第6話 拾ってしまったらしい
「(……拾っちゃったよ)」
外套の外側から妙に生暖かいソレに触れる。先ほどまではもぞもぞと動いていたが、今は眠っているようだ。いや、突然馬車内で暴れ出して圧死とか笑えないからね、本当に。
窓の外は、自然豊かな景色流れる街道から一変して、舗装された石畳と赤煉瓦の屋根の町並みが広がっていた。
街道と領都を隔てる白壁の砦を抜けると、そこからは放射線状に舗装された石畳の道が延びている。
砦での検問を終えた馬車が走るのは、多くの店が居を構え賑わいを見せる市場。この道を抜けるともう一つ砦、通称“大門”が存在しており、その奥にヴィオレット辺境伯邸がある。いかにも防衛都市らしい造りだ。
市場では人々が賑わいを見せているのと共に、ちょうど花盛りを迎えるのであろう雛菊の花が、店の植え込みや花壇に咲き乱れている。
「もうすぐ到着しますよ」
窓の外を眺める私を見て、護衛の騎士が声をかけてくれる。川辺でも護衛をしてくれていた彼の名前は確か──そうそう、ライアンだ。ライアン・ベリス。
以前、兄弟が多くいると言っていたような気がする。だとすると、納得の面倒見の良さだ。お兄さん系、嫌いじゃないよ。
我が国には残念ながら王女専属騎士団的なものはないので、護衛についてくれる騎士は大抵入れ替わり。こういう遠出の時の護衛も毎回メンツが違う。
ただ体感として指名が出来ないわけではなさそうなので、今度はライアンを指名しようと心に留める。
一応、1人だけ専属護衛騎士がいるにはいるが、当の本人──ジオルク・アクナイトは本日姉君の結婚式のため休暇を貰っているらしい。せっかくの結婚式だしね、楽しんでおいで。
そうこうしているうちに、市場を抜け、馬車は大門に到着したらしい。輓馬が足を止め緩やかに馬車が停止した。
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