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残響 廻る糸車編  作者: 馬鈴薯
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51話「密偵」

会議が終わった後、ハルは1人で宮殿の廊下を歩いていた。

何か考え事をする時、彼は1人になりたがった、それは大陥没以前からの彼の癖だった。

「ハル殿」

不意に呼び止められる。

肩を揺らして横を見る。そこには彼が中華大陸を中心に世界各地に放っている密偵の1人がいた。

「君か、、、あまりにも気配が感じられないので心臓が止まるかと思ったよ」

「隠密という職業柄、そこはご容赦願いたい」

「それはいいんだが、、、やっぱり君は言葉使いが堅いな」

「それは育った土地柄故、、、」

軽く頭を下げる。

「それで?僕の所に来たと言うことは何か報告があるんだろう?」

近くのベンチに彼女を誘う、ベンチに腰掛け(密偵はハルの前に立っていたが)、報告を促す。

「是、仁の皇帝(チン)江民(カンミン)が新たに、朝鮮(キム)氏の娘玉妍(ユーイェン)を妃に迎えました」

「金氏の娘を?朝鮮は中立では無かったのか?」

「前々から兆候は有りました、今回の玉妍入内で立場をはっきりさせたという事でしょう」

「何はともあれ、味方となりうる国がまた1つ減り、敵が増えた訳だ、厄介だねぇ、、、」

「是」

「確か、彼の妃には令の者もいたね?確か、、、」

「玲嬪(ハイ)紫涵(ズーハン)ですな」

「嬪だったけ?てっきり皇后か貴妃ぐらいのものだと、、、」

「皇后は李小雪(シアシュエ)、貴妃は寒貴妃(ジャン)蘭々(ランラン)です、寒貴妃はことあるごとに皇后李氏と衝突しているようですが」

「なるほど、それで金氏はどうなるんだい?」

「既に黄瓦城に入り、冊封の儀式が終われば正式に妃の1人になります、恐らくは嬪位での入内となるのではないかと」

「どうしてそう思うんだい?」

「彼には既に妃以上の者が4人います、宮中の決まりによって妃以上の者は4人以下でなければなりません、、、最も、この決まりはことあるごとに破られてはいるのですが」

「なるほど、それにしてもこのタイミングで金氏を入内させるとは、、、どうやら仁は冊封関係の強化を図っているらしいね」

「是」

「わかった、これと同じことをリオとリリー、それからサクラ女王にも報告しておいてくれ」

「是」

密偵は軽く礼をしてその場を去ろうとした。

海蘭(ハイラン)

ハルに呼び止められゆっくりと振り返る。

「、、、私の名前、覚えておられたのですか」

「記憶力はいい方でね、今回の件非常に助かった、2、3日ここで休んでから大陸に戻るといい」

「ガーディアンズの目となり耳となり、貢献する事が至上の喜び、、、ですが、休みの件、ありがたく頂戴させていただきます」

「うん、ではもういきなさい」

今度こそ密偵がその場を去る。

ハルはしばらくそのベンチで考え事に耽っていた。

(冊封関係の強化、、、レストニア教が何か大きな動きを見せようとしているこのタイミングで?仁もレストニア教の国ならばレストニア教が何をしようとしているのかは知っているはず、そんな中で冊封関係の強化なんて図るだろうか?)

天を仰ぐ。

(否だろうな、全く、恵帝・陳江民、、、彼は一体何をしようとしているんだ?)

しばらくベンチに座っていた後、ハルは再び1人歩き出した。

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