表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/61

江戸時代にタイムスリップ 「町奉行所――裁きの舞台裏」


――昼下がり。

三人は再び北町奉行所の門をくぐった。黒塗りの長屋門の両脇には同心の詰め所があり、厳しい視線が行き交っている。


シュペルク「おい……でかいな。門からして威圧感あるぞ。まるで要塞みたいだ」


フィビアス「威厳を示すための造りよ。町奉行所はただの役所じゃない。ここで裁きが下されるの」


フローレン「……看板は掲げられていなかった。よく時代劇で“北町奉行所”って書いてあるけどね」


表門を抜けると、玄関の敷台が見える。そこでは中間ちゅうげんが控え、来客の出入りを記録していた。


シュペルク「なんか……すげぇ緊張感あるな。入っただけで汗かきそうだ」


フィビアス「当然よ。ここは、町人にとって人生が変わる場所。訴訟や罪状が持ち込まれれば、一枚の紙で運命が決まる」


フローレン「そして、その紙を扱うのは人間。だから不安も渦巻いた」


三人は役宅の中を歩き、エリアごとの役割を教えられる。


第一の区画:執務エリア

フィビアス「ここが執務エリア。与力が常駐する板部屋、同心が詰める部屋、年番方が書類を処理する部屋……。町奉行所の心臓部ね」


シュペルク「うわぁ……帳面だらけだ。これ全部、事件とか訴訟の記録か?」


与力(通りすがり)「そうだ。訴訟は“出入筋”と“吟味筋”に分けられる。土地争いや金の貸し借りなら出入筋。殺人や放火なら吟味筋だ」


シュペルク「つまり民事と刑事ってことか……」


フローレン「言い換えればね。だが江戸の訴訟件数は膨大。ある年は四万七千件、その七割が金銭トラブルだった」


シュペルク「……ブラックだ」


第二の区画:裁判エリア

白砂利の敷かれた「白州」に出る。


シュペルク「ここが……裁判の場か」


フィビアス「町奉行が上座に座り、原告と被告が向かい合う。吟味方が取り調べ、例繰方が過去の判例を調べ、社用専用方が資料を整える。……一つの舞台のようでしょう?」


フローレン「演劇に似ていた。奉行は判決文を読み上げる役者。けれど観客は町人全員だ」


シュペルク「うわ、プレッシャーで俺なら噛むぞ」


第三の区画:御用部屋

御用部屋では奉行が部下と会合していた。


町奉行(声)「吟味方! 本日の調べはどうなっておる!」


吟味方「はっ! 証拠は揃いましたが、自白がまだ……」


町奉行「拷問は最終手段だ。慎重にせよ」


シュペルク「拷問……? やっぱり怖いところだな」


フローレン「“吟味”とは取り調べのこと。拷問具もあったけど、必ず使われたわけじゃない。ただ、真実を引き出すための最後の手段だった」


フィビアス「判決も奉行一人で決められるわけじゃない。中追放までなら独断でできるけど、それ以上は老中や将軍の裁可が必要だったのよ」


シュペルク「じゃあ死刑は……」


フローレン「将軍の承認が要る。奉行が独断で人を殺すことはできなかった」


第四の区画:生活エリア

奥には町奉行の家族の住まいが広がっていた。


シュペルク「……ここも奉行の家なのか。役所と住まいが一緒って変な感じだな」


フィビアス「それだけ奉行は“公務と私生活が一体”だったってこと。夜中に火事があれば、眠っていても半鐘の音で飛び出さなきゃならない」


フローレン「……休む暇など、最初から存在しなかった」


再び白州に戻り、三人は静かに立ち尽くした。


シュペルク「なぁ……。ここでさばかれるって、どんな気分なんだろ」


フィビアス「訴訟を抱えた町人たちにとっては、恐怖と希望が入り混じる場よ。ここでしか救われない者もいれば、ここで破滅する者もいた」


フローレン「江戸という都市は、この白州の砂利の上で回っていたんだ」


半鐘がまた遠くで鳴り、町奉行所の一日は休むことなく続いていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ