先輩に好きだと伝えたい。
僕には、好きな人がいる。
それは、1学年先輩の馬酔木馬酔木加耶先輩だ。
「先輩、今日も可愛いなぁ…」
僕はいつも、先輩のことを遠目で見てる。
告白はしたいけど、出来ない理由がある。
それは、加耶先輩には彼氏がいるからだ。
噂によると、その彼氏はかなりのクズらしい。
(なんで、先輩はクズな彼氏を選んだんだ…僕だったら…)
なんて、いつもそんなことを思っている。
そんなことを、考えたって意味はない。
悪魔で、噂に過ぎないし本当はめちゃくちゃ良い彼氏かもしれない。
(先輩…)
(先輩は、知ってるのかな…こんな噂が出てること…)
(好き…好きです。先輩…)
じっと、見ていたら先輩が視線に気付いたのかこっちに向かってきた。
(え、え?先輩が、こっちに向かって来てる!)
「ねえ!」
「はい‼︎」
「君、ネクタイの色的に2年生?」
「そ、そうです…」
「そっかぁ…」
なんなんだ?と思っていると、加耶は続ける。
「名前、なんていうの?」
「萱場隼人です…」
「萱場くん、いつも私のこと見てるでしょ。わざわざ3年の階まで来て。」
「バ、バレてたんですか…」
「当たり前じゃない!」
先輩は、そう言ってニッコリ笑った。
(ああ…やっぱり好きだ!!)
「それじゃあね!」
「はい!」
〜昼休み〜
「加耶、昼飯食おうぜ」
「うん!」
「そう言えばさ…」
「どうしたの?」
「最近、お前のこと見に来てる後輩が居るんだって?」
「居るね」
「ふーん」
「どうしたの?急に?」
「絶対、お前のこと好きだぜ。そいつ」
「まっさか〜!そんなことないよ!」
「どうだか」
僕は見てしまった。
先輩とあの彼氏が仲良さそうにお昼を食べているのを。
そして、キスをしているのを。
(先輩…僕の方が最初から先輩のこと好きだったのに…)
「学校で、やめてよ。誰か見てたらどうすんの?」
「誰も、見てねえって」
「そうかな?」
僕は、余計な音を立てず静かにその場を去った。
〜数日後〜
(あれ、先輩泣いてる?)
「あの、加耶先輩どうしたんですか?」
「あれ、萱場くん!?やだなぁ、こんなとこ見せちゃって…」
「僕で良ければ、話聞きますよ?」
「実はね…」
そう言って加耶先輩は話してくれた。
彼氏に「お前と居てもつまんない。」と言われたことや、「キスとかしても反応薄いからもう飽きた。」と言われたこと全て説明してくれた。
「ごめんね。こんな嫌な話しちゃって。」
「とんでもないです!むしろ、そんな彼氏別れて正解ですよ!!」
「すみません…人の彼氏の悪口言って…」
「いいの。本当はそろそろ別れたいって思ってたから…」
「そうなんですか?」
「うん。彼、私と付き合ってる間に他の女の子とも関係持ってたみたいで…」
(こんな、美人な先輩と付き合っておいて他の女と!?なんたやつだ!!)
「あの!」
「なに?」
僕は、勇気を振り絞って伝えた。
「僕、加耶先輩のことが好きです!」
「え!?」
「僕は、先輩があの男と付き合うずっと前から好きでした!」
(先輩、驚いた顔をしてる…無理もないよな…)
(玉砕覚悟で、告白してるようなもんだし…)
「あ、えっと…」
「返事は、今じゃなくても大丈…」
僕がそう言うと、先輩は食い気味に答えた。
「ううん。今、答えるね。」
「は、はい!」
先輩は、少し顔を赤くして言った。
「萱場隼人くん」
「はい」
「本当に、私でいいの?」
「加耶先輩が、いいんです。僕は、先輩のこと泣かしたりなんてしませんから。」
先輩は、泣きながら返事をした。
「こんな私で、良かったらお付き合いして下さい。」
「もちろんです!」
まさか、この恋が実るなんて思いもしなかった。
僕は、めちゃくちゃ嬉しい気持ちで胸がいっぱいだ。
「明日から、一緒に登下校してお昼も食べようね!」
「はい!」
「それで、たくさんデートもしよう!」
「はい!」
「約束だよ!」
「はい!約束です!」
僕は、先輩と抱き合った。
キスもしてしまった。
本当に幸せ一杯だ。
そして、2人がお互い呼び捨てで呼び合い約束を果たすのはまた別のお話…