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残響 廻る糸車編  作者: 馬鈴薯
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65話「敵襲」

絶叫、悲鳴、断末魔、そういったものが混ざった後、無線機はやおら沈黙した。

前を行く艦艇は次々と火球と化し、回りでも回避行動を行ったために後続の艦や付近の艦と衝突事故を起こし、墜落していく艦や落伍していく艦が続出した。きっと上空からこれを見たら、巨大な光の柱が艦隊の前半分を貫いているように見えたことだろう。

「なっ、、、何が、、、?」

ハルは動揺と困惑を隠しきれない様子で呟く、一方のチャルカも呆然としてその光景を見つめることしか出来なかった。しかし事態は待ってくれない。

『右舷2時半の方向に艦影!』

「数は!?」

ハルの問いかけに対して、無線の相手は困惑を隠しきれない様子で答えた。

『いっ、、、1です!』

『1ぃ!?』

李舜臣が聞き返す。

『はい、間違いなく単艦です』

「この数の艦隊に単艦で、、、?まさに自殺行為じゃないか」

ハルもまた、非常に困惑しながら顎に手を添えて考え込み始めた。

『敵艦せっき、、、!?』

『どうした!?』 

『あ、、、あ、、、』

「落ち着いて、何があったんだ!?」

『あっ、、、あれは、、、あれは艦じゃありません!()()()()()()です!』

『なっ!?』

『カミナルモノ急速接近!』

「カミナルモノ?あれが?」

望遠鏡を持ち覗き込む、その先に居たのは確かにカミナルモノだった、しかし、その大きさは今までみたものの中で最も大きく、巡洋艦1隻ほどの大きさであった。しばらくハルは驚愕の余り声が出せなかった、他の指揮官たちも同じ心境だったのだろう、無線機はしばらく沈黙を続け、その間にもカミナルモノはどんどん接近してきていた。

意外にもその沈黙を破り指示を出し始めたのはイニーゴ・カンピオーニであった。

『全艦隊右舷へ砲撃を開始!あのバケモノを叩き落とせ!左舷艦隊は前に回り右舷艦隊の砲列に加われ!』 

『すまんイニーゴ!』

その通信を合図に、右舷側の艦が次々と砲撃を開始する。

「よし、チャルカ砲撃を始めてくれ、、、チャルカ?」

「え?ああ、、、すまない」

「大丈夫かい?かなりボーっとしてたけど」

「少し眠くてな、、、」

そう言いながらコンソールを操作して右側に砲口を向ける。

「、、、なあ、あれ効いてるか?」

「、、、全くといって良いほど効いてないね」

次々と着弾はしているものの、ダメージどころか足止めにもならず、人型のカミナルモノはどんどん艦隊との距離を詰めていった。

『このままでは突っ込まれます!』

そう無線が叫ぶのが早いか、艦が真っ二つになるのが早いか、ついにカミナルモノは艦隊の右端に到着し、1隻の戦艦の上に馬乗りのような形になっていた。

『クソッ!奴に砲撃を加え続けろ!』

リオが叫ぶ。

そのカミナルモノは大量の砲撃をものともせず、ググッと首を回した。まるで何かを探すように。

そしてミライの方を見たとき、そのカミナルモノはしばらくミライを見つめていた。

「おい、アイツこっち見てないか?」 

「確かに、、、」

チャルカの体に嫌な汗が浮かぶ、なんだか嫌な予感が胸をよぎった。すると、カミナルモノは戦艦を飛び立ち、真っ直ぐミライの方に向かってきた。

「ヤバい!チャルカ!砲撃を!」

「わかってる!」

至近距離から数発の弾を叩き込んだが効果は無く、凄まじい衝撃とともにミライはカミナルモノに取り付かれてしまった。


「クソッ!カミナルモノがミライに取り付いた!」

戦艦ヴィレの戦闘艦橋、ミライの物とそんなに変わらない全天スクリーンを見つめてリオが苦々しそうに叫ぶ。

「アイツ、ミライが旗艦だっていうのがわかったんでしょうか、、、?」

リオの隣に座っているアレクが、不思議そうに訊ねる。

「さあな、しかし、かなりまずい状態だ」

リオが難しい顔をして考え込む。

「アレク、カミナルモノだけを撃つ事はできるか?」

「かなり難しいです、多分ミライも無傷とは行かないでしょう」 

「仕方がないか、ミライが耐えてくれると信じよう、撃て!アレク!」

リリーも同じ判断を下したらしく、少し離れた所にいたホッフヌンズもミライに向かって砲撃を開始していた。


「どうやらリオとリリーはこの艦が耐えてくれると信じて撃ち始めたみたいだね」

スクリーンを見つめてハルが呟く。

「チャルカ、撃てるかい?」

「この位置じゃ無理だな」

お手上げとばかりに肩をすくめる。そんな彼の顔をスッと影が横切る。

「?何を、、、っ!」

ヒュッと息を吸い込んだ、取り付いたカミナルモノが腕を大きく振りかぶっていたのだ。

「衝撃に備えろ!物に掴まるんだ!」

その一瞬後、轟音と衝撃がチャルカの体を走った、全天スクリーンの1部がブラックアウトする。そしてカミナルモノは再び腕を振りかぶり、それをミライの艦体に叩き込んだ。今度こそ全てのスクリーンがブラックアウトし、轟音と共に大量の瓦礫と外の空気が戦闘艦橋内に流れ込んだ。

「チャルカ!無事か?」

「ああ!何とか、、、!?」

スッと背後から影が差す、そちらを見るとカミナルモノが腕を伸ばしてきているのが見えた。

「あっ、、、ああ、、、」

恐怖の余り指の1本さえ動かせなくなった。ハルが魔術を使い必死に応戦している。

その数秒後、彼の体はカミナルモノの手に包まれ、意識は闇に飲み込まれた。意識が絶える1瞬前、彼の名を呼ぶハルの絶叫が聞こえた気がした。


「カミナルモノ離脱していくよ?」

「離脱?」

ジェシカから双眼鏡を受け取りそれを覗き込む、確かにカミナルモノはミライを離れ、来た道を戻り始めた。ミライは損傷こそ負っているが、普通に航行を続けている。

(何がしたかったのかしら、、、?)

リリーは疑問に思いながらもハルに状況を聞くのが先決だと考え、ホッフヌンズをミライの方に向かわせるようジェシカに指示した。

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