37話「美」
ガーディアンズ設立からさらに半年、彼らは4人揃って島の森をかき分けていた、そこまで大きすぎるわけではないが、十分広大と言える面積を持つこの島には、それなりの年月をこの島で過ごしている彼らにとっても未踏の地がまだ存在していた。
そんな広大な島の南東の浜辺、普段彼らが生活する拠点の真反対の方向に、かなり強力なカミナルモノの反応を察知したのが5分前、そしてただならぬ気配に4人揃って反応のあるエリアに向かっていた。
「これ!うまくいけばエンジンのコアにできるんじゃねーの!?」
走りながらソラが叫ぶ、ガーディアンズ設立から半年、彼らは未だエンジンのコアに相応しいカミナルモノに出会えていなかった。
「ああ!これを逃がす手はない!」
「このあたりよ!」
ツバキが叫ぶ、確かにカミナルモノの気配と魔力はかなり強く彼らにのしかかっていた、しかし、普段戦うカミナルモノとは何か気配が違った、おどろおどろしさは無く、それどころか神聖な感じさえするのだ。
「あ!あれじゃねーか!?」
「あれだ!あ、、、れ、、、」
「、、、!?」
誰もが息を飲んだ、確かにそこに居る者の気配は間違いなくカミナルモノの物だったが、見た目はおよそカミナルモノとは思えない物だった、首長竜のような巨大なフォルム、その身体を覆う色とりどりの鱗、翡翠をはめ込んだように緑の瞳、その姿はまるで美術品のように美しく、そしてどこか妖しさを孕んでいた。
「、、、ッ!みんな!来るぞ!」
目の前にカミナルモノは、どうやらこちらを敵と認識したらしく、一声甲高く鳴くと、いきなり火球を投げつけてきた。
「クソッ!見とれてた!」
「、、、不覚」
彼らは戦いながら、違和感に気づいていた、それはこのカミナルモノの魔力がカミナルモノの魔力よりも、もっと神聖なもの、つまり神に近い物だったという事だ、姿、魔力、力、これらの要素を鑑み、彼ら4人は戦いながらある1つの結論を導き出した。
「ねぇ、この子、覚醒状態何じゃないかしら?」
その結論を最初に口にしたのはツバキだった。
「多分そうだろうね、カミナルモノの魔力とはどこか違う」
「じゃあどうするんだ?こんな絶好の優良物件をリリースするのか?」
「、、、僕に考えがある」
確かにあのカミナルモノの魔力は神聖で、なおかつ強大なものだが、しかしそれでも全体の魔力量では4人もいるガーディアンズ側に軍配が上がる、それを利用し、魔力でカミナルモノを押さえ込み、コアの状態にまで還元する、ハルの考えはこういったものだった。
「、、、それ、成功の見込みあるの」
「少なくとも、こういう風にやることでカミナルモノをコアの状態にまで還元することができるということは証明されてる」
「要はその拡大版というわけか」
「その通り」
「やってみる価値は有るんじゃないかしら」
一瞬顔を見合わせる、そして無言のまま頷き合う、作戦は決まった。
彼らはカミナルモノからの攻撃をよけつつ、四方向からカミナルモノを包囲する陣形を作り上げた。
「よし!みんな!いくよ!」
「スタンバイ!」
「オーケー!」
「行ける」
「せーの!」
各々が全力で魔力を放出する、身体の中から何かが急激に抜き取られるような感覚が彼らを襲った。
彼らの放出した魔力は正確にカミナルモノにまとわりつき、だんだんと収縮していった、やがてカミナルモノが耳をつんざく悲鳴を上げ、目がくらむような閃光をはなった、その光が収まった後、そこには巨大な心臓が残っているだけだった。
「なんか足りないと思ってたけど、ようやく様になったな」
ソラが心臓が組み込まれたエンジンを見上げながら呟く、拍動する心臓は、早くも艦内に動力と電力を供給していた。
「とりあえず、これでエンジンも完成、ようやく進水式ができる、いや、進空式かな?」
そばにいたハルが答える。
「明日もある、そろそろ休もう」
「ああ」
2人は小屋に戻っていった、その夜はゆっくり、ゆっくりと更けていった。




