7話「魔術」
「特異魔術?」
その優しげな見た目とは裏腹に意外とスパルタを極めたアレクとの特訓の昼休み中、アレクが突然魔術の種類について解説しだした。
「あぁ、魔術には二種類有るんだ、通常魔術と特異魔術、通常魔術は魔力の量や質、あとは使う人間の能力によって多少威力とかは変わるんだけど、魔力を持つ者は皆使える、文字通り「通常」の魔術、今チャルカが覚えてるのはこっち。対して特異魔術っていうのは通常魔術とは違った魔力の使い方をする、内容は人によってまちまちで、通常魔術の内いくつかが増強されたり、はたまた全然違う魔術を使えるようになったりする」
「そんで?俺にも使えるようになるの?」
「まだわかんない、そもそも特異魔術は発現しない人もいるんだ」
(そりゃあそっか)とチャルカは思う、今のチャルカの魔術は「術」と言うことさえおこがましいような物だった、火を出せば周りの物まで焼き払いそうになるし、逆に水は水蒸気としてしか出てこない、「チャルカは飲み込みが速いよ」とアレクはフォローしてくれるが、現状通常魔術の運用さえままならないのに特異魔術など望むべくも無いのかもしれない。
「そういや皆はどんな特異魔術をもってるんだ?」
そう聞かれ焦ったのかアレクは口に突っ込んでいた本日3つ目の巨大握り飯を大急ぎで咀嚼した、この贅肉のひとかけらも見られない細く、薄い身体のどこにこんな量を納めているのか?はなはだ疑問に感じるほどアレクはよく食べる、昨日の夜もアレク1人で大量の皿を消費し、材料が無くなったからと店が降参する始末だった。
「リオさんは身体強化、ジェシカは幻影、リリーさんは特に無いけどその代わりに通常魔術がものすごく強いんだ、ハルさんは身体の一部を変化させて戦うことができる、俺は、、、見た方が早いかな?」
そう言ってアレクはすっくと立ち上がると自身の影に手を突っ込んだ。
「はっ!?」
我ながら素っ頓狂な声が出たものだと思う、だが誰でもこんな反応になってしまうだろう、何の予告も無しに影に手を突っ込むなんてホラー以外何物でもない。そんなことをしてる間に我関せぬとばかりに影をゴソゴソいじっていたアレクは何かを見つけたのか手を引き抜いた、その手に握られていたのは。
「、、、拳銃?」
「そう、これが俺の特異魔術、影を操る事ができる、今みたいに収納に使うだけじゃなくて影で狼とかを作って影自体を攻撃に使うことが出来るんだ」
「はえ~、便利なんだな、特異魔術」
「あ~うん、便利と言っちゃあ便利かもね、俺の場合特異魔術切るの忘れてリオさんが影に落ちるなんて事が何回か有ったけど、、、」
「気をつけないとな、、、」
アレクは苦笑しながら「そうだね」と言った、こうやってみると改めて顔が整っていると感じる、どこか儚さを感じる白い肌に紫がかった長めの黒髪を肩に流し、そして見る者を魅了してきたであろう優しげな顔を持つ、一見冷静さそのものといった風貌だが、その瞳には熱い炎が確かに揺らいでいた。何故彼の見た目を羨ましく思うのか、チャルカにはそれが分からなかった、そもそも彼も美形なのだ、今年15になる彼は少年らしい健康的で引き締まった皮膚と四肢、赤みがかった茶髪にルビーをはめ込んだような紅い瞳、笑顔のよく似合う顔、人が羨みの視線を向ける要素を全て我が物にしていた、それでも彼はアレクの容姿が羨ましかった、所詮隣の芝生は青いのだ。
「さて、午後の訓練を始めよっか?」
「え?あっ?あぁ、そうしよう」
「?どしたの?」
「いや、何でもない」
流石に「あなたの顔面を見て少しでいいから要素を分けてほしいと考えてました」と言えるほど肝が据わっている訳では無かった。