表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残響 廻る糸車編  作者: 馬鈴薯
70/83

69話「目覚め」

東京、かつてこの列島に存在した国の首都として栄え、人口1千万都市と呼ばれた街。しかし、そんな1千万都市も今や見るも無惨な姿へと変貌を遂げていた。

西暦の終わりにして新暦が始まった151年前、現在の歪な世界を形成する要因となった大陥没が、ここ東京を爆心地として発生した。千代田区、皇居と呼ばれるエリアを中心とした僅か半径数キロの土地を残して半径30キロものエリアがドーナッツ状に陥没、その中心付近から発せられる強力な魔力の波、通称東京結界によって旧関東圏一帯は、生命の存在を許さぬ死の街と化した。

そんな死のエリアの中心、爆心地その物である皇居にレストニア教の基地は存在した。

東京結界無効化装置の恩恵により、例外的に生命の存在を許されたその場所を、総大主教・ゲベートは「聖域(サンクチュアリ)」呼んだ。その聖域でチャルカは目を覚ました。

「、、、どこだ、、、、?ここ、、、」

若干混濁したままの頭に浮かんだ疑問を口にする。

(とりあえず誰か居ないか探してみるか)

そう考えて体を動かそうとした所で違和感に気付く、チャルカの腕は上に上がり、無理やり跪かされたような格好になっていたのだ。そして何よりも。

「うっ、、、動かないぃ、、、」

まるで手錠をかけられているかのように腕が一切動かないのだ、()()()()()()()()()()()のにである。

意識が一気にクリアになる。

チャルカはこの拘束が魔力に依るもの、つまり彼を拘束したのは魔術師であると結論づけた。そしてどうにか自由を許されていた首を使って辺りを見回した。

薄暗いがどうやら室内であるということはすぐにわかった、床は恐らくは大理石で造られていて、階の上には立派な椅子がしつらえてある。全体的に荘厳な造りをしていて、そしてどことなく威圧感を感じる空間だ。

そして、椅子の後ろにある大きなガラスに目を移したとき、彼は1瞬凍り付いた。

その窓越しに見た空は、彼が知っている色をしていなかった。その空は紫色をしていて、しかも、どちらかというと高貴さよりも毒々しさと不快感を人に押し付けてくるような色だ。

「まさか、、、ここ、、、」

彼は本能的にここがどこなのかを悟った、そして今自分が置かれている状況を同時に理解した、理解せざるをえなかった。

「ぐっ、、、!ふぅ、、、!」

彼はこの拘束からどうにか逃れようと体をよじりだした。

全力で腕に力を入れたり、体重を利用しようとしたり、魔力を流し込んでみたり、しかしそのどれもが効果は無く、やがて力無くぐったりとしだした。

「はぁ、、、はぁ、、、」

(マズいぞ、、、ここがトウキョウだった場合、俺はレストニア教に捕まった事になる、レストニア教(奴ら)に一体何をされるか、、、)

「、、、ふんっ!」

呼吸を整え再び力を入れ始める、しかしやはり効果は無い。

不意に彼のすぐ後ろから声が降ってきた。

「酷いなぁ、3日間も目覚めるのを待っててあげたのにすぐに逃げ出そうとするなんて」

「ッ!?」

バッと後ろを振り向く。そこには嘘臭い笑みを浮かべたゲベート・ガリバルディがいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ