寂しかったのにゃんっ
コミケ 受かりました。
12/31 西1ホール 「む」51a
霊幻樓
頒布はこれです。
加筆もあります~
一応、アップしたのも完結しているので、もやもやはしないかと?
暗い森、と呼ばれる自然の恵み豊かな森で採取をしながら暮らす、ソロの冒険者ザザ45歳。
レディと呼んで可愛がる白猫と、狭くても長年住み慣れたアパート、そして気安い知り合い達。
彼は今日も森に潜るが、古い知り合いからもっと深く潜るのに付き合わないかと、誘われる。
別に、大した冒険も起きず、お気楽なおっさんたちと、猫との日々。
ただ、レディは異世界から転移してきた化け猫だけれども。
通貨の説明
1テツ(鉄貨)50円ぐらい
1ドウ(銅貨)500円ぐらい。
1ギン(銀貨)5000円ぐらい。
1キン(金貨)5万円ぐらい
魔鳩ステーキのコース料理は3ギンだから、15000円ぐらい。
定食は500円ぐらい
ピクシブにもアップ
その小屋、のようなところには出入り口が二つある。
町の方と、森の方。
森は領主の持ち物で、中で採取するならば、一日2ドウ(1000ネカ)支払う。帰ってきたら1ドウ返却になる。採取等の制限と言うよりは、誰が入って、誰が帰ってこないのか、を管理するための制度である。
昼間は暑くなったため、窓を開けていたが、『入口さん』と呼ばれる女性が、冷えてきたので窓を閉じた。
「レディ、ごめんね。閉めちゃって」
「なぁぁぁん」
お返事をする白い猫は、優雅に優美に、長い尾を揺らして、窓からトンっと音を立てて降りた。ハーネスと呼ばれる革ひもを前脚と胴体に絡めてあり、とっさに引っ張っても首が締まることはない、猫に配慮されたものになっている。
森に逃げてしまったら、野犬もいるので食べられてしまうので、飼い主が特注したものだ。
レディはそのままととっと歩み、森の方のドアをかりかりと引っ掻く。
「え、まだ早くない?」
と入り口さんは言いながら、机の森入出管理簿を開いた。
音が入り口さんにも聞こえてきた。ドアの周囲は音が鳴る防犯用の白い石を敷いてあるのだ。だから、石のこすれる、ぎゅりっぎゅりっというやや耳障りな音がする。
ドアが開き、草臥れたカーキ色のコートを着た男が、覇気の無い様子で入ってきた。
コートは襟も高く、手首ぎりぎりまで隠し、足首近くまで丈がある。フードもついている。
焦茶の短髪に、両耳の上のあたりに白髪が刷毛で掃いたように入っている。その髪に埋まって外からはわからないが、4本の革を交差させて固定した防具をつけている。コートのフードと合わせれば、投石や矢ぐらいなら、後ろ頭を防御できる。黒が褪せた革手袋と、使い込んだ革のウエストポーチは前後に。そして張りのないリュックを背負っている。
そこそこ特徴的な装備であるが、それを外してしまえば、中肉中背、茶色の瞳の、日焼けして褐色の肌で、やや目元の皺が深くなったどこにでもいそうな中高年である。
「レディ、ただいま。あ、入口さん、レディを預かってくれてありがとう」
見た目より若々しく、優しい声音だった。
「いえ、とんでもない。仕事ですから」
なにせ、猫の預かり料金を彼は支払ってくれているのだ。
男は無防備な様子でしゃがみ込み、足にすり寄り『なぁ~ん』と鳴きながら甘えてくるレディをひとしきり撫でて、流れるように自然にコートの中にレディをしまい込んだ。
入口さんや、その場にいる警備の人たちで、気づく人たちは気づくのだ。
ハーネスのコードをどうやって捌いているのか、見えない、ことに。
スリとかでもやっていけるのでは、と夜勤の人たちは冗談で言っていたが。
とにもかくにも、ハーネスと入り口小屋のデスクに繋がっていたコードは外され、飼い主であるザザの手首と繋がっているコードに付け直されている。
「それにしてもお早かったですね。何かトラブルでも?」
「いや、兎と魔鳩が捕れたから、もういいやって、引き上げた。あ、傷用の薬草も、ここにね」
背負うリュックは、革のデイバッグ風のもので、兎一匹で一杯になりそうだが、『2.5倍の収納力』『重さを2/3にする』『時間の進みを半分にする』という魔法が付与されている。
2年ぐらいまじめに働いていると、武具・防具の次ぐらいに手に入れる品で、珍しくはない。
だから、兎と、兎より一回りはでかい魔鳩も、そのリュックに入っているのだろう。
「血止め草と、傷草はここに置くね」
前のウエストポーチから薬草を5束、取り出してデスクに置いた。ひと束10枚、ないし10本、わかりやすく。ウエストポーチにも空間拡張魔法などがかかっているらしいが、どのぐらいかは入り口の人たちは聞いていない。ちなみに、前と後ろ、二つのポーチを持っている。
魔鳩と兎は懇意にしている料理屋に直接持っていく。
レディはぬるぬるとコートから抜け出して、飼い主の肩に留まって、額をその頭にごつごつぶつけている。
愛情表現。寂しかったんだからっと訴えている。
「じゃ」
と、首に下げたタグをピッと、管理用板に当て、帳簿の自分の名前もさっと線で消した(消すことで、森からもう出たということになる。予定日が過ぎても名前が残る、森で遭難している、ということ)。
「さ、レディ、料理屋さんに寄っていきましょうねえ」
「ああ、そんな意地悪しないで、夜勤の人がくるまで、ちょっと待って」
ザザに会いたがるのではなく、レディと会いたがるので、帰られると引き継ぎの時に、ぶちぶちうるさいのである。
「交代まで一時間近くあるじゃない。まー、お役所の人にはお世話になってるし、しょうがないねぇ。おいちゃんは料理屋に獲物届けて食事してまた戻ってくるから」
「ああ、すいませんー」
入口さんはそそっと、ザザに小さなクッキー3つ入った袋を付け届けた。
そして、薬草の数の確認をしている人が頷いたので、薬草代を渡した。




