾にするが、それも一閃されてしまう。


「ミ、ミラ!」


 死神娘メルセデスの巨大なカマがミラの残ったクリスタルを破壊しようとした瞬間に、海斗の後衛カード、見習い司祭レイチェルの発動したデスペルレインが死神娘に降り注いだ。


「きゃうああああああっつ!」


 この低位アンデットを一撃で葬る技が、奇跡的に死神姫の動きを止めた。デスペルレインを浴びたメルセデスは攻撃をキャンセルして後方に下がる。聖なる雫が目に入ったらしい。


ミラは間一髪で後方に下がる。


「ジスランさん、ダブル攻撃行きましょう!」


 アルトと海斗はミラを下がらせて、前衛による二倍攻撃を試みる。既に前衛カードは1枚失われているので、海斗は後衛より1枚加える選択に迫られた。


(仕方ない。レイチェルを前衛に)


 巫女の霧江と幽霊の小夜は、直接攻撃力はないに等しい。わずかばかりの攻撃力があるレイチェルを上げるのは当然だが、死神娘のカウンターで失われる危険性もあった。だが、今、集中攻撃をしないと全員、ここで失われる可能性があった。この手のエネミーは逃げても逃げられないようにプログラムがされている。逃げるを選択して逃げられなかった場合、一方的に攻撃される恐れがあった。


今、そんなリスクは冒せない。攻撃あるのみだ!

ズガーン!ズガーンと2つの打撃でさすがの死神姫も片膝を着いた。


(カードの絵がそういうイラストになるのだ)


やむを得ず、レイチェルちゃんが前衛へ。

クリスタルが破壊されればプレーヤーは「死」

カードも「死」です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ