50話「希望」
桃園合流の翌日、チャルカ達はタイジョンの王宮内の一室を借り切って会議を開いていた。
メンバーはハル、チャルカ、リオ、アレク、リリー、ジェシカ、リチャード・エルメス博士、そして桃園の8人であった。議題に上ったのはやはり、今後の予定についてだった。
「ミライへの東京結界無効化装置試作品の取り付けは、今日中に終わるようだ」
リチャード博士が口を開く。それに頷きかけてからハルが話し始めた。
「とりあえず、今後の予定としてはタイジョンを出発し、タカチホに向かい、例の物を見る、使えそうであれば回収、と言うわけだね?」
「あの、、、」
「?どうしたんだい?」
おずおずと手を挙げたのはアレクだ。
「その、、、『例の物』ってなんですか?」
「あー、、、あなた達にはまだ説明していなかったわね」
リリーが盲点だったとばかりに頭を抑える。
確かに、チャルカ達もタカチホという場所に世界を元に戻せるかもしれない物が有ることは知っていたが、それが何なのかよくわかっていないのだ。
「そうね、タカチホという場所には神が使ったとされる鉾が有るの」
「鉾?」
「そうだ、『天逆鉾』、、、これが最近凄まじい力を放っているらしい」
桃園がリリーの後を継いで説明する。
「で、その力が世界を元に戻せる、、、と?」
「まだ『可能性が有る』というだけの段階だ、そもそも、タカチホという場所柄、その鉾自体が力を放っているのか、それとも山自体が力を持っているのか、それさえ実地で鉾を動かさない限りわからないんだ」
数秒の沈黙が流れる。それを破ってハルが口を開いた。
「とりあえず、今考えねばならないのはどう動くかだ、リオ、今タイジョン港に入港してる艦は?」
「世界中からメンバーが集まっている、現在入港しているのはタイジョン港内182隻、港外234隻だ」
「最終決戦に参加を表明しているのは?」
「ガーディアンズ1082隻の内859隻だ、どちらにしろ最終決戦の即時発動も視野に入れて、タイジョンにいる艦は皆連れて行くべきだろうな」
「合計で416隻、、、部隊は2つ分けるしか無いんじゃない?」
ジェシカの言葉に頷いて、リオがリリーに尋ねた。
「もう一人指揮官が必要になるな、リリー、適任者はいないか?」
「1人だけ居るわ、李舜臣提督、朝鮮系の方だけど出身は北京よ、元後清海軍の軍人で最終階級は少将、第2艦隊第1分艦隊の指揮官を務めていたわ」
ハルは感心したような顔をした。
「なるほど、もってこいの人材だね」
「ええ、それに彼は少将で終わったのが不思議なほど戦術的才能があるそうよ、まぁ彼以外15隻以上の艦隊を指揮した経験のある人はいないのだけど、、、」
「そんなに?」
「ええ、彼以外だとイニーゴ・カンピオーニさんの14隻が最大ね、それも輸送船団だし、、、」
「指揮した経験が有るなら結構だ、ヤク島上空で艦隊を二分し、我々はタカチホに、別部隊はカゴシマに向かってもらう、カゴシマ部隊は李提督を指揮官、カンピオーニ提督を副指揮官とする、出発は明後日の午前9時、その際はリチャード博士にもご同行頂く」
「もちろんだ」
「桃園は悪いがタイジョンに残り、軍に陸上戦闘の稽古をつけてやってくれ」
「御意、最初からそのつもりでしたので」
「ではみんな明後日の出発に備えて準備をしておいてくれ、それでは解散!」
一瞬の間の後、椅子を動かす音が会議室に響いた。




