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店舗外日誌 ピクニック五

 一株の不安を抱きながら起きている子に少しお散歩してきますねとお伝えします。何人かの子が一緒に来たいとおっしゃるので一緒にお散歩することにしました。

 残る子に眠っている人への連絡をお任せし散歩組は歩き出します。


 こらこら、寝ている子の額に落書きはいけませんよ!


 少し歩きますが野原の終りに小さな森が広がっているのです。

 あまり奥にいくと危ないでしょうが入り口近くを散策するには丁度よいでしょう。

「きゅい?きゅい」

 本の虫さんの一人が木の根元に咲いていた花の前で座って興味深そうに花びらの裏側や葉っぱを見ています。

 そしてもう一人がポケットから紙の束を取り出し、木炭でしゃかしゃかと花を写生していっています。

 それを後ろからこっそりのぞいたわたくしと陽がそれぞれ感嘆の声を上げることになりました。

「まぁ」

『へぇ~~』

 その本の虫さんはとても絵がお上手でした。

 細部まで細かく描かれ絵は色がついてないのが惜しいぐらいに目の前の花を忠実に写し取っています。

 観察をしている本の虫さんが何か言うと頷きながら絵の描かれた紙に何事かを書き込んでいっています。

「お上手ですね~~」

「きゅい~~(照)」

 絵描きさんの方はわたくしの誉め言葉に照れたように頭をかかれていらっしゃいました。

 観察をしていらっしゃる方はまさに職人の目で色々見ていらっしゃるためこちらの言葉は聞こえていなかったようで無反応でした。

 職人となった本の虫さんはしばらく動きそうにないですね……。

 離れなければ大丈夫でしょう。

 そう結論を出し、本の虫さんたちがきゅいきゅいと言っている背中を見ながらのんびりと風景を楽しみます。

 わたくしたちを同じ結論を出したらしいほかの子たちのいくつかのグループに分かれて近場で遊んでいるようです。

 さすが異世界。植物には詳しくありませんが見たことのない花やきのこなんかが生えていて結構楽しいです。

「まるでゲームにでも出てきそうなキノコですね」

 ぴこりん!という音とともに一アップしそうな赤い水玉のキノコに感心してしまいます。

『げーむ?』

「わたくしの世界の遊び道具の一種です。たぶん、こちらの遊びとはかなり違う部類だとは思いますが……」

 ゲームはゲームでもテレビゲームはさすがに異世界にはありませんから説明が難しいのでさらっと流します。

「このキノコは食べられるのでしょうか?」

『……食べる気なのか?これ?』

「いえ、もし食べられるのならものすごく元気になりそうだな、と」

『そうかぁ?』

 ゲーム印象的になんとなく。

 陽は心底これは食べられないだろと食べられるかもと考えているわたくし自体を懐疑的に見ているような気がしますね。

 そんなお話(?)を陽としつついろいろな植物を見つけては二人でお話をします。

 特に陽は生まれたばかりなので積極的にいろいろ見たがりますのであっちにいきたいこっちのを見たいと大興奮です。

「陽、そんなに興奮したら疲れてしまいますよ」

『大丈夫!あ、あれ!あれが見たい!』

「はいはい」

 これは言っても無駄ですね。

 なんだか似たようなやり取りを前にもしたなぁと思いながら陽が見たいといったひっそりと咲く青い小さな花の方に向かいました。

 そよ風に吹かれ微かに揺れるその花はどうやらこの近辺にはその一輪しか咲いていないようで少し、寂しそうにも見えました。

 ゆらりゆらり揺れる青い花は前に他の植物があって少しだけ見え難いですね。

 よく見ようと少し前に踏み出したわたくしの足元から。


「へ?」


 なぜか。


『のっ!』


 地面が消え去り、底の見えぬ暗さを孕んだ穴が出現しておりました!

 な、なんでぇ~~~~!

 突然の出来事に反射的に片手で穴の縁を掴みます。

 確かな土の感触に「掴めた!」と安堵したのも束の間。

 どうやら脆かったらしい縁はアッサリと崩れ去りわたくしの手には僅かな土だけが残りました。

 それを意味することが何なのか考えに至るよりも早くわたくしと陽は地面から完全に離れ、宙に放りだされてしまいました!

「ひ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 絶叫。

 だけど叫ぶだけで身体はぐんと下へと引っ張られ落ちていきます。

 風がごぉと耳元で音を立てて流れていきます。

 さっきまで当たり前のように浴びていた日の光が大きな丸い円に変わりそれすらもすぐに小さく遠くなってしまいました。

 

あ、わたくし、落ちている。


そう考えた時にはすでにわたくしは穴の底に思いっきり落ちておりました。

「…………っぅぅぅぅ!」

 衝撃と激痛が体に……特に腰や足に痺れのように広がってわたくしは悲鳴すらあげられず無言で倒れたまま痛みを我慢します。

「陽……大丈夫、ですか……」

 落ちた直後の痛みが引いて鈍い痛みに変わった頃にようやく声が出せるようになったわたくしはどうにか庇えた陽の卵の表面を撫でて彼に傷がないこと確かめました。

 見た様子では外傷はありません。

 よかった。ちゃんと庇えたようですね。

「……陽?」

『…………』

 応えてくれません。

 だけど陽から怯えと縋りつくような気配を感じ彼も怖かったのだとわたくしにもわかりました。

 だから半身をどうにか起こしショックを受けてしまった陽をきゅうと抱きしめます。

「大丈夫。わたくしは大丈夫ですよ。それに近くに本の虫さんたちもいたんですからすぐに助けてくださいます。心配無用です」

 ぽんぽんとあやすように卵を優しく叩き大丈夫と繰り返し陽に囁きます。

『ほんとうにだいじょうぶ?』

 いつもの彼らしくないおずおずとした感情にわたくしは頷きます。

 嘘をつく心苦しさを感じながら。


 じくじくと痛む足はおそらく捻挫でしょう。

 多少の打ち身もあるかもしれません。

 だけどそれらを隠して今は怯えてしまっているこの子を安心させましょう。


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