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江戸時代にタイムスリップ 江戸の旅路 ― 五街道と庶民の夢


――旅の途中。山道に差しかかり、休憩をとるフローレン一行。

街道を歩く旅人たちを眺めながら、話題は自然と「江戸時代の旅行」へと移った。


シュペルク「なあ、さっきすれ違った連中、みんな笠かぶって、荷物を左右に振り分けてたよな。あれ、まさか旅の格好か?」


フィビアス「そうです。江戸時代の庶民が旅に出るときは、すげがさに股引き、きゃはん、それにわらじが基本でした。荷物は“振り分け荷物”といって、小さな籠を二つ肩に掛けて持ち運んだんです」


シュペルク「うわ、重そう……。馬とか使えば楽なのに」


フローレン「庶民は馬を雇うのも贅沢だったのよ。旅は基本、徒歩。だから一日に三十キロ以上も歩くのが当たり前だった」


シュペルク「三十キロ!? 毎日!? ……俺でも足が棒になりそうだ」


フィビアス「でも、それを可能にしたのが“五街道”の整備です。東海道、中山道、甲州街道、奥州街道、日光街道。これが整えられたことで治安がよくなり、庶民でも安心して旅ができるようになったんです」


フローレン「それに、幕府も“信仰のための旅”なら黙認した。だから大山詣や江の島詣、成田詣といった宗教的な旅行が流行ったの」


シュペルク「ふーん……。ただ遊びに行くのはダメでも、“信仰”って言えば通じたのか」


フィビアス「ええ。名所巡りと信仰が一体化していたんです。特に庶民の憧れは“お伊勢参り”でした」


シュペルク「伊勢神宮か……。そんなに特別だったのか?」


フローレン「……“一生に一度は伊勢参り”。それくらい強い憧れだったの。天照大神を祀る場所だからね。江戸の人々は、そこに行くことを人生の夢としていた」


シュペルクは腕を組み、旅人の後ろ姿を見送った。


シュペルク「……なんか分かる気がするな。俺たちの旅と同じだ。苦労してでも見たいものがあるから、歩き続けるんだ」


フローレンは静かに頷いた。


こうして三人は、江戸庶民が夢を託した「長い旅」の始まりを語り合いながら、再び歩き出した。


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