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残響 廻る糸車編  作者: 馬鈴薯
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71話「戦いの行方」

砲戦が始まったのはそこから30分後だった、ミライを中心に密集陣形をとっていたガーディアンズ艦隊の先頭部分が砲撃を始めたことで戦端が開かれる。

しばらくは互いの間を光の筋が飛び交う、特に特徴も無い砲撃戦だったが、戦闘が始まって10分がたった頃、レストニア教の艦隊が漁師の投げる網のようにパッと広がり、ガーディアンズ艦隊を四方八方から攻撃しだしたのだ。

「何だあれは、、、?本当に人間が乗ってるのか?」

思わず疑問を口にする。

「乗ってないよ」

ゲベートが答える、簡潔さを極めた返答の声には感情を感じられなかった。

「乗っていない?」

「うん、あれは無人艦隊だ」

そう言って彼は足を組み「勝負あったかな?」と呟いた。

彼の言うとおり、目に見えてガーディアンズの損害が増え、膠着状態だった戦況は、だんだんとレストニア教側へと傾いていった。

(そもそも、例え数でレストニア教に勝っていても、この戦いはガーディアンズに不利だったんだ)

チャルカはそう考えた、そして彼の考えは正鵠を射ていたと言えよう。ミライただ1艦を沈めればその時点で勝ちなレストニア教に対して、ガーディアンズはミライただ1艦を守り続け、尚且つレストニア教の妨害を撃破してミライをトウキョウ結界の内側へと送らねばならない、どちらが有利でどちらが不利であるか、最早それは自明だった。

「っ、、、!」

思わず歯軋りをする。

そうこうしている間にも、ミライを守る艦は次々と撃沈されていき、ついにミライは丸裸にされてしまった。

ほぼ全方向をレストニア教に囲まれたミライ、チャルカは次の瞬間自身の目に映る光景を予想して顔を青くする、その後ろでゲベートが口を開き何かを言おうとしたのがわかった、しかし、次の瞬間ゲベートはその口を閉じざるをえなくなる。

「なんっ、、!?」

「え?」

チャルカは1瞬ミライが発光したと思った。しかし、それは錯覚であり、実際にはミライを中心として無数の光の矢が放たれていたのだ。

レストニア教の艦20から30隻が1撃で火球へと姿を変える。ミライはそれを何度も何度も繰り返す、流石に包囲されていた時のように20隻30隻を一気に葬れる訳ではないが、それでもかなりの威力を以てレストニア教の艦を次々と雲海へ叩きつけていく。

「ミライにあんな装備有ったなんて知らなかったよ」

チャルカは何も答えない、彼だってミライがこんな攻撃力を有していることなんて知らなかったのだ。

しかし物量には勝てないのか段々と被弾していき、それに比例してミライから放たれる光線の数も少しずつ減っていく。そして艦橋付近に被弾し、炎が吹き上がったとき、ミライは完全に抵抗を止めた。

艦体の各所から火が吹き出し、大量の黒煙が艦の後ろ半分を覆い隠している。チャルカは呼吸が止まっているかのような息苦しさに襲われる。

そして1隻の戦艦がゆっくりとミライに近付き、その主砲から青白いエネルギーの束を発射した。

「あぁっ!」

悲痛な叫びがチャルカの口から漏れる。

次の瞬間、ミライは大爆発を起こし、艦体は真っ二つになった。

ゲベートが口笛を吹く。

「俺の勝ちだな」

チャルカにそれに耳を傾ける余裕は無かった、目の前で火球と化し、雲海へと沈んでいくミライの姿を絶望に曇った瞳で見つめることしか出来なかった。ただ、彼は沈みゆくミライの姿に、形容し難い違和感を覚えた。

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