第14話 “悪役ヒロイン”らしい
乙女ゲームを舞台とした悪役令嬢モノ。
そのジャンル内で決して欠かせられないものの1つ──“悪役ヒロイン”。
ちなみに悪役ヒロインは正式名称ではなく、便宜上そう呼んでいるだけだ。
舞台となった乙女ゲーム主人公かつ、悪役令嬢モノにおいてのいわば当て馬。悪役令嬢モノの中でもヘイトを買うようなキャラで描かれる場合と、愛らしく好感を持てるキャラとして書かれる場合の2パターンあるが、この世界においての“悪役ヒロイン”は前者らしい。
前者の場合の悪役ヒロインは破滅の象徴。彼女の親類友人味方、関わった人のほぼ全てが巻き込まれる凶兆の存在。
──それがこのアリス様だと言う。
「こんなことでスカーレット殿下を巻き込むことは、本当に、申し訳なく思います。けど、私だけの力ではどうにもならなくて……。作中で存在は書かれていたけれど、詳細が書かれていなかったスカーレット殿下ならもしかしたら力になって下さるかもと思って!」
ああ、でしょうね……私もアリス様の立場だったらそうしてたかもしれないけどさ……。
わざわざこんな夜更けに部屋に忍び込んでまで接触を図ってきたのはそう言うことだったのか。
何もかもわからないことだらけだが唯一わかるのは、アリス様に協力しようがするまいが結局のところ変わらないと言うことだ。
アリス様に協力すれば、過度に本編に接触して巻き込まれること間違いなし。そもそもアリス様に協力すると言うことはそう言うことなのだ。
かといって協力しない、我存ぜぬを貫けば、我が国の滅亡は逃れられない。
そうするならば加害者のドラゴンや悪役令嬢も、現実から目を逸らした私も大して変わらない。
──むしろ、見放した心苦しさに私の良心は耐えうるだろうか。
「……わかったわ」
「……えっ」
「協力、するわ」
どちらにせよ地獄ならば、とことん干渉してやろうじゃない!
幸い、いわゆる断罪イベントまでには期間がある。何とかなるだろうし、何とかならなかったら国と共に滅亡するだけだ。
どうせ滅ぶならば、何かやって滅んだ方が良いに決まっている。やった後悔よりも、やらなかった後悔の方が強くなるって言うしね。バッチこい、悪役令嬢!
「本当に……? ありがとうございます! 私、このご恩は一生忘れません!」
はしっ、とアリス様が微かに涙を浮かべ、私の手を掴んでそう言った。
……ところでこんな感動展開になってるけど、モブキャラの私って何をしたら良いんだっけ?
悪役ヒロインは本作の完全なる造語に過ぎませんが、いずれそう言う作品が出てきても面白いなぁと思います。
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