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残響 廻る糸車編  作者: 馬鈴薯
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75話「希望の艦」

「向こうの艦隊から連絡艦が来ました、予想通り相手は向こうに釘付けだそうです」

ガーディアンズ艦隊本隊の戦艦ヴィレの艦橋で、連絡艦からの報告を読んでいたアレクがリオに報告する。戦艦ヴィレの横には本物のガーディアンズ旗艦・ミライがその巨体を浮かべていた。

「だそうだ、ハル」

『了解、予定通り作戦を開始します』

「了解、全艦隊加速しつつ前進!」 

数秒後、ヴィレ、ミライの両艦を含めたガーディアンズ艦隊が前進を始め、その速度をゆっくりと、しかし確実に上げていった。

ここは太平洋、ホッフヌンズを旗艦とする囮艦隊が列島内陸部でレストニア教艦隊を引きつけている間にミライを旗艦とする本隊が太平洋に開けた湾から突撃を仕掛けるというのが作戦の全体像だ。

「それにしても、ここまで簡単に引っかかるとは思いませんでしたね」

アレクが意外そうに言う。連絡艦からの情報によれば敵艦隊は550から600隻、恐らくトウキョウにいる艦隊をほぼ総動員しているのだろう。

「多分こちら側の防衛にはそれなりの自信が有るんだろうな」

「でなければあそこを空にするなんてありえん筈だ」リオはそう言って側にいるミライへと目をやった。

改めてすぐ近くから見ると巨大な艦だとリオは思った。ガーディアンズでも最古レベルの艦であるにもかかわらず周りの艦を圧倒し、堂々とした出で立ちで艦隊の中央に位置している。

この決戦の為にミライには幾つかの改装が施されていた。

東京結界無効化装置の取り付けに始まり、副砲の増設や、タネガシマで発見された旧世界のジェットエンジンを利用した補機の取り付け、そして下部主砲を全て撤去し変わりにアームを設置、そこに天逆鉾を接続することで艦橋からの操作によりいつでも天逆鉾を使用する事が可能となった。

「何が有るかわからない、ある意味それが一番恐ろしいですね、、、」

「何が有ろうと俺たちがやるべき事は変わらない、ミライを守ることだ」

アレクは何も言わずにリオの横顔を見つめる、リオはその視線を感じながら続ける。

「あの艦が沈めば、それこそ俺たちに希望は無くなるからな」

アレクは視線をリオからミライへと移した。

ミライ、未来、その艦はその名の通り世界の未来を、人々が未来に託した願いを、想いを一身に背負う艦となった。それは建造者が望んだ事かどうかはわからない、しかし建造後150年以上が経ちながらも、輝かしい戦歴とガーディアンズ指導者であるハルと共に今も空を駆け続けるミライの姿は、少なくない数の人々に希望を与えてきた。そしてそれはハルにとっての誇りであり、相棒(ミライ)への愛着を一層強めていたのだった。

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