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つまらない

『生活では必ず車椅子を利用してください。』


 小学6年生でこの言葉を言われ、気づいたら20歳となっていた。無事に高校を卒業して、18歳から社会人となって生活している自分がいる。

 生活には苦労はしていないが、とにかく趣味もなく人生がつまらない。周りは、ボウリングやカラオケ、冬はスキーを楽しんでいるが、自分は身体を動かすことはできない。

 つまり、仕事と自宅のルーティンである。家にいても、ネットサーフィンをするだけであり、マンネリ化な生活をしているところである。


 「…結局、何もしないで夜になっちゃったな…。」


 独り言だけが自分の部屋に響く。母親との二人暮らしで、特に好きな人もいない。ただ、20歳となり少ない友人と飲みにいく事くらいがイベント行事であった。

 交通手段も地下鉄や電車だし、周りの人にサポートされる事が必須のため、出かけるのも億劫なのである。


 「…自分って何のために生きてるんだろ。」

 幼少年から母子家庭で生活をしていた。その上、病気が判明し、その日から車椅子生活を開始した。幸いにも、病気の受け入れは早かったが、将来の夢は全くなくなった。

 ただ一つ、心残りだったのは周りが大学に行ったのに1人だけ就職したことだった。


 『就職したら絶対働きながら大学に行ってやる!』

 母に高校時代にはいてしまった言葉。今になったら、そんなモチベーションなんて全くないな。そんなこと考えていたら朝になっていた。


「…おはようございます。係長。」

「ん?ずいぶん目の下が黒いな。徹夜でゲームか?」

「いや、なんか昔の事思い出したら、寝れなくなって。」

「昔の事って、なんだい?」

「母親にここに就職する前に、働いたら大学に行くって言ったんです。今の自分には考えられないですよね?」

「…お前、大学行ってみたらいいんじゃないか?」

「え?」

「お前、仕事はちゃんとやってるけど普段つまらない顔してるし、大学行ってみればいいだろ。幸い、ここからなら夜間大学間に合うし。」

「やかん…?」

「ほら、ホームページ印刷してやるから。」



 朝の出来事が、人生の歯車と車椅子の車輪を回す会話となった。

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