あちしの歌をきけーっ
でかいリュックを背負ってアパートに帰宅する。
3階建ての古アパートで、玄関から入るとレディは散歩ヒモから解放され、ダダッとアパートの廊下を駆け回り、にゃーあんにゃーあんと鳴き始めた。
夜なのでご迷惑になりそうだが、文句はこない。
昔、文句は言われたが、レディがアパートを駆け回って鳴いて回ると・・・鼠が出ないのである。
それがわかってから、アパートの住民は、騒音と鼠の害を天秤にかけて。
猫のワンマンライブを許すことにした。
そっとドアをあけて「今日もお歌をありがとう」とか言うまでになった。
一階から3階まで入念に走り回って鳴いた後。
満足して、ザザの部屋のドアをかりかりした。
「あ、もうおうち入りますか、レディ。今日もすてきなワンマンライブでしたよ」
「にゃん」
そりゃそうよ、この美声ですよ。
とか言ってそうなお顔である。
ザザの部屋は面積はそれほど広くない。空間拡張という魔法があるので、基本の部屋が狭くても(作者・6畳一間と押入玄関付きみたいな)なんとかなるのだ。
少し高さのあるベッドがあり、下が収納で魔法で拡張されていて、見た目の4倍ぐらいは収納できる。まあ、深すぎて使い勝手が悪いので季節ごとに衣替えしたものを入れたり、今回のようにたまに使う遠征用品なんかが入っている。
ベッドの足の方の真上に、棒状のつるし収納があり、服が下がっている。
外用の大物のコートは扉横の専用フックにかけるが、ふつうの長さの、洗ったインナー系はここに掛ける。
ドア横に魔力で灯る明かりがあり、それが部屋全体を照らしている。狭いのでこれ一つで十分だった。
タンスはない。
小さいテーブルがあり、カップとポットが置いてある。
クローゼット(押入ぐらい)には棚があり、基本的に下半分はレディのための猫用品。上がザザの主に食料(基本乾物)が置かれている。
ザザは自分の部屋にはいると、大きなリュックを置き、中からいつものデイバッグをまず出した。
小屋に置かせて貰った携帯用猫トイレ(ちなみにトマ作である)を室内に設置しなおし、汚れた手を拭く布(魔法でいつも清潔・熱々)で手を拭いてから、レディのための皿に新鮮な水を注ぐ。
テーブルのポットは常に綺麗な水が入っており、魔力を込めると沸騰する。レディ用のときは熱しない。
茶葉貰ったな、とザザはいそいそとお茶の用意をし、一人でゆるっと飲む。
「にゃー(何のんでんのー?)」
レディが覗いてくるので。
「お茶ですよ」
と、少し舐めさせる。
猫に害はない茶。害になりそうな茶は飲まないし、あまりこの付近では売ってない。
害というのもよしあしで、ザザの棚には猫が飲むとお腹が緩くなる(下痢)茶もあるのだが、レディがひどい便秘になったときに使う用である。
レディはないが、領主の高齢猫がこれでよくなったという話で、念のため一服分ぐらいは置いてある。
人間が飲む分には、普通に渋い茶である。香りはとても良い。賞味期限が切れたら自分で飲んでいる。
一息ついてから、大きなリュックから中身を全部出す。重量の軽減魔法はかかっているとはいえ、やはり入れ方で重く感じたり、歩きやすかったりはあるので、必要な物を丁寧に詰め直していく。
明日はゆっくり休んで鋭気を養おう。昼には風呂屋で風呂に入って。さっさと寝る。
明かりが一段暗くなる。
一度の魔力充電で2時間程度しか灯らない。残り時間がわずかになると、こうして警告的に明るさを下げる。
服を脱いで、羽織るだけの寝間着を着て、ドアと窓の鍵を確認し布団に入る。
レディがするんっと布団の上にのる。
「寝ますかね」
「にゃん」
ベッドで枕の位置などをなおしていると明かりが消えた。




