44話「タイジョン」
「チャ・ル・カ~!!!」
タイジョン港に碇を下ろし、ようやく目的地、タイジョンの地を踏んだチャルカを迎えたのはジェシカの歓声であった、勢い良く抱きついてきたジェシカは喜びの余り頬ずりなどしだした。
「チャルカ~!すっごい会いたかったよ~!」
「ジェ、ジェシカ、くるひい、、、、」
チャルカの顔面はどちらかというと豊満なジェシカの胸に圧迫され、呼吸困難を起こしかけていた、それに気づいたジェシカは「ごめんごめん」と言いながらチャルカから離れた、ジェシカは特にそれを恥ずかしがる素振りは見せなかったが、チャルカの方は耳まで赤くなった。
「ジェシカ、そんな飛びついたら危ないじゃないか。チャルカ、久しぶ、、、、何があったの?」
そんな事を言いながらジェシカの後ろからひょっこりと顔を出したアレクは、湯気を出さんばかりに赤くなったチャルカを見て何が有ったのかを問うた。
「いや、、、何ともない」
「本当に?」
なおも心配そうな顔をするアレクを大丈夫だからといって無理矢理納得させ、チャルカとジェシカ、そしてアレクの3人はハルたちが居る方へと向かった。
「随分と熱烈な歓迎だったなぁ?ジェシカ」
「だって!本当に久しぶりだったんですもん!」
「いきなりかけだしていったのには驚いたわ」
「まあチャルカも悪い気はしなかったんじゃないの?」
「チャルカ、久しぶりね」
「ああ、リリー、久しぶり」
かなり久しぶりに見たリリーとリオは、最後にナワリンで会ったときとそう変わらないように思えた、強いて言うならばリリーの靴が変わっているぐらいの事だろうか、それも気のせいかもしれないが。
しかし、リリーとリオはチャルカの変化を敏感に感じ取っていたようだった。
「チャルカ、、、あなた少し痩せた?」
「ああ、それになんかやつれたようにも見えるぞ」
「あー、、、」
心当たりが無い訳ではなかった、長期に渡る航海と、その先々での戦闘、物資を積み込む暇もなく、時には一月近く山篭もりを強いられる時期も有った、そんな状態でろくに食事がとれる訳もなく、一昨日、後清で食べた夕食が約3ヶ月ぶりのまともな食事だったのだ、そんなこんなで元々細い方だったチャルカの体は、病的と言うほどではないものの、さらに痩せていた。
「へー、、、随分と大変だったんだねぇ」
「チャルカ、、、今日の晩飯つきあうよ、、、、」
沈痛な面持ちでアレクがチャルカの肩に手を置く、食いしん坊な彼にとって、まともに飯が食えないという状況は、死より恐ろしい物なのだろう。
「その前に、チャルカとハルは行かなきゃいけない場所が有るんじゃないのか?特にハル」
「わかってるよ、アレク、晩飯はそれまでお預けだな」
「わかってますよ、ハルさん」
「じゃあチャルカ、行こうか」
無言で頷く、このタイジョンについての話は、航海中にハルから飽きるほど聞いた、この国がどういった経緯で建てられたのか、今の支配者は誰なのか、そういった事を総合的に考えると、今から向かう場所は自明だった、正面には、大きな道路、その端には確かに大きな建物が鎮座していた。




