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残響 廻る糸車編  作者: 馬鈴薯
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77話「意思」

レーダー上から戦艦ヴィレの姿が消えたとき、ハルは後ろを振り向かなかった。

(鉾を届けなければ、リオが、リリーが、アレクが、ジェシカが、この作戦のために散っていった同志たちが命をかけてまで守ってくれたこの鉾を届けなければ)彼は強くそう思った、最早彼に後ろを見ることは許されていないのである。

結界内に入ってしばらくは今までと変わらない海の上を航行する、結界無効化装置の恩恵により、艦橋内の空気や魔力量が変わるということもなく今までと変わらず過ごす事が出来ている。変化が有ったのは速度だ。

結界内に入ったとき、目に見えて艦の速度が低下した、恐らく本格的に動作しだした無効化装置にエネルギーのほとんどを回しているためだろう。

(出来るだけ急ぎたい、ならば、、、)

「背に腹は代えられないか、、、」

コンソールを操作し赤いボタンを押す。

数秒後、ミライの後方から凄まじい轟音が響いてきた。ハルはミライの側部に設置され、主機からのエネルギーで動いているわけではないジェットエンジンを起動させることで、速度をあげようとしたのだ。

効果はてきめんでみるみるうちに速度は上がり、上空の雲がどんどん後ろへと流されていった。

「っ!海が、切れた、、、」

ついに彼は陥没部に飛び込んだ、チラリとしか見えなかったが、確かに陥没部は拡大を続けているようである。

(あれか、、、)

陥没部に入るとすぐに真ん中に少しだけ残された土地、聖域である旧皇居が見えてきた。凄まじい力がその方向へと向かっているのがわかった、しかし彼にはそれが魔力以外の何かである気がしてならなかった。もっとも、それが何なのかもわかりはしなかったが。

ジェットエンジンを切り離し、高度を上げて皇居上空をゆっくりと旋回する。彼の母校やその近く、懐かしい風景も所々目に入ってきた。

するとカシャンという音と共に映像が全天モニタの一角に表示された。

「チャルカ!?」

そこにはチャルカの姿が有った、破壊された建物の上に立ち、何者かと向き合っている。その相手が気にならなくもなかったが、それ以上にハルは安堵し、大きなため息を付いた。

(この位置ならチャルカを回収出来るかもしれない、それに見たところ目立った傷もない、、、良かった、、、)

「よし」

彼は操縦桿を握り締め、右下の方へとそれを倒した。しかし、ミライはその操縦桿の動きに従う事はなかった、それどころか操縦桿が動いた方向とは真反対の、右上方向へと進路を取り始めたのだ。

「なっ!?」

慌てて機器を確認し出す、しかし異常は認められない、コンソールを操作したり操縦桿を動かしてみたりしたが改善はされなかった。 

(艦の制御(コントロール)が奪われている?誰に?)

バッと映像を見る、ミライの存在に気がついたのかミライの方をじっと見つめるチャルカと男、そのどちらからも魔力は感じられなかった。

「じゃあなぜ、、、うわっ!」

不意に艦の下部からガコンッという音と共に衝撃が走る。ハルが全天モニタの下部を覗き込むと今度は彼の心に衝撃が走った。

天逆鉾を係留していたアームは開き、鉾は自由落下を開始していた、()()()()()()()()()()()()()()である。

「バカなっ!今ここであれを使えば、彼は、チャルカは恐らく消滅してしまう!なのになぜ!?」

そこまで言ってハッとした、今自分は誰に話しかけているのか?誰を問いつめているのか?乾いた笑い声がハルの口から漏れる。

「なるほど?これがお前の出した結論、お前の思いだと、そういうわけか、ミライ」

呆然と立ち尽くしながらそう言うハルに()は何も答えることは無かった。

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