表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

0007 ロクデナシドモ

 蓮は自宅に着いた。昼前のことだった。

 冷房を入れていない家の玄関すら涼しく感じるほどに、外の気温は高かった。

 緊急下校となり、家からは出るなと言われたが、何かすべきことはあっただろうか? ひとまず、蓮は記憶を巡ることにした。

 学校側の指示をおとなしく聞いて、家で読書にでもふけるか――それとも、ミステリー愛好会の連中と今朝の事件について語り合うか――

「さて、どうしようか」

 どうするかを考えているながら、スマートフォンでネットサーフィンをしていると1通のメールが届いた。

 送信者は野口のぐち佳代かよだった。蓮が所属しているミステリー愛好会の同輩にあたる女子である。

<件名:緊急連絡>

 その件名に蓮は眉をひそめた。

<唐突で申し訳ありませんが、下記のURLのチャットルームで緊急会議を開きます。神宮蓮君のログインパスワードは<ハンニバル>です>

 わりと短いメールだった。続きはチャットルームにて行うということらしい。

「参加が前提なんだね」

 蓮は苦笑しながらURLを確認した。


「ハンニ……バル、と」

 蓮専用のパスワードを入力すると無事にチャットルームに入ることができた。

 すでにチャットルームには、3人の同志が集まっていた。

<お、来た>

<……4人目>

<集まるの早ェな>

 次々と文字が現れる。

 左下にある<現在の入室者>の覧を見ると、<ハンニバル>の他に<AzLアズル>、<罰桜ばつざくら>、<フェンリル>のハンドルネームがあった。

<こんにちは。佳代ちゃんは?>

 と蓮はキーボードをたたく。

<てめえの彼女ちゃんは死にました>

 フェンリルだった。

<ふーん。罪桜つみざくらは?>

 と慣れた手つきで打つ。

<おいおい、シカトかよ。お次は罪桜に乗り換え佳代>

<シカトはしてないよ>

<『かよ』を『佳代』ってウケを狙ってわざと間違えたなら、追放させてもらうぜ>

 AzLが割り入って来た。

<わざとじゃないって、ただのタイプミスだっての>

<チャットとはいえ、誤字脱字には気をつけた方がいいかと。読む側の気持ちにもなってくださいね、ワンちゃん>

<誰がワンちゃんだってんだよ。バーカ>

 大雑把なフェンリルと神経質なAzLは犬猿の仲だった。フェンリルとは北欧神話に登場する狼のことだが、

<お前のこと。フェンリルなんて大層な名前はいらんでしょうに>

 とAzLはいつも小馬鹿にする。

 他のメンバーが来るまで、先ほどのような他愛のない会話が繰り広げられていた。


 5分後に<罪桜つみざくら>。さらに10分後に<黄泉行き列車>そして<ゲスト>が到着した。

<遅くなってすみません。せっかくなので、ゲストさんにも来ていただこうと思いまして……思ったより時間がかかってしまいました>

 ゲストを除くと、黄泉行き列車――このミステリー愛好会のマネージャー的ポジションの野口佳代が最後だった。

<おせーぞー。死んだかと思ってたぜ>

 フェンリルが罵声を浴びさせる。

<まったくひどい奴だな。この馬鹿犬は。まるでしつけがなってない>

 すかさず、AzLが挑発する。この2人を見ていると、蓮はいつも吹きだしそうになってしまう。

<何か言ったか? 4つ目ヤローのAzL君>

<4つ目でメガネヤローと表現したいみたいだけど、残念ながら君が使うとセンスがないな>

 言葉に多少の違いはあれど、毎度、毎度こうなるからである。1度、ネット上で顔を会わせるだけで、

一体何回、このくだりをするのだろうか?

<誰がしつけたんだろうね>

 蓮は吹きだしたいのをこらえて、キーボードをたたいた。

<俺の親>

 当たり前だろ、と言わんばかりに、返答された。

<当たり前のことじゃん。面白くねー>

 AzLだ。パソコンを使いなれているらしく、キーボードをたたくのがかなり早い。

<だから君にはセンスがないんだよ。笑いも勉強も、推理もな>

<運動音痴のてめーには言われたかねえって>

 段々激しいマシンガントークになりつつ中、

<仲が良いことは悪いことではありませんが、罵り合いはオフでしてください>

 冷静に佳代が沈静化させる。この流れはいつものことだ。だから佳代もこの2人を冷静に対処できるのだろう。

 急に2人が何も打ち込まなくなった。佳代の言葉が効いたのか、ロックを掛けられたのかはわからない。

<それでは、今朝の事件について会議を始めましょうか>

 会議と捜査、推理の参加を断ることはできない。それが、ハンニバルこと蓮が所属するミステリー愛好会の1番重要で、絶対に破ることのできないルールだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ