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江戸時代にタイムスリップ  往来手形と関所 ― 旅の壁

 

――昼下がり。三人は茶屋の縁台に腰を下ろし、旅人が関所を通る光景を眺めていた。


シュペルク「おい、あれ……槍持った役人が旅人を止めてるぞ。なんだ、通行税でも取ってんのか?」


フィビアス「あれは“関所”です。江戸時代の旅人は“往来手形”っていう身分証明書を持っていないと通れませんでした」


シュペルク「往来手形? パスポートみたいなもんか」


フィビアス「そうですね。檀那寺っていう自分の菩提寺から発行してもらう書類で、住所や名前、旅の目的なんかが細かく書かれていました。亡くなった時の埋葬方法まで記されていたんです」

シュペルク「うわ……最初から死ぬのを想定してるのかよ。旅って命がけだったんだな」


フローレン「特に女性は厳しかったの。普通の往来手形だけじゃ足りなくて、“関所手形”や“女手形”が必要だった。大名の奥方や姫が人質代わりに江戸に住んでいたから、勝手に出国されるのを幕府が恐れたのよ」


シュペルク「へえ……。じゃあ女性の旅はほとんど無理じゃん」


フィビアス「実際には“改め婆”って呼ばれる女役人がいて、手形と照らし合わせて本人確認をしました。ほくろの位置や顔立ちを見たり、髪を解いて隠し物がないか調べたり……。とても厳しかったそうです」


シュペルク「げっ……。そんなの、今なら完全に人権侵害だろ」


フローレン「でも袖の下を渡せば、検査はあっさり終わったのよ。庶民の女性なら200文くらい、身分が高ければ金一枚。……結局、形だけの取り締まりだったわけね」


シュペルク「なんだよ、それ。結局ワイロか」


フィビアス「ただ、ワイロを惜しんで関所で止められたら、旅そのものが終わりですから。仕方なく払う人も多かったんでしょうね」


シュペルク「……なんか、“旅のロマン”どころじゃないな」


フローレンは遠くの関所を眺めながら、ぼそりとつぶやいた。


フローレン「自由に歩けると思っていても、どこかで必ず“境界”にぶつかるのよ。人は昔からそういうものに縛られてきた」


三人の胸に、旅の楽しさと同時に背負わされる“重み”が刻まれた。


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