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第15話 ハードモードらしい

「それじゃあ、ひとまず情報共有をしましょう!」





アリス様は1度床下──やはり隠し通路らしい──を通って自室へ戻り、数冊の手帳を持って帰ってきた。その手帳達をローテーブルの上に広げる。





「これは……?」





手帳の1つを拾い上げて尋ねると、アリス様は顔を赤らめて口を開いた。





「憶えてることを私なりにまとめてみたんです。その、あまり慣れてないので見づらいかと思いますが……」





開いてみると、手帳にはびっしりと人間関係やら時系列事の出来事やらがびっしりと日本語で書き詰められていた。



ストレリチア王国の共通語は大陸公用語と呼ばれる物で、名前の通りストレリチア王国の存在する大きな大陸全般の国で使用されている。前世の世界で置き換えるならば英語みたいな感じだ。



文字が違うので前世の家族みんなに大陸公用語を見せても「なんだこれ……? 読めないぞ……?」となる未来間違いなしだが、実は平仮名五十音をそれぞれ書き換えた物をそのまま引用しているので、五十音全て憶えてしまえば今まで通り読める仕組みになっている。ちなみに発音は同じ。



だから例えば日本人が異世界に転移してきたとしたら、読めはしないが会話は出来るという状態になる。



懐かしいなぁ。最近はずっと大陸公用語ばっかり使ってたし。





「まず、原作の舞台となる乙女ゲームのコンセプトと攻略対象からお話ししますね。赤い手帳の最初のページをご覧下さい」





言われたとおりにページを開くとそこにはびっしりと乙女ゲームの世界観についてが綴られ、その次のページからは攻略対象の詳細な情報が似顔絵付きで記されていた。

あまりの画伯さに吹き出しそうになったことは墓まで持って行こうと思う。


本人はドヤ顔だし、触らぬ神……ならぬ、触らぬアリス様に祟り無しだ。





「世界観は、いたってありきたりな物です。ヴィオレット辺境伯家の次女である主人公──私が、特殊属性の1つ、光属性の魔法使いであることを見込まれて王立アルカディア学院に入学する。そこからゲームが始まります。ゲーム内容としては勉学や魔法訓練に励みながらスチルを回収しつつ恋愛を進めていく、割とありがちな学園系乙女ゲームだったようです」





次ページ進みます、という声で私は一枚ページをめくる。

……あ、やばい。15歳になったルーカスと目が合った。やめて! その顔でこっち見ないで!

私はアリス様に気づかれない程度にそっと視線を外した。




「えっと、攻略対象は人。スカーレット殿下の弟君であらせられるルーカス殿下、ロイ殿下。あとはインテリ系攻略対象のエリオット様、クソ野郎……女誑し系攻略対象のルーク様、元気な騎士っ子のレックス様、その幼なじみの超マイペース人間キース様、それと隣国フリージア王国の公爵子息のイヴァン様です」





なんだろう。若干説明に悪意と私怨を感じたが、気づかなかったことにしようかな。うん、その方が得策だよね。




それよりも、彼らの詳細の説明が先だ。




エリオット・サルビア

ストレリチア王国に存在する3つの侯爵家の1つ、サルビア侯爵家の次男。サルビア家は代々宰相を排出している建国以来の名家だ。年齢は現在6歳で、アリス様と同じ。



レックス・キャノーラ

キャノーラ辺境伯家の三男。王家と辺境伯家としての繋がりは別として、私個人とキャノーラ家にあまり深い繋がりがないから何とも言えないが、大変仲の良い家族だと聞いている。年齢はアリス様やエリオット様と同じ。



キース・ブルーマロウ

ブルーマロウ伯爵家の次男。ブルーマロウ伯爵家の領土はキャノーラ辺境伯家と隣接している。ブルーマロウ家は優秀な魔法使いを多く輩出しているが、その中でも若くして魔法の才能に目覚めた子供なのだとか。こちらも風の噂程度にしか知らない。彼もまた同じく現在は6歳である。



ルーク・メイリリー

メイリリー侯爵家の唯一の跡取り。そして彼は侯爵が元旅芸人の愛人に産ませた子供───庶子であると言われている。一般市民でありながら侯爵に見初められただけあって彼の愛人さんは絶世の美人だと言われており、そんなお母様に似たのかルーク様も非常に麗しい容姿をしている。年齢はアリス様達よりも1つ上だ。



イヴァン・コスメア

隣国フリージア王国のコスメア公爵家の長男。数ヶ月前にコスメア公爵夫人のご懐妊の知らせを聞いたので、そのうち年の離れた弟が出来るはず。





「作中では私はルーカス様ルートに辿り着くようですね。他にも数名、ボーナスとしてサブ攻略対象がいますけど…まあ作中ではほとんど関与してないので大丈夫だと思います」




「それで、私は具体的に何をすれば良いのかしら」





正直、弟2人は別として、私は攻略対象のほぼ半数と繋がりがない。恐らく作中の私もそれは同じだったはず。

純粋な疑問だけど、私の存在が原因となってグレた……とかならまだしも、部外者の私がどうこうできるような問題ではないのでは?


私の問いかけに、アリス様がゴクリと唾を飲む。そして居住まいを正し、ネグリジェのスカートのしわを直して……しわを何度も何度も念入りに直して! ようやく口を開いた。





「スカーレット様にはルーク様の性格矯正、キース様の信頼を得ること、イヴァン様をこちらに取り込むこと、後は今は封印されているはずのドラゴンの再封印をお願いしたいんです」




「はっ?」




「大丈夫です、性格はイカれていても、基本性能はハイスペックだったあのルーカス様の姉君ですもの。何とかなります! というか何とかしてください! そもそも、ざまぁ展開はべつとして、王国が滅亡するのはスカーレット様の弟君のせいではありませんか!」





えっ、いや。いやいやいや。

それってどんなハードモードですか…?

いつもお読みいただき、ありがとうございます…!


もし少しでも面白いなと思われましたら、スクロース先にある星、ブックマーク、感想などをいただけますとモチベーションアップに繋がります。


これからも毎日更新目指して頑張りますので、最後までお付き合いいただけますと幸いです。

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