【星空の野営地にて】
遠くに小さな町灯りを見下ろしながら、焚き火のそばで一行はくつろいでいた。ふとフィビアスが、小さな手帳を取り出して読み上げる。
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フィビアス
「“生まれつき美しい人は運がいい。歳を重ねて美しくなる人は生き方がいい”……」
フローレン
「ふふ。なかなか含蓄のある言葉ね。誰が書いたの?」
フィビアス
「街で立ち寄った書店の棚にあったエッセイから。……どう思いますか?」
シュペルク
「いや、それってけっこう残酷だぞ。“生まれつき”で片付けられたら、俺なんか最初から負け組じゃん……」
フローレン
「でも、“後から美しくなれる”余地があるってことでもあるわ。人生の顔は、歩んだ軌跡で彫られる。
誰かが言ってた。“40を過ぎたら、自分の顔に責任を持て”って」
フィビアス
「顔だけじゃなくて、言葉にも……服装にも……仕草にも、生き方がにじむんですね」
シュペルク
「……俺、今からでも間に合うかな……? 品格とか無いけど……優しさなら……たぶんある」
フィビアス
「自分で言うことじゃないですけど、それが最初の一歩かもしれませんね」
フローレン
「ちなみに、昔の王都の演劇女優には、“年齢を重ねてから真に美しくなる”って評される人も多かったわ。
心の奥行きは、見た目にはっきり出るのよ」
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フィビアス
「……でも、美しさって誰が決めるんでしょうね。“好きな人が一番美しい”って言ってた人もいたな」
シュペルク
「それ、いいな。俺もそう思う。“美しさ”って、他人が決めるもんじゃなくて、心で見つけるもんだよな」
フローレン
(静かに目を閉じて)
「そう。長く生きて思うのはね――本当に美しい人は、誰かに優しくし続けられる人よ。
たとえ顔が変わっても、その“やさしさ”が顔に刻まれていく。……それが、“歳を重ねて美しい”ということなんだと思う」
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火が静かに揺れ、夜風が一行のマントを少しだけはためかせた。誰かがつぶやいた。
フィビアス
「私も……そんなおばあちゃんになりたいです」
シュペルク
「俺も……そんなジジイに……なれるかな……」
フローレン
「なれるかどうかは、明日のあなたが決めるのよ。今日より、少しだけ優しくなれたならね」