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江戸時代にタイムスリップ  午前:洗う・縫う・買う――長屋の“手”と町の“店”


(朝食を終え、男たちは仕事へ、子供は寺子屋へ。長屋には女将さんたちの気配が残る。)


シュペルク「……あっ、桶の音! 裏の井戸端、すごいコメディだな」


フィビアス「洗濯ですね。江戸では石鹸が一般的じゃなかったので、『米のとぎ汁』を洗剤代わりにしておきました」


フローレン「白濁したとぎ汁は、アルカリ性で油分を落とす。からの知恵だね。洗い張りの時は布を解いて板に貼る。手間はかかるけど、布を長く使える」


(長屋の女将たちが、手拭いで髪をまとめ、桶を足で踏んで着物を押し出す。)


女将A「ほら、今日も裾がすり切れてるわ。とりあえず継ぎ当てしなきゃ」


女将B「継ぎ当ては早めがいいよ。放っとくと穴が広がる」


シュペルク「みんなで喋りながら洗ってるんだな。……あれ?なんか、噂話まで飛び交ってる?」


フィビアス「井戸端会議。情報交換の場ですね。火事の噂、隣町の祭り、奉公人の様子まで。ネットワークの代替機能です」


フローレン「共同の設備が『会話の結節点』になる。現代の酒場や喫茶店に似ている」


(洗濯を干しないと、女将さんたちが裁縫箱を出す。針山、糸巻き、小さな鋏。)


シュペルク「縫い物?朝から?」


フィビアス「必須スキルです。衣服は高価だから、何度も繕い、仕立て直し。嫁入り道具に“裁縫箱”が入るのも当然ですね」


フローレン「生地を解いて、洗って、また縫い直す。循環的で効率的だ。……魔法のローブも、あれくらい丁寧に手入れすべきだね」


フィビアス「(小声で)フローレン様……ご自分のマント、ほつれてますよ」


シュペルク「あ、ほんとだ! 袖口のとこ。今度縫ってもらえるなよ」


フローレン「……まあ、またいいよ」


(昼前。表小通り店へ向かう女将さんたち。)


シュペルク「おぉ、ちっちゃな店がずらっと並んでる!」


フィビアス「海上二間、三・六メートルほど。土間の木の台を出し、魚、野菜、炭薪、古着まで。必要なものはほぼ揃っている」


フローレン「米屋と炭薪仲買が特に多い。米は精白の手間が重いから、つき米屋で買うのが普通。炭や薪は、煮炊きと暖の必需品」


シュペルク「なるほどな。……って、あれは?」


(路地の端に屋台。蒸気の立つ蕎麦鍋。小さな声で「いらっしゃい」。)


フィビアス「屋台です。時間と場所に応じて現れる『移動する台所』。蕎麦、天ぷら、団子……仕事の合間の栄養補給」


フローレン「これから、現代のファストフード。庶民が飢えずに兼務の一つだね」


シュペルク「……なんか、もう腹が来たな」


フィビアス「まだ午前中です」


フローレン「午前の暮らしは“手”が支えている。洗う手、縫う手、買う手。……午後になれば“口と心”の時間出す動き」


(江戸の陽は、すでに強く傾き始めていた。)


――つづく(エピソード3「午後:寺子屋とおやつ――子供と学びと甘味」)


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