江戸時代にタイムスリップ 隠居大名の自由な日々
――翌朝。宿場町を発ち、街道沿いの茶屋で一休み。
話題は自然と「大名の隠居後の暮らし」へと移った。
シュペルク「でもさ、現役の大名って窮屈すぎないか?自由が全然ないし……。隠居したら少しは楽できたんだよな?」
フィビアス「はい。藩主を退いた大名は“中屋敷”や“下屋敷”に移って、趣味や江戸見物を楽しんだそうです。例えば柳沢延時なんて、六義園という庭園で二十年近く暮らして、花を植えたり芝居を上演したりしてました」
シュペルク「芝居!? 自分で!?」
フローレン「そう。歌舞伎を見に行くだけじゃなく、自分で台本を書いて、家臣や奥女中に演じさせて楽しんでいたの。藩主の頃にはできなかった“遊び”を、隠居してようやく味わえたのね」
フィビアス「延時の日記には、浅草や両国に遊びに行った記録がたくさん残ってます。庶民と同じように物見遊山を楽しんで、花見や田楽まで味わっていたんですよ」
シュペルク「うわー、そっちのほうがよっぽど人間らしいじゃん。現役の頃よりずっと楽しそうだ」
フローレン「……自由を手に入れるには、“権力を手放す”ことが必要だったのよ。皮肉だけどね」
フィビアス「現役の大名の中には、隠居生活に憧れる人も多かったんでしょうね」
シュペルク「俺なら絶対そうだな。屋敷で縛られるより、浅草で遊んでる方がいい」
フローレンは小さく笑って茶をすすった。
フローレン「……長く生きているとね、人は“権力の重さ”より“日常の軽さ”を求めるようになるものよ」




