うまうまにゃんにゃ~
森への出入り口にも近い方が、調理用の肉が早く手にはいるので、町の中央よりやや北(森)側に、飲食店が並ぶ。
料理屋の裏口から顔を出して、魔鳩と兎を店長に渡した。
高級料理店でもあるが、安い食堂もある。
二階がお高く、下の階は1ドウ(500ネカ)から定食が食べられる。
ちなみにお高い方、魔鳩のステーキがメインのコース料理は、一人前3ギン(15000ネカ)で、一羽でメイン4人前になる。
魔鳩の羽はよく染まるので、長くて大きいのは新年の羽根飾りに重宝され、羽毛はダウンコートや布団になり、骨も魔法の触媒にするので余ることがない。
自分できちんと解体して専門店にそれぞれ運べば、全部で1キン(5万ネカ)ぐらいにはなるが。
ここに持ってきて、貰えるのは4ギンと、レディ用にと湯がいた鶏の胸肉、定食無料券10枚綴り2組、である。
そんなもんである。
店長はそれを見習いに解体させて、その羽代や骨代を小遣いというか給料の一部に見習達に渡しているし、それを知っているから、ザザもここに卸している。
兎はきれいに狩れたので、1ギンである。毛皮として売り物になるから。これもおまけで、パンとチーズ、林檎をつけてくれるか、お茶やコーヒーのリーフや豆をくれる。今回は茶葉にした。開封された缶に入っているのは、上の階の客用の茶葉で、上客に出せる賞味期限が切れたもの。時間停止の棚に入れておいても、頻繁に開けて取り出すと、やはり香りや味が落ちるのだ。ただ、まあ自宅で、もしくは仲間と飲むなら十分だった。
「定食を食べていくから、レディが一緒でも平気な席頼むよ」
貰った綴りはそのままリュックに入れて、ウエストポーチから使いかけ綴りを出す。
「どれにする?」
忙しい時間なのに店長がザザの相手をするので、見習いや従業員たちがみんな、うあぁって顔だが、諦めている。ザザの相手をしているのではなく、レディを見ているので、邪魔をすると不機嫌になるから。一応、ザザは仕入れ業者兼客だ。
見習いに金をまったく渡さない店も多いが、この店はちょこちょことああして小遣いが入るから、良い店なのだ。店長の唯一の悦びである猫との逢瀬ぐらい、耐え忍ぼう。
「豚さんにしようかな」
今日はチキンレッグ定食、牛のシチュー定食、豚野菜煮込み定食がある。
缶のような器に煮込みが注がれ、トレイにパンや飲み物、果実がのせられた。パンは握り拳ぐらいのものが二つあり、一つは時間停止機能のある布で包んでリュックに収め、ザザは定食の券を渡した。
去っていくザザとレディを見送って。
「ああ、やっぱり猫、飼いてぇなぁ」
と呟く店長だった。
料理するので、触ってないし、ザザも玄関から一歩として中には入らない。
そういう気遣いも、見習いが文句を言うことのない理由の一つでもある。
そして見習いたちはふっと思う。
「あの人、無料券、100枚以上ストックしてないか。何も言わないから、サービス券渡してるけれど」
「知り合いにおごってるの見た」
「使い道はあるんならいいけれど」
衝立で半分隠れた席に給仕に案内され、
「サービスです」
と、温められた魔山羊の乳が平たい皿に注がれてレディの前に置かれた。ついで、ゆでられた魔鳩の肉の切れ端も。
はにゃうにゃとお喋りしながら、レディは魔鳩の胸肉を食べ、ミルクを舐めた。
ミルクにはちぎったパンの一かけも入っていて、やわらかくなっている。それらも残さず食べる。
豚肉の味がついているので、ザザがくれた葉っぱ(毛玉吐きのため森から採取してきたのを豚肉で撫でてる)もあむあむと食べ。
「お上手に食べられましたね」
と、ザザが彼女の口を拭いた。
「にゃん」
当然、という返事をした。
一応、一匹と一人は少しばかり隠れいるのだが、客たちはこのやり取りを注視していた。気がつかれないように、さりげなく。
下僕(飼い主)が猫様に奉仕する姿からしか得られない栄養素が存在するんである。
見ているのがばれても、ザザは怒らず、「可愛いでしょう、レディって名前なんです」とへらりと笑って猫をほめるので、そのあたりも静かなファンが増えていく理由だ。
猫と下僕の幸せな時間を邪魔する輩はおらず、一匹と一人は穏やかに食事をしていった。




