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残響 廻る糸車編  作者: 馬鈴薯
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72話「神の器」

雲海の中にミライの姿が没した後、彼はしばらく指の1本も動かすことは出来なかった。

「俺の勝ちだな、世界の命運は今俺の手に落ちたという訳だ」

薄っぺらい笑みを浮かべてゲベートが近づいてくる。

「、、、お前は一体何がしたいんだ?こんなに人を殺して、この世界を破壊で満たしてまで、何をしたいんだ!?」

「チャルカ君、君にはもう言ったはずだよ?俺たちの目的は『完全な世界の到来』、これはその目的完遂の為の聖なる犠牲だ」

「『完全な世界の到来』だって?こんな犠牲を払ってようやく手に入るような物なら、そんな物は要らないと俺は思うがね!」

ゲベートの顔から笑みが消える、チャルカの体の周りの温度が数度下がった気がする。チャルカの額からは嫌な汗が吹き出してきた。

「チャルカ君、、、チャルカ君チャルカ君、、、君は未だ何も気付いていない、『大陥没』が起きたとき、世界は停滞していた、汚染と不安と対立だけが世界を支配していた。それじゃあ駄目なんだよ、それじゃあ」

チャルカの周りをゆっくりと歩きながらゲベートが続ける。

「そして初代総大主教猊下は儀式を行う地として数々の伝承に彩られた特異点であるこの場所を選んだ、しかし、儀式は不完全に終わった、何故かわかるかい?」

チャルカはなにも答えない、ゲベートも答えなど最初から期待していなかったのか、気にする事なく言葉を繋げる。

「それはね、儀式に必要な物が、必要不可欠な物が欠けてしまっていたからなんだ」

チャルカの顔をクイッと持ち上げ無理矢理目線を合わせる。

「儀式には神に、()()()神に由来するものが必要だった、しかし、初代総大主教猊下はそれを集めることが出来なかった、故に儀式は不完全に終わり、人間が作り出した神の紛い物『カミナルモノ』が残された」

「しかし、チャルカ君、君をここに連れてきたことで俺は、俺たちはその儀式の完成に必要な神器を全て揃えることが出来た」

「俺を?」

ゲベートは困惑するチャルカの鼻先にあるものをつきだしてきた。

「そっ、それは!」

「そう、君の家に代々伝わり、そして君が父親から受け継いだ剣だ」

「何故、、、それが、、、?」

「答は単純さ、これが神器の一つだから、しかしこれだけではない、これだけでは不足なんだよ」

ゲベートが少しチャルカから離れる。

「この剣が作られたとき、世界は神が直接治めていた、そしてこの剣を含めた3本の剣が後世に伝わった、しかし大陥没の際にこの剣を除く2本は依り代を失ってしまった」

再びゲベートが近づいてくる。

「しかし神の作った剣だ、魂は残る、ではどこに行ったのか?それは神になりうる魂を持つ者、新たな世界の創造主、つまり核になりうる器を持つ者の所だ」

ゲベートの手がチャルカの胸に触れる。

「お、おい」

「ふふっ、、、今のでどこに有るかわかったかな?2本の剣がある場所、それは」

そこで言葉を切るとゲベートは胸に置いた手をなんのためらいもなく、一息にチャルカの胸の中へと突き刺した。

「君の魂の中さ」

チャルカの脳には大量の信号が飛び込んでいた、1瞬のラグの後、彼の脳はその信号を「激痛」という形で認識した。 

「あ゛っ!?あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?!?!?!?」

あまりの激痛に拘束された手をもがかせる。

確実に触れられてはならない場所に触れられている、そしてそこからゆっくりと手を引き抜くゲベートの手に連動して、彼の体内から何か大事な物が引きずり出されている感覚がする。

「グホッ!ゲホッ!ゲホッ!」

口から血が吹き出す、ゲベートの頬にもかかるが、意に介さずに手を引き抜いていく。魔力が周りに満ちていき、建物が吹き飛ぶ。

そしてゲベートの手がチャルカの胸から離れたとき、彼の手には2本の剣が握られていた。いつの間にかチャルカの腕にまとわりついていた魔力はなくなり、チャルカは地面に倒れ伏した。

「ハァ、、、ハァ、、、」

自由になった手で胸に触れる、そこには穴はおろか傷1つついてなかった。

「あぁ、チャルカ君、ここに、この場所に儀式の完成に必要な神器と、そして新世界の創造主、つまり君が集った、壮観な眺めではないか!」

ゲベートは興奮を抑えきれないとばかりに叫ぶ。

「俺が、、、新世界の創造主だと、、、?ふ、、、ざけるな、、、そんなのに、、、っ誰がなるものか、、、!」

「君になるつもりがなかったとしても、儀式の完成と共に君は新世界の神となる、これは決まりきった事、不可逆性のある決定だ」

ゲベートはそう言って破壊された壁から外を見る、既に3本の剣は空中でゆっくりと回転を始めていた。その回転が段々と早くなり、やがて一つの銀の輪っかのような形へと変化する。

「やめ、、、、!」 

「さあ!儀式を再開しよう!」

銀の輪が紫の地面に触れる、その瞬間、世界の崩壊は再び始まった。

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