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残響 廻る糸車編  作者: 馬鈴薯
54/83

53話「図書館」

「、、、ッ!」

ーーああまたか。

目が覚めた時、チャルカは真っ先にそう考えた。

その目覚めは気分の良いものでは無く、どちらかというと不快なものだった。

「2時32分、、、」

そばの時計に目をやる。

(もう寝るのは無理か、、、)

諦めてベッドから出て服を着替え靴を履く。

この所チャルカは上手く眠れていなかった、眠りに落ちると必ず、彼を責め立てる家族の声が聞こえるのだ。そして真夜中に目が覚める、そして朝まで眠れないまま悶々として過ごす。

トンギでの一件以降度々そういった事が有った。

ふと隣のベッドに目を向けると、床に就いたときには確かにいたはずのハルの姿が消えていた。

(どこに行ったんだろう、、、?)

まだ若干意識がはっきりとしない。

寝不足の為にチャルカはこの頃意識にもやが掛かっているような状態で1日を過ごす事が多い、会議の時もリリーにその事を指摘されたばかりなのだ。

(図書館に行くか、、、)

幾分かはっきりした頭でそう考える。

山の奥の国で、この一年以外の全ての時を過ごしていた彼は、見るものほぼ全てが新鮮であり、そして新たな知識との邂逅を本に求めた。

扉を開く。

薄暗い廊下を松明が照らしている。

闇に呑まれる廊下を見つめていると、この廊下が永遠に続いているかのような錯覚に陥った。

なんとなくフワフワとした感覚を覚えながら廊下を歩く。暗い廊下には彼の靴の音以外の音は存在せず、それが余計にチャルカの立てる音を際だたせていた。

しばらく歩くと重厚感のある木製の扉の前についた。

この図書館には開館時間という概念が無い、利用するのはサクラ女王や宮廷役人、そしてチャルカ達のような客人に限られているからだ。

しかしながら、そんな私設図書館的な要素を持ちつつも、この図書館には数え切れないほどの本が収められていて、中には旧世界の本も有るという話だ。

扉に触れると自動的に扉が開く、そういう魔術がかけられているのだろう。

(やっぱり、いつみても広いし大きいよな)

本棚の森の中を歩きながらそう考える。

チャルカの周りには彼の背丈の何倍もある本棚がおびただしい数設置されていて、その全てにぎっしりと本が詰まっていた。

(あ、あれ良いかも)

チャルカが見つけたのは「中華圏新暦史」と書かれた、少し高めの位置にある本だ。

「、、、、とっ、、、取れない、、、」

背伸びをしてみたり、飛んでみたり、手を目一杯のばしてみたりしたが、やっぱり取れない。

「ぐぅぅ、、、うわっ!」

背伸びをしているとバランスを崩し、後ろに倒れてしまう。

チャルカは固い地面に叩きつけられると思い目をつむった。

しかし、次にチャルカの頭が感じた感覚は少し固めではあるが、少なくとも地面よりは柔らかいであろう感覚だった。

「おい、大丈夫か?ってチャルカじゃねぇか、なにやってんだお前、、、」

顔の上から聞き慣れた声がする、おずおずと目を開けると、そこには呆れたような顔でチャルカを覗き込むリオがいた。

チャルカはバランスを崩した勢いでリオの胸に飛び込んでいたのだ。頭に感じる少し固めの感覚は程よくついている筋肉の物だった。

「いや、あの本を取ろうとしたんだけど届かなくて」

「魔術使えば良いじゃん」

そう言ってリオが手を一振りすると、チャルカの求めていた本はひとりでに彼の手に収まった。

「ほら」

「あ、ありがとう、、、」

「、、、随分と難しい本を読むんだな」

「ちょっと気になってな」

「そうか」

「じゃあ気をつけてな」そう言ってリオは去っていった。

チャルカはしばらくリオの去っていった方向を見つめていたが、机に座り、いましがた手にしたばかりの本を読むことに没頭し始めた。


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